見出し画像

「しんどい恋」ばかりの人へ。


パートナーがしんどい。
前の恋人も、その前の恋人もそうだった。
無視される。
怒鳴られる。
お前を見てるとイラつくと言われる。
時にはモノを投げつけられたりする。

それモラハラです。いや、DVです。
モラハラもDVの一側面ですから、モラハラもDVに含んでお話します。
もしあなたに心当たりがいくつかあれば、あなたはDVに遭っているということです。あなたはDV被害者です。

恋がしんどい人は、試しに自分はDV被害者(イネイブラー)だと仮定してみましょう。

そういうDV被害者の呼び名は色々あって、「殴られ女(バタリングワイフ)」とも呼びますが、必ずしも被害者は女性に限りませんので、ここでは「イネイブラー(支え手)」と呼びます。試しにご自身のことを「私はイネイブラーだ」と仮定してこの記事を読んでみてください。

あえてタイトルに、DVを受けている人へ、とか、モラハラを受けている人へ、とは書きませんでした。なぜなら、そう書いても「私はDVってほどじゃないし」っていうふうに、ピンと来ない人にこそこの記事を読んでいただきたいからです。イネイブラーは「恋人がしんどい」とは思ってるけど、まさか自分がDVやモラハラを受けてるとは思ってないことが非常に多いからです。
イネイブラーは、自分に対して懲罰的で、「こんなダメな自分で申し訳ない、相手に対して文句なんて言えない、私には嫌だと言う資格がない」という感覚なので、暴力を受けているのは自分なのに、「自分が至らないから罰(暴力)を受けるので、自分のほうが申し訳ない」と考えます。それが暴力だということが見えない。私はそういう「暴力が見えない=感覚鈍麻」があることだけをとっても、虐待被害者である証拠になると思います。

私が気が利かないから悪いんだ…とか、うまくやれば大丈夫だし…とか、昨日はうまくいったし…、相手の機嫌さえ良ければ大丈夫…、最近殴られてないし…とか、その程度にしか思ってない。
でも、違います。
DVっ気のない、まともな人なら、あなたがどんな失敗をしたとしても、殴ったり、人格否定したりはしません。あなたに対して腹を立てたとしてもそんなことはしません。それに、そもそも、そんなに激しく怒りません。
殴られてはいない…とか、最近は殴られない…と感じるってことは、なんとか殴られていない、というだけで、いつ殴られてもおかしくない険悪な雰囲気だ、ということですから、やはりDVです。

DVっ気のある人のことを、「バタラー(殴る人)」と呼びます。
バタラーは、すぐ怒ります。そして、イネイブラーが「怒る口実」になるようなきっかけを起こすと、ここぞとばかりにキレて、言葉や舌打ちやこぶしなど、いろんなもので殴りはじめます。
怒らせたから殴る、んじゃなくて、普段からいつキレようか、いつ殴りかかろうかと、チャンスをうかがっているのが本当のところでしょう。そうして、お前のせいだ、という言いがかりをつけ、自分は悪くないというていで思う存分暴力をふるいます。

あなたはキレていい ➡ ✖暴れる 〇革命を起こす

バタラーと一緒に居ると、いつもハラハライライラモヤモヤするでしょう。でもね、あなたのほうが、とっくにキレていいんじゃないですか???

キレていいっていうのは、相手が暴力をふるうんだから、あなたも暴力を使えばいい、という意味ではなくて、暴力をふるわれているなら革命を起こして現状を打破してもいいのではないか、という意味です。
危険から、なりふり構わず逃げればいいのではないか、と思います。

暴力を受けた時、警察に通報しましたか?医者にかかって、診断書をとりましたか??
イネイブラーは、バタラーをかばって暴力を隠す傾向が強いので、そういう行動を起こしていないことが多いです。

たとえばバタラーのことを、配偶者や恋人ではなく、ルームシェアしているクラスメイトだ、と考えてみましょう。殴ったのがルームメイトなら、警察に通報するのでは?
たとえ、あなたがそのルームメイトの持ち物を、うっかり壊したことでクラスメイトがキレたのだとしても、殴られたら警察を呼ぶのではないですか?なのに、どうしてそれが配偶者や恋人になると、できないのでしょうか。

本当にバタラーが怖くて、通報できないのかも分かりません、だとしたら、家族というより、刃物で脅されている人質のほうが近いではないですか?非常に危険な状況です。
または、あなた自身の感覚が、マヒしているのかも分かりません。あの人を怒らせた私が悪いのだ、だから私さえ我慢すれば済む、とかいうふうに考えているなら、相手よりあなたが格下だ、と思い込んでいる表れではないでしょうか。

もし対等なら、殴られたときに殴り返すこともありえるはずですが、それがとても考えられないなら、上下関係があるということです。

世の中には、「しつけのためなら体罰もやむを得ない」「詐欺は騙される方が悪い」など、暴力や上下関係を正当化する、歪んだ理屈がまん延しています。その歪みがバタラーやあなたの観念に染みついているから、バタラーから受けているのが暴力であることにすら気づかないのです。

「パートナーが悪いのか?自分が悪いのか?」ばかり考えて、助けも呼べず、逃げもできず、フリーズしてしまうこともよくあります。
「悪いのはどっちだろう?」という考えに常時囚われているならそれは家庭が裁判所のようになっているということであり、健全とは言えないと思います。

大事なのは、「悪いのはだれか」ではなく、あなたにとって、「その人と過ごすことが、ハッピーなのか、苦しみなのか」です。
相手がわざと殴ろうが、無意識に殴ろうが、私がきっかけだろうが、事情があって仕方なかろうが、関係ありません。
殴る人の近くには居られないし、一緒に居ることが喜びではなく苦しみになっているならば、離れることが得策です。

火事が起こった時、誰かの放火だったら逃げるけど、自炊中の火だったら自分のせいだから逃げません、我慢します。なんて、変でしょう。
火事が放火か自炊の発火か、そんな理由はあとから考えればいいのであって、まず火(危険)からは、逃げるべきですよね。それと同じです。
また、「バタラーを好きかどうか」も、あまり役に立つ物差しとは言えません。どんなに大好きなお家でも火事になったら逃げないと危険ですし、どんなに好きな食べ物でも重度のアレルギーになってしまったら、食べるのは危険です。それと同じで、相手をいくら好きでも、一緒に居ることが危険な状態になってしまったならば、安全確保のためには逃げることが必要になります。

イネイブラーによくある歪み

1.安全センサーが機能していない

野生動物が危険を敏感に察知して逃げるように、早期にヤバさを感じられれば早期に逃げ出せるでしょうが、イネイブラーは危険を察知する感覚が壊れてるので被害が長期化しやすく、下手をすると焼け死ぬまで気づかない、なんてことになるかも分かりません。

まずは、安全センサーが壊れているのかも、と、自覚したほうがいいと思います。安全センサーが壊れてるのはかなりヤバいです。生命の危機が及んでも気づかないってことだから。火事なのに「熱い」と感じるセンサーが壊れているのです。でも、熱いと感じなくても、炎は確実にあなたを燃やし、壊します。

私も過去そのセンサーが壊れていて、モラハラ環境に長いこと留まっていました。逃げ出してから後で、暴力に関して学びはじめました。公開講座、カウンセリング、自助グループ、相談員養成講座を経て電話相談員もやりました。
その経験から言いますが、バタラーやイネイブラーは一種の嗜癖(依存症)であり、回復までにすごく時間がかかります。
私は、モラハラ環境から脱出して遠い地に移住し、10年以上経ちますが、いまだにモラハラ思考が根強いし、後遺症のようなしんどさを抱えています。きっと一生続くと思います。それでも、回復してきたなあと思う所も沢山あります。最も回復を感じるのは、自分の近くにはバタラー要素のある人がいないことです。今は、対等に尊重し合える集団とだけかかわっており、これこそ自分が回復してきた証だと思います。これはどういうことでしょうか。

2.ヤバい人にしか魅力を感じなくなる

イネイブラーは、DVに苦しみながらも、バタラー要素の強いひとの「危ない香り」に惹かれます。さらに、バタラーは、相手によって態度を変えるのが特徴で、つまりバタラーは依怙贔屓が激しいので、あなたのことを「落としたい獲物」と思っているうちは、それはそれは熱心にあなたのことをチヤホヤガツガツ追いかけてきてくれ、ほかの人より依怙贔屓をしてくれます。家来を従えた殿様が、自分のことはチヤホヤ「依怙贔屓」してくれる、というのは、イネイブラーにとっては舞い上がるほどうれしい体験となるわけです。そういう極端な特別扱いじたいがDV関係の一側面なのですが、そういうのにハマってしまうとジェットコースターのようにドキドキハラハラするDV関係にしか面白みを感じなくなり、イネイブラーのほうから相手とDV関係にもっていくように働きかけたりすることもあるでしょう。
そして殿様であるバタラーは、意中の獲物を落としたあとは、対象を「身内=家来」と見るので態度をすっかり変えてしまい、チヤホヤではなく家来のように支配します。釣った魚に餌はやらん、というのは、こういう姿を指す言葉だと思います。

お互いに尊重し合う横並びの関係は、そんなに浮き沈みが激しくありませんし、バタラーでない「まともな人」はあっさりしていて、そんなに激しく追いかけてこず、かまってもくれません。「あなたの好きにしたらいいよ」と、ほったらかしです。実際は、それが尊重ということです。
ですが、私がイネイブラー真っ最中の時は、そういう、私を尊重してくれる人には物足りなさを感じ「水臭い人だな、冷たいな」と思ったし、そればかりか「バカにしている」と腹を立てたりもしました。あるいは、自分のことを嫌っているのだ、避けられているのだと勘違いして、勝手に傷ついたりもしました。本当に、今考えると、バカみたいですね。

でも今は、口出しせず放っておいてくれることに、尊重と愛情を感じるようになりました。
そうなると、今度はチヤホヤされると「暑苦しくて気持ち悪い」「取り入ろうとされている」と感じるようになり、「危険な香り」がすると「逃げろ!」と思うようになりました。
つまりそれくらい、イネイブラーから回復すると、感覚が180度違ってくるということです。

回復への道

今DVで困っている方は、先ず家が火事のような、あぶない段階なので、まず危険から安全に逃げることを考えましょう。火がどこから燃えたのかとか、それが何を意味するかとかは、後で落ち着いてから考えればいいのです。まず、危険から身を守ることです。
バタラーにわからないように、まず情報を集めましょう。自治体の配偶者暴力センターとか、女性支援団体とかを調べましょう。市も都道府県も、両方利用できます。自治体によっては、警察にすぐに通報できるツールもあるようですから、入手しておくといいでしょう。
相談窓口にも、味方に見せかけた「敵」はいますが、まず入り口にするにはそういう場所からが適当だと思います。
同時に、脱出の準備をしましょう。新しい携帯を作っておき、いつでも今の携帯を解約できるようにしておくとか、貴重品をいつでも持って逃げれるようにひとまとめにしておくとか、新しくトランクルームや部屋を確保して、少しずつ荷物を移しておくとか。

そうやって、まず安全な場所と時間を確保したら、自分や人を大切にするとはどういうことかを学びなおす必要があります。
自分を大事にするのは一生の大仕事で、段階があります。これさえすればいいというのはないけど、先ずは自分を国宝級の仏像のように尊いものと認識することが大切です。

私の体験では、三種の体験が絡み合って回復が進みました。
一つは、勉強。書籍や講座などで、暴力のメカニズムなどを学びます。
二つは、カウンセリング。自分がクライエントとして治療を受けます。
三つは、「言いっぱなし、聞きっぱなし」の自助グループです。
上記の三つのどれ一つ欠けてもダメだと思います。
自助グループがどこにあるかは、自治体のDV相談窓口に相談してみると良いでしょう。問題を抱えている人は、複数の要素を抱えていることが多いのですが、いろいろなテーマの自助グループに参加してみてもいいと思います。たとえばDV被害者のグループ、アルコール問題のグループ、摂食障害のグループ、など。テーマごとに雰囲気も内容も少しずつ変わってくると思いますから、関連のある自助グループがあるかを調べてみましょう。自助グループにも相性があるから、何カ所か回って居心地のいいところを探すといいと思います。そこで自分の体験を話したり人の体験を聞くことで、自分がうけていた仕打ちがどれだけひどい暴力をうけていたかがやっとわかることが多いです。ただ、そういう場は「友達を作る」ことには向いていないので、個人間の連絡先交換などは避けましょう。

まともな自他尊心を育てたければ、少なくともそこまではやりましょう。

それでもDV関係を選ぶなら…

ここまで、安全確保と回復への道についてお話してきましたが、今まで通りバタラーに取り入ることに人生をかける、という生き方も、ありだとは思います。私が、そんなのダメだといったところで、それを選ぶ人を無理やり止めることはできません。それに、この日本社会はDV関係にみられる、「上下の関係」のほうが主流だし、今、それなりに地位や名声のある方々や、エリートと呼ばれる方々は、まず間違いなくこの世の「勝者」だというところから、バタラー要素の強い人ばかりだと思って間違いないと思います。
ですから、そのままの生き方の方が、強い人の引き立てを受ける、玉の輿的な出世ができる可能性は、高いと思います。そこから外れる、私みたいな生き方は、別のしんどさがあります。まるで上下関係のムラ社会から無一文で飛び出すようなもので、奇人あつかいされたり、一人だけ逃げるのはずるいなどと非難されたり、干されたりするかもわかりません。一人で、荒野で生きるような道です。でも、魂が自由を望むならば、ムラから出る道のほうをおすすめします。

小さな一歩が、大きな変化をもたらしますよ。
迷うなら、本を読んでみるとか、講座を受けてみるとか、まずはひとつでも、すこしでも、行動を起こしてみてくださいね。明るい前途を心よりお祈りしています。

サポートは励みになります。よりよい魔女活動のために使わせていただきます。よろしくお願いいたします。