見出し画像

できること(can)を、やりたいこと(will)だと勘違いすると、しんどくなる。

「わたし、接客の仕事好きじゃなかったって、ようやく気づきました」

長年イタリアンレストランのサービスの仕事を続けてきた友人は、少し照れた表情で話し始めた。

仕事柄、友人からキャリアの相談を受けることが多いのだが、彼女もその1人だった。

彼女は、数ヶ月前に仕事を辞め、現在は就職活動中。
大学時代から飲食業界一筋で働いてきたものの、深夜まで働く勤務体系に心身ともに限界を感じて、別の業界での仕事を探し始めて数ヶ月になる。
つい先日も、アウトドア業界での接客業の正社員雇用に応募するなど活動をしていたのに、一体何があったのだろう? 

彼女はこう続けた。

「周りの人からも『接客向いてるね』『楽しそうだね』と言われてきたし、経験も自信あるので、次も接客業にしようと考えていたんです。
でも、仕事が終わった後にドッと精神的な疲れが残るし、本当に接客業が好きなのかと疑問が沸いてきて……」

なるほど、なるほど。

「生産者やシェフの思いをお客さまに伝えることは好きだし、伝わった時は幸せな気持ちになるんですけど。それって、接客が好きとは違うのかなと思いました」

そっか、そっかあ。

彼女にとって、接客はできること(can)であるけど、やりたいこと(will)ではなかったと言うことらしい。

それに気づいた瞬間、「接客業に拘らなくてもいいんだ」と 気持ちが楽になったと言う。

「常に笑顔で接客しなきゃと思っていたし、みんなから見られている意識も強かった。褒められると嬉しい、やれば成果は出るので続けていたんですけど。
よくよく考えたら、小さい頃から人見知りだし、フロントに立つよりも裏方として物を作っている方に興味関心が向いているような気がします(笑)」

彼女が接客をしている姿を、わたしは何度か目にしたことがあるが、笑顔で・明るく・楽しそうにお客さまと会話をしているように見えた。「接客向いてるね」と言ってしまう気持ちもわかる。

今考えると、あの姿は、常にスイッチ入れて、普段とは違う自分を演じながら働いていたということになる。

それを続けるのは、しんどいよなあ。


誰だって、ある程度の経験を重ねていけば、できること(can)は増えていく。
その中には、スイッチを入れたらできること(can)というものがあり、つまりそれは、普段の自分とは少し違うキャラを演じているようなもの。

だから、ずっと演じ続けるとしんどくなる。

厄介なのは、側から見ると、演じているようには見えない場合があるということ。
周囲から、「キラキラしてるね」「向いてるね」「楽しそうだね」など言われたりして、これが自分のやりたいこと(will)なのかもしれない、と勘違いをしてしまう。

できること(can)と、やりたいこと(will)は違う。
勘違いすると、しんどくなるよね。


キャリアを考える際に、よく will / can / must のフレームで整理をすることがあるけれど、思い込みで整理をしてしまうと真実が見えなくなってしまうなあ、と改めて気づかされる。

キャリアの棚卸しは、自分の「心」に正直でいることが大切ですね。

素の自分の延長線上に、「働く」がある。
彼女の次のキャリアは、きっとそうあるに違いない。


おわり



この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?