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第二回「TEDxYouth@Sapporo2019」で創りたかった“無償にワクワクする世界”(TEDxYouth@Sapporo2019デザインディレクターの気づき)


こんにちは。TEDxYouth@Sapporo2019でデザインディレクターの黒沼玲亜(くろぬま れいあ)です。

前回の投稿から、随分と月日がたってしまいましたが、今回から連載が再開します。

楽しみにしていただければと思います!

今回のテーマは、私がディレクションをしていたデザイン部門の中でも、「会場デザイン」についてお話しします。

その前に、ステージについて。

TEDxの舞台において、ステージは極めて重要な役割を果たします。

登壇者の方が本番まで一生懸命練り上げたトークを一気に輝かす、その輝き方の肝を握っているのがステージの役割です。

いくらいいトークが出来上がったとしても、ステージが異なるだけで、観客の方の受けとり方も変わってきます。

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↑TEDxYouth@Sapporo2019のステージ
(写真左;石井飛鳥(代表) 右:平島竹琉(司会者))


それだけではありません。
観客の方が座る席の会場デザインもとても大切なものになっています。
それは、観客がトークを聞きやすい環境づくりであったり、その場の雰囲気をつくる空間づくりであったり、、

とにかく!!!!!!!
こだわれば、こだわるほど、とことんこだわることが出来、オリジナリティ溢れるカンファレンス(イベントのことを言います)に仕上げることが出来る、、これが会場デザインの魅力なのです。

今回私が受け持ったこの役職で、ひとつひとつのものに沢山の愛情と思いを込めて作り上げました。

沢山の人の助けと、無償の愛のもとがあったからです。本当にありがとうございます。

それぞれに込められた思い、そしてそれが作り上げられるまでの過程、ドラマ、学び、、そんなものをここのnoteでお伝えしたくて描いていますが、今日は全体を通して、私が最後まで貫いてきた、創り出したかった世界についてお伝えします。


1、一番最初に胸の奥底から溢れてきたもの

ときは、2018年6月。
TEDxYouth@Sapporoの立ち上げ者である石井飛鳥(いしい あすか)に声を掛けてもらい、このメンバーになりました。

でも、最初はめちゃくちゃ不安で仕方なかった。だって同じコアメンバー(一番トップのメンバーになります)は皆エリートで、沢山の知識が豊富…しかも超進学校で、、。私は自由な学校に通っていたので、自分がその場にいてよいのかどうか、正直場違いだな…と思いながら参加していました。

でも、新しい環境下にいくのは嫌いではなく、むしろ自分の力量がまだまだなのはとてもよくわかっていました。
なので、必死についていこう!と思いながらやっていました。

そんな中で、私が任されたのは「デザイン部門」。
おおまかなものとして、「会場全体のデザイン」を任せてもらうことになりました。

「え、うそ!?ステージ?待って。待って。そもそも舞台ってどういう風に作られているのかわからない、、。」

演劇を1年程、中学校の部活でかじったことのあるぐらいだったので、呆然、、。

ですが、それと同時に、胸の中からふつふつと熱いものが溢れてくるのを感じました。
それは、私を最後の最後まで突き動かし続けたのです。


“無償にワクワクする”そんな異世界が創りたい

それは、実際に見たかのように映像として頭の中に流れてきたんです。
具体的に言うと、こんな感じで。

ホール入り口の扉を開けると、そこには異世界が広がっている。
ステージ上は、静寂の中にも、今か今かと始まるのを待っているかのような、熱気が渦巻いている。
それは、外の世界の空気感とは異なっていて、ポジティブで、どこか神秘的で、熱い。
席に座ると、隣には知らない人。
でも、何故かわからないけれど、この人に話しかけてみたい、という気持ちが湧いてくる。
それは、周りが、会話に満ちているからかもしれない。ステージ上にある熱気が、自分をそうさせるのかもしれない。
「あの、!」
話かけてみると、その人は笑顔で、気軽に話してくれる。よかった、、。少しの自信がつく。
ここには、なんでもポジティブに変えるような魔法がかかっているみたい。
それから会話がどんどんはずんでいく。新しく隣に来た人も巻き込んで。そして、会場全体の熱気がピークに達したとき、会場の明かりが消える。
暗がりの中に渦巻く熱が、ジングルで爆発する。
そのとき。観客が、スタッフが、スピーカーが、ひとつになる。



とても不思議な感覚でした。
でも、この世界が出来上がったら、どんなに、どんなに、素敵だろうか。

実は、もともと私はコミュニケーションがとても苦手でした。人に話しかけにいくときでさえ、「せいっ!」と覚悟を決めて話にいく。
また、どこかで自分があまり成績が良くないということに対しての劣等感を持っていたように思います。

でも、そういった欠点や偏差値で決められた世界ではなく、みなが個性を受け入れ、賜物を生かし、平等に交流することが出来る社会。

毎日の日常の繰り返し、新しいものに飢えている自分、、。
この気持ちを解消したい。
そして、もし世の中に同じような気持ちを感じている人がいるのだとしたら、そういった人たちと共に、理想の社会を形成したい。
このイベントで、そんなワクワクした気持ちを、みんなが爆発させることが出来たら、どんなに格好良くなるんだろうか。

そう思ったら、なんだか全身が熱を帯びて、胸がドキドキして、苦しくなって止まらなくなりました。

絶対に、やってやろう。

そのとき、そう決意しました。
この思いは、面白いことにこれから約一年起こったどんなことよりも勝って、私の中のろうそくに火を燃やし続けていたのです。


2、それぞれのデザインに掛けた思い

会場デザインは、主に3つの要素で成り立っています。

1、舞台装飾デザイン
 →ステージ上のデザイン
2、会場デザイン
 →観客席のデザイン
3、テック系デザイン
 →音響・証明のデザイン


この中で、3のテック系デザインに関しては、パートナー企業様にお願いし、想像を越えた素晴らしい演出を手掛けてくださいました。

(演出に関して、とても大切なエピソードがあるのですが、それは後程、、!)

私たちが主に担当したのは、1と2の舞台全体の“目に見える形でのデザイン”です。

・舞台装飾デザイン


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2019の舞台↑

「可能性がぶわーって溢れてくるようなステージがいいですよね」

これは、メンバーがミーティング中にこぼした一言。この言葉がきっかけで、この舞台が出来たと言っても過言ではありません。

でもその前に、この言葉が生まれたきっかけとなる「キービジュアル」についてご紹介します。

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↑2019年度キービジュアル

キービジュアル、というのはこのTEDxのイベントが毎年開催されるに当たってのテーマを、絵に起こしたものです。

このキービジュアルは私が担当させて頂きました。

今年のテーマが「WAKWAKU」で、四方八方にある扉はそれぞれの潜在意識を表しています。
“意識は氷山の一角にしか過ぎない”言われるように、私たちは普段多くのことに気がついていないことが多いのです。
その潜在意識を、人と人とが出会い、手を取り合うことによって開かれ、その中に秘められていた沢山の思いや可能性を開くことで、新たなものを生み出す。

という意味が込められています。

舞台は、スピーカーのトークを輝かせるものでもあり、同時にテーマを伝えるものでもありますから、この部分に何らか関わりを持たせる必要があります。

そんなときにメンバーが、「幾何学模様」に着目しました。
メンバーはこの幾何学模様が、可能性になっている。と案を持ちかけてくれたのです。

そして、出来た第一案は下のようなデザイン。

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星はそれぞれの個性や可能性を表し、それぞれが繋がりあう様子を体現したのです。

しかし……。
これが出来たのが、なんと12月近くになってから。
本番まであと2ヶ月半しかないという状況だったのです。

メンバーと、何度も妥協点を話合いました。
そして、以下のような案が出来上がりました。

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しかーし!!これが出来たのは、1月。
本当に心からこれは間に合わない、、という状況下の中で、もう一度話合いました。

そして、先ほどの一言が出てきたのです。

「可能性がぶわーって溢れてくるような世界がいいですよね」

「可能性が、溢れてくる???」
今まで、上記のような星や幾何学模様は、個性を表し、繋がりを表すための材料でしかなかった。

その幾何学模様が、可能性として、全体に広がってく様子を、舞台上に体現化出来たらいいのではないか?

そして、その会話から生まれたのが、このステージの原案である以下のデザインです。

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そのヒントをくれた彼女は、「キービジュアルから思い付いた。」と語ってくれました。

すべてのヒントは、原点に詰まっている。

そんなことをここで学んだのです。


・何度も舞台装飾デザインを描き直してくれた「くぼちゃん」の存在


この舞台装飾デザインの案を何度も書き直してくれたのは、私の仲間として一緒に活動してくれた久保ちゃんでした。

彼女は当時高校1年生。
学校は課題やテストなどが比較的多い学校で、そんな中でも「TEDxが好きだからやりたい!!」と手をあげてくれたのです。

しかし、学校と部活、そしてTEDxを両立するのは、なかなかハードなことでした。

デザイン案を上げてくれた次の日に、久保ちゃんと話していると

(私)「今日何時間寝たの?」

(久保ちゃん)「今日は、、、3時間ぐらいですかね。」

そこまでして頑張ってくれる。
睡眠時間が短いときの身体のつらさと言ったら、私も徹夜をしていたのでよくわかります。

この頑張りがあって、あの舞台が完成しました。
本当に素晴らしいメンバーと共に作り上げることが出来たことに感謝しています。

このデザイン案を見るたびに、彼女が夜中必死になって描いている様子が頭に浮かび、燃え上がっていました。


・会場デザイン

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↑2019の椅子なし席

「ここにお金かけたいんだ!いやだ!絶対につくるんだから!」

会場デザインは、観客の方の座る席をデザインしていくものです。

今回、私たちは、上の写真のような「椅子なし席」つくりました。
その名の通り、椅子ではなく平台にカーペットともちもちクッションを置き、リラックスして座れるような環境をつくりだそうとしました。

これは、私にとってとても思い入れのある部分でもあります。

この席をつくろうと思ったきっかけは、私達の肝っ玉母さんとも言える「TEDxSapporo」の存在があります。

TEDxSapporoは毎年札幌で開催されており、日本全国のTEDxの中でも上位の歴史を誇っています。

「TEDxSapporo」と同じ、とは決して言われたくなかったのです。

TEDxSapporoとの差別化をどう図ろうかと色々なTEDxの動画を見ていたところ、私はあることに気がつきました。

「あ、観客席」

スピーカーさんの立つ舞台以外の部分も、デザインなんだ。と感じたのです。

そこで、私の一番最初に感じたあの
“無償にワクワクする異世界”を体現化するために、椅子なし席という判断をしました。

みんな心の底に、しっかり「子供心」って残っていると思うのです。
公園や遊園地に行ったとき、面白い遊具があれば、そこで遊んでみたくなる。
そんなとき、ワクワクしませんか?
そんな興味本意で、この椅子に座って、クッションを使って欲しかったのです。

理由は他にもあります。
私はこの観客席を通して、年齢、性別関係なく、気軽に会話が生まれてくる環境であって欲しかった。

 そうすれば、色々なことがそこから生まれてきます。もしかしたら、現代の若者が考えていることを大人の方が受け取って、それをご自身のビジネスに生かすことが出来るかもしれない。

また、若者はポジティブな社会を知り、前に踏み出す一歩になるかもしれない。

そんな素敵な場所が、ここで生まれて欲しかったのです。

・予算担当ともめにもめまくった

しかし、この舞台を生み出すために一番ネックになっていたもの。

それは予算でした。

今回、ここの舞台に舞台予算の5分の1を投資しました。
しかし本来であれば、その場所は、別に“必須”ではありません。

今年初開催ということもあり、予算もかなり押さえていました。
なので、予算担当の、張田仁平(通称:はりじん)とこのことで何度かぶつかり合いました。

(私)「TEDxは単なるイベントじゃない。ここでコミュニティが形成されて初めてTEDxなんだよ!?だからここの場所が必要なの!」

(はりじん)「でも今は予算的に押さえてもらわないと困る。れいあの今使っているお金、誰が集めたと思ってんの?パートナー企業担当の昴(副代表)とかがめっちゃ頑張って集めてきたお金なんだよ?」

赤字になるかもしれない不安と、彼が毎日戦っていたことはわかっていました。
彼がコアチームの同じ学校の仲間と一緒に色々と考えて、SNSやビラ配りなどを必死に行っていることは知っていました。

でも。。
だからこそ、そう言った状況の中で来てくれた観客の方は本当に奇跡みたいな存在。だから、めいいっぱいのものを持ち帰って欲しかった。
「高校生だから」という支援的な意味での参加ではなくて、ちゃんとしたイベントとして、もっと言えば、私達が生み出してきた作品に対して、お金を払う=価値を見いだして欲しかったのです。


最終的には、彼も納得してくれ、この椅子なし席を用意することが出来ました。
彼の理解に、本当に感謝しています。
この場を借りて本当にありがとう、はりじん。

でも、ここからもっと嬉しいことが起こりました。

・リハーサルの日の奇跡

ひとつは、本番直前の日のことです。
今まで赤字ギリギリだったのが、この日だけでチケットの売り上げが30枚越え、今ままで赤字だったのが、一気に黒字になったのです。

私ともめにもめまくったあのはりじんの努力が、勉強や宿題や学校の圧力があるなかでも、集客のために必死に行動を起こし続け、先頭を切ってきた彼の努力が実った瞬間でした。

すごい、、。と思いました。
このイベントに関して、興味を持ってくれる人がちゃんといてくださる。



はりじんの本気が、みんなに伝わって、みんなを動かして、みんなの本気が、届いたんだ、、。

勿論、すべてにおいて自信も持って行動してこなかった訳ではありませんでしたが、この社会で価値を見いだすためにどれだけの労力が必要なのかを、ひしひしと感じていたので、正直驚きを隠せませんでした。

「期待されている。」

チケット購入者数は180名。
この180名の観客と18社のパートナー企業様、そして90名を越えるボランティアスタッフの、みんなの期待がかかっている。
はりじんのためにも、集客頑張ってくれたみんなのためにも、いろんな支援を裏で沢山してくれた人のためにも、、。

本番の舞台では、私は舞台監督でした。
この知らせを受けたとき、かすかな震えと動悸、そして今までここに関わってきた中で一番の、熱い燃えたぎるような思いが、心の底から溢れてきたのです。


・「椅子なし席に…」
 

2019年2月17日。
開場をして、もうあと、5分ほどで本番というときの話です。

開場の明かりを落とす指示を出すために、バックヤードにあるテレビで、開場の様子を見に行きました。

「あれ、、?」

一瞬わからなかったのです。
椅子なし席がどこにあるのかが。

椅子なし席はクッションがカラフルなため、テレビ上でもかなり目立ちました。
しかし、それがわからない。


そうです、、、。
その席には、普通の椅子と同じぐらいの人が座ってくださっていました。
それも、クッションを抱えたり、楽しそうに談笑しながら、、。

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嬉しかった、、。

素直に嬉しかった。
心の底から、そこに座ってくれた人たちに対して、ありがとうと叫びたいぐらい、嬉しかった。

不安でした。
予算担当にあれだけ熱弁をして、納得してもらったけれど、それがうまくいかないんじゃ話にならない。
本番まで、心の底で、ずっとずっと、
「出来る限りのことはやった。だから上手くいけー。上手くいけー。」
とずっと祈っていました。

それが、自分の想像を絶する形で、形になっている。

思いが、、伝わった瞬間だったんです。

このとき、私は学びました。

バカみたいにかけてきた熱量は、ちゃんと人に伝達していくんだって。

それならバカでいいと思いました。
むしろバカみたいに熱をかける方が丁度いい。

そうして、この舞台デザインは作られました。
あとは、本番のみ。

舞台監督として、ホールの音響・照明さんと連絡をとるためのインカムのマイクを、自分の口許にしっかりと位置を会わせて、気持ちをただしました。


そして、、、ついに、
約1年間熱を注いできた
「TEDxYouth@Sapproro2019」の舞台が幕を開けたのです。



次回は、「わからない!を連発していた当初」をお届けします。


最後まで読んでいただきまして、まことにありがとうございます!


プロフィール

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黒沼玲亜(くろぬまれいあ)/18歳

TEDxYouth@Sapporo2019デザインディレクター 
夢ある世界を描くクリエイター

爆発的な感動を届けるために、ものづくりを通して発信しています。今はまんが。

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CC BY-NC-ND 2019 TEDxYouth@Sapporo

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