Kurageという名の宇宙船に乗って・後編
●文にアンダーラインがあるものは詳細へ飛ぶことができます。
LATEXブランドKurageのデザイナー、Kid'Oさんに色々なお話を伺う企画、後編。
前編はこちらから。
●デパH、ゴム祭について
Kid'O:
ゴム祭は2010年からサエ(Saeborg)を中心に始めたんだけど、これがなかったら外国でショーなんて出来なかったよ。
回を重ねる度にデカくなって、準備、進行、見せ方、パフォーマーさん達との出会い、動画、音の編集。
なかなか思い通りには進まないけど全てにおいて、とても鍛えられた。
あれだけの本格的なステージ持っているイベントって滅多にないからね、日本で。
勝手は違うけどデパH規模で慣れないと海外でショーは出来ないよ。
海外イベント会場の規模が桁違い、お客さん何千人だよ。出番前は震えがくるよ。
特にTortureGarden(ロンドン)の様にパフォーマーさんメインのイベントでは空間込みの演出で皆んな準備してくるからね。なんだかすごいよ海外は。
「えぇ?!個人でこんだけ準備するの?」レベル。
その合間で、KurageみたいなLatexブランドがファッションショーしたりするんだけど、ただ音楽かけて「私の衣装はすごいでしょ」的なしょぼいマスターベーション見せつけたところで盛り上がらないからね。つまんないでしょ、 見てて。
※Kurageが参戦した
Torture Garden 2017 Halloween - Performance Edit
※Kurageのショーは2:18から
だからこそ、重要なのが空間作り。音もそうだし、バック動画も含めて演出が大事。
デパHではもちろん色々考えて一生懸命やっているから、練習って言い方変だけど、そう言う意味でのデパHへの感謝はいつもある。
なぜにもっと日本のパフォーマーさんとかデパでやらないんだろ、といつも思うな。
●今後イベントをやる予定は?
※2005年にSalon Gummibaと言うラバリストオンリーのイベントを開催
Kid'O:
イベントはやる予定はあるよ。でも今度やるときは外国みたいに2日とかやりたいね。
声かければ海外からも来るし、サロンという感じでもない。
お客さんも、今ラバーに興味ある若い子達はもちろん、フェティッシュシーンは好きだけど自分では、みたいなお客さんも含めてみんなが楽しめるような。
外国はどうしてラバーが盛り上がっているかと言うとやっぱり環境があるからなんだよね。
決定的に違うのはお客さんを喜ばせるということ。
遊んで来た大人が本気で準備してるからね、どうしたら楽しんでもらえるか。
※Montreal Fetish Weekend
ファッションショーの会場。
看板に使われている画像はKurageのもの。
※Montreal Fetish Weekendは、カナダ・モントリオールで週末3日間ぶっ続けで行われるフェティッシュイベント。
期間中は会場の30階ホテルも周辺もFetishistsでいっぱいになる。
※Kurage初の海外公演となった
Kurage showcase 2014 & 2015
@ Montreal Fetish Weekend
日本は口は出すけど金出さない、しかも動かないご意見番多すぎ。
フェティッシュはとか、ラバーとはなんて昔の事、念仏のように唱えても若い子はついて来ないよ。
前進してるから過去が生きてくるわけで、僕だってトラディショナルなLATEXスタイルが大好き。
うまくミックスして新しい環境を若い子達と作って行けたらいいなと思う。
初めてLATEXに感じたゾクゾク感を忘れずに。
そこからだね、時代はどんどん変わってきているから。
若い子達と交流していくのは刺激にもなるし、ファッションとか色んな面で話しができないとやっぱりだめなんだよね。
最近はラバーを着る女の子が増えたのはとても良いよね、気軽にお洒落にゴムを着こなせてるしアイディアがあるから。
お洒落して行くイベントも若い人達にいろんな影響を与えることが出来るから、早く世の中落ち着いてもっと色々なイベントが開催して欲しいと思ってる。
●Kid'oさん的フェティッシュ
Kid'O:
僕にとってのフェティッシュって、目。目だよ、それが全てかな。
目の為に全身を作っている感じ。
Kurageにマスクオーダーしてくれたお客さんはわかると思うけど、特に女子、ミリ単位でやり直すよね。
サイズが合うだけじゃダメなんだよ、素敵にならないと意味がないでしょ。
だからそこら辺無視したラバーなんて全く興味なし。
こっちが引いちゃうくらいの目。
誘ってるのか、馬鹿にしてんのか、見下してんのか、殴られんのかなー的なあの感じ(笑)。あぁいうのが好き。
そんな女子が周りにいっぱいいて欲しいね(笑)。
それが僕のフェティッシュだからね。
そもそも僕はなんとかシーンとかそう言うのは全く興味がない。
何を持ってフェティッシュと言っているのか。
イベントや何かやる時に便利な言葉として使うのは分かるんだけど、人が言うフェチとかそう言うのは全く興味がない。
ラバーにセクシャル的なものを求めてないんだよね。 直接的なエロとかそう言うのはどうでもいい。
逆に言うと、マニアではなく客観的に見れるから色んなものを作れると思う。
変態でもなんでも良いけど、素敵、似合ってる、カッコイイに越したことはないでしょ。
僕はレコードジャケットが好きなんだけど、あれって、フォント、モデル、全てがあの中に詰まってまとまってるよね。
そんな感じの作品が死ぬまでに何枚作れるか。何回面白い映像が撮れるか。
死ぬまでに僕が望んでる理想郷に近づけるのか。それだけなんだよね、本来 Kurageの目的は。
僕は自分が作ったもので不格好になる事が一番いや。
ウチの商品で写真撮っていてくれていても「あー、ココ~ッ!」って言うのがあると、誰か言う人いないの?って思っちゃう。
だから衣装制作以外の面でも意見を言えたらなぁと思うことは多々あるね。
アクセサリー1つとっても、シーンによっては重たすぎると外したり、位置をこっちに変更したほうがいいとか。バランスがちょっとでも悪いと凄く残念に思っちゃう。
僕は結局ラインとかバランスとるのが好き。
目に見えないラインが勝負なんだよね。流れなんだよ。見て目が止まっちゃうところがあると嫌。
そこらへんご理解あるカメラマン、動画制作の方、ご連絡お待ちしております(笑)。あとモデルさんもね。
●今後弟子などを取る気は?
Kid'O:
もう数年前からだけど、海外からは定期的にあるな。スタッフになりたいって、ちゃんとポートフォリオまで送ってくれて。
Kurageを学生の時から知っていて、今はブランド立ち上げてる若い子達も海外にいるから、遠征した時そんな子達に話しかけられると嬉しいしね。
ラバーを作りたい、表現したい人達にとっての一番の足枷って、何を使ったら良いのか、どんな道具を使ったら良いのか、何が正解なのか。
そこで足踏みしているのは時間の無駄。そんな時間があるならアイデアを現実化する為に時間を使って欲しい。
色んな情報があると思うけど混乱の元だよね、始めようと思っている人には。
なので、これは今後でもあるけど、”How to make a latex outfit“ 的なKurageスクールも企画してる。
※MARQUISのアトリエで作業するKurageスタッフ。
自分の技術を盗まれる心配なんてしてないよ。真似されても、新しいアイデアも絶えずあるしね。逆に真似されて素敵な若い子達が出てくれれば嬉しいし。
僕は、将来的には大勝軒のオヤジになりたいんだよね(笑)。
暖簾分けじゃないけど、ようは技術を教えて、みんな頑張って下さいって。
若い子達、面白い子達がゴムでなにかやってくれれば良いなって。
それの手助けが出来たら良いなと思っている。
ラバー制作も体力がいる。自分ももう歳だし、長く続けられるわけでもないからね。
で、その子達と一緒に外国行ったり、イベントでもやれればいい感じじゃない。
●ミストレス達の存在
Kid'O:
海外勢含め、ラバーを盛り上げるのにミストレスたちの存在はKurageには大きい。もちろんこの素材の特色でもあるし、切っても切り離せない部分だよね。
日本ってプレイヤーさんとは活動が分かれていることも多かったけど、ロミヒー姐さんはおいといて、玲さんの「コロナ時代のフェティシストたち」でも紹介されている、雛奈子ちゃん、蟹まぐろちゃん、Rちゃんとか、北見えりちゃん。パワフル女子が揃ってきたよね。
プレイ派だけど、イベントには個々のシャレオツラバーを着て行く。TPOだよ。海外には昔からいるタイプ。だから盛り上がるんだよね、向こうは。
日本はやたらと線引きしたがるでしょ。それ自体が、シーンが未発達な証拠。
みんなで盛り上がっていけたらなと思ってる。やっぱり女子だよね。野郎はあとからいくらでもついてくるから。ほっといても(笑)。
もうだいぶ前から玲さんには言ってたよね、まずは盛り上げるのはヘビーラバーから。だってヘビラバだって充分オシャレになるし、着こなしとアイディア次第。
アマゾンプライムの「キコキカク#16(Kurage)」でキコさんがラバーダウン+フレアスカートを素顔とマスクONで着こなしてるけどそうゆう感覚なんだよね。
ツボついてれば、ヘビーにもファッションにも捉える事ができるし。
いつまでも、ラバー=(イコール)のみんなが持っているイメージじゃね。
ラバーをコマーシャル的に扱ってくれる一方でトラディショナル好きだったりする若い子達も応援していきたい。
最近はフリーでやっている子も多く、そういう子達は世間を気にしてなかなか表に出てきにくいみたいだし、不安なところもあるみたいでね。
そういうところでもKurageで力になれたらとも思う。
パワーがあるもん、若い子達。
●北見えりちゃんとのコラボについて
Kid'O:
えりちゃんの影響力は、もちろんあるよね。
コラボというより常にフォロワーでいてくれる事で、ラバーに興味ある女子にも業界的にも、もちろんKurage店舗としても常に安心感を与えてくれていると思う。安心でしょ、女子が集まる店って。
素材的にラバー=(イコール)みたいなイメージまだまだ日本は根強いからね。
G-KITAERIなどはイメージを聞いてオリジナルでデザインしてます。
彼女がどうやったら映えるか、依頼を受けた衣装は一生懸命やるけど、人の作品だからね。
全てにおいて口出せる爺さんと孫の記念アルバムなコラボは一回したいな(笑)、えりちゃんと。
ファンタスティック・プラネットはもともと作品は知ってたけど、忘れかけていたんで話を聞いた時は焦ったよ。
Tivaは特に張り合わせをなくす事に気を付けたかな。意外と大変だった。
まぁ、普通のキャットでもちゃんと作るのは大変だけど。
キャラクターや色を多用するラバーは平面だと安っぽく見えたりしちゃう。難しいよ、バランスが。張りの上下でも雰囲気変わるし。ダサい工作ラバーになるか、そこらへんがポイントだね。
前にKurageでプラグスーツを作ったのをきっかけにコスプレ界にもラバーが定着したけど、あれから味噌くそいっしょ状態(笑)。まぁ、流行る裾野が広がるってそう言う事だからね、どの業界も。
今ちゃんとしたプラグスーツ作っているのはロシアのアンドロメダ(Andoromeda Latex)。凄く立体的に作ってる。
アレもウチが立体でプラグスーツを作った土台がある。彼もKurageから影響を受けたと言っているしね。
ポイントがあるんですよね。ここを立体にしないとそう見えない、かっこ悪いって言うポイントが。それを掴まないと無理。
こんだけ世界もラバーの技術が発展して、もしこれから若い子がラバー作って海外でって思うなら、そこら辺のポイントやバランス、ディティールは大事。
パワフルな子達がいてシーンは盛り上がっていく。
ありがたい存在なんだよね、えりちゃん達みたいな存在は。海外とも気軽にやり取りしたりね。
彼女達のお手伝いが出来たらと思ってるだけで、Kurage色に染めたいなんてちっとも思わない。
個々やりたい事をやれば良い。全てにおいて動きが早いよ、素敵だよね。
ウチはフェティッシュショップって名乗ってないでしょ。
来るお客さんは、誰でもwelcomeだし、どんなジャンルでもOK。
そのお客さんのファンタジーを叶えるのがKurageの仕事だから。
一所懸命仕上げて、お客さんにお渡しして。その先はお客さんの自由。
仕事と本来Kurageが目指す世界は別。
既に世の中にある事、ほっといても誰かがやる事、一生懸命やっても仕方ないでしょ。
数が多く集まっている所に本質はないし。数集める為に必死になりすぎて本質を見失っちゃだめだよね。
興味があるのは、その人のパワフルさとか行動力、オリジナリティー。
応援したくなるし、人として興味を持っていける。そこから新たなアイデアも浮かぶかな。
目に見える数字ほど当てにならないものはないからね。
●Kurageの今後。Kid'Oさんの願望
Kid'O:
コロナ完全に開けて海外と行き来が可能になったら、ヨーロッパ以外決まっているショーは、上海、北京、四川のどこか。中国のお客さんは実際増えてるよ最近。
中国ではKurageはラバー界の高級ブランドなんだって(笑)。
先日もいきなり「センセイ」なんて呼ばれたりして(笑)。
フェティッシュイベント以外にもオファー来てるので、それも面白いかなー。
僕がなりたいのはファントム・オブ・パラダイスのスワンとかルパン三世のマモー(笑)。
憧れてる空間は昔の明智小五郎に出てくるような噴水がある秘密地下室で女子がオブジェ的にいつもいるような(笑)。あぁ言う感じ、いいよね。
ショーとか発表できる場を続けていけなければやる意味ないと思っている。
Kurageが登場したらみんなが喜んでくれるのが一番良いよね。
共感してくれる人達が集まってくれれば尚更よし。
経験も積んだので、そろそろ本来やりたかった理想郷作り「もしKurageとい
う小さな村があったら」をコンセプトにKurage Tribeなショーに進んで行こうと思ってます。
僕も歳だし、老後もある。コロナもあって考えさせられたけど、今はちょこっとアイテムにラバーって人から、ヘビーまで楽しめる新しい通販サイトも作っているし、今年いっぱいはベース作りかな。
やりたい事をやるには当然な話だけど、とにかく金銭的なものが必要。
誰も助けてはくれないし。人それぞれだと思っているからね。
あとね、自分に必要なのは土地なの。
田舎とか車で走ってると、案山子とかでデコってるトリッキーな家とかあるじゃない?僕ってあぁ言うふうになるんだよ、きっと爺さんになって(笑)。
だから土地が欲しい。余裕ができたらゴム案山子のイカレた家を作るんじゃないかな(笑)。
最近は、有難いことにスタイリストさんや衣装さんが沢山いらしてくれるので。そういうの面白いよね。どんどん挑戦したくなる。お話いただいて、それが現実になるのを見るのも好きだしね。
Kurageって宇宙船みたいなもの。あくまで目指すは、僕の理想郷。
その為には色んな回り道もするけど、一箇所に留まる事はないな。
途中で乗る人もいれば降りる人もいるし、目標地点も変わってくる。
次の星に進むには燃料も必要だし機体もボロボロになるだろうし、ある一定の期間修理しなきゃいけないんですよ。
そう言う事ですよね、今は。
Kurage Latex Designer / Kid'O (キド)
池袋 Kurage Specializing in Latex artのデザイナー。
ファッション誌や広告、MVなどの衣装制作なども手がける。
The European Fetish Awards2015年、2016年連続で
Best Fetish Fashion Designer受賞。
驚異的な技術と独自のデザインセンスによる作品は世界中にファンを持つ。
Kurage ::Specializing in Latex art
Latex Haute-Couture Quality
Latex Clothing made in JAPAN.
beGLOSS 日本代理店
●Shop Adress
Tokyo Hakuyo Excellency 1F
2-20-6 Ikebukuro Toshima-ku
171-0014 Tokyo Japan
●Opening Time
13-18 hr.
Shop Close Tuesday
●Contact
+81(0)3-3988-5818
info@kurage-shop.com
OFFICIAL WEB
WWW.KURAGE .TOKYO
番外編はこちら⇒ユリイカコラム「あの娘僕がフェティッシュな話したらどんな顔するだろう-Vol.4,日本のラテックスブランドKurage/玲芳龍」
Special Thanks To Kid'O & Kurage.
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