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アイルランド人は妖精を信じている

アイルランドには「妖精注意」の道路標識があると聞いていた。
それって「クマに注意」という道路標識と同じことなの?
興味津々。
アイルランドに行くと決まった時、その標識をどうしても見たいと思った。


「妖精注意」の道路標識がある場所は事前に調べていた。

アイルランドの南西、ケリー州のリング・オブ・ケリー(ケリー周遊道路)にある「貴婦人の眺め」という景勝地の近くだ。

このケリー州の西沖合にあるのが、世界遺産のスケリッグ・マイケル島。
スケリッグ・マイケル島に行くには船しかなく、その船も天候だけが理由ではなく出ないことがあるという、訪れることが中々できない場所。
映画「スター・ウォーズ フォースの覚醒」のラストシーンでルークが登場した切り立った岩山。私はルーク登場より「あ!スケリッグ・マイケルだ!」と空撮の素晴らしい景色に興奮してしまった。

閑話休題

妖精注意の標識を見たいと申し出た私にガイドさんはこう言った。

「“レプラコーン・クロッシング(妖精横断中)の看板”は、お店が持っているものなので、お店が開いているときだけ置いてあるんですよ。」

えええええ??!!

なんと”妖精注意の道路標識”ではなく、”妖精横断中の看板”で、お店にお客様を集めるために作ったというのか。

ショックを受けた私に追い打ちの一言。
「そこは一方通行なので、今日は通りません。」

夢は砕けた。


私がアイルンランドを訪ねたのはだいぶ前だから、今その“レプラコーン・クロッシングの看板”は常設となっているかもしれない。なっているといい。

「アイルランド人は妖精を信じているんです。」
ガイドさんが話してくれた。

レプラコーン・クロッシングの看板には妖精の姿が書かれているのだ。

小高い場所は妖精の住みかだからそこで遊んではいけないとか、妖精の木(フェアリー・トゥリー)を切ると不幸が訪れるからむやみに切ってはいけないとか、小さい頃から親から言い伝えられるのだそうだ。

実際コネマラ地方を旅していたときに、妖精の木を切らないように木を避けて道路を造ったと聞いた。
妖精の木は信仰されていて、願いや祈りがあると妖精の木に布を巻くのだという。
今も妖精を信じているんだ。

「レプラコーン横断注意」、いいではないか。

妖精・レプラコーンはいたずら好きな男性で、職業があり、歌を歌いながら靴を作る靴屋さん。
アイルランドは風がとても強いのだが、風の日に聞こえるのは風の音ではなく、レプラコーンの歌声なのだ。

この話には続きがある。
レプラコーンは、大金を黒い壺に入れて虹の麓に隠している。
レプラコーンを捕まえて、お金のありかを告白させるとお金持ちになれ、幸せになれると。

えええ?
妖精を捕まえていいの?

アイルランドにいる妖精はレプラコーンだけではなかった。

●バンシー(死を予告する女の妖精)
●メロウ(人魚。男も女もいるが、女のメロウに会うと嵐が来るので漁師は会いたがらない)
●ガンコナー(愛を語る男の妖精 口説かれてその気になると姿を消してしまうので女性は恋焦がれながら死んでいく)
●ドゥラハン(首がなく、首をかかえている騎士の妖精。女性という説も。死を予告する)
これ以外にも色々いるようでそれぞれに逸話がある。

小説などのキャラクターとして出てくる馴染みのある名前があるのも興味深い。何でもそうだが、知っていなくても楽しめるけど、知っていたらより深く納得できる。

「妖精を信じている」とうことだが、アイルランド人は、これらの妖精を信じているとか信じていないとかいうレベルではなく、生活の一部として認識していて、いて当たり前ということのようだ。
私が八百万の神を自然に思うのと同じこと。

今も妖精を信じているアイルンランド人、いいなと思う。


看板の真偽を確かめに、レプラコーンを捕まえに、アイルランドをまた訪ねたい。

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