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童謡『もりのくまさん』って、実は怖い。

――彼は、少年の頃から『もりのくまさん』が怖いのです。というのも、2番の歌詞で、「くまさんの いうことにゃ おじょうさん おにげなさい」とあります。なぜ、「おにげなさい」と言ったのか。


人生は物語。
どうも横山黎です。


今回は「白鉛筆さんの『ごめん、やっぱり青がいい。』が面白かった!」というテーマで話していこうと思います。


◆文学フリマで知り合った!

先日開催されました文学フリマ東京で買った本の中に、白鉛筆さんの『ごめん、やっぱり青がいい。』という短編集があります。


タイトルに惹かれたこと、白鉛筆さんがnoteをやっていること、中身をさらっと読んだら「え、読みたい…」と思ったこと。これら全部が購買意欲につながりました。


で、昨晩で全部読み切ったんですよ。4つの短編で構成されているんですが、どの話も面白かったんです!!その中でも特別気に入った作品を、今回は取り上げたいと思います。


『真夜中のテディ』という物語です。


◆本当は怖い『もりのくまさん』


この物語は、『もりのくまさん』の話題から始まります。


主人公は佐伯昇という男子大学生。彼は、少年の頃から『もりのくまさん』が怖いのです。というのも、2番の歌詞で、

くまさんの いうことにゃ
おじょうさん おにげなさい


とあります。ここに関して、佐伯昇はひっかかりを覚えているのです。3番以降、くまはお嬢さんを追いかけて、拾ったイヤリングを渡して、最終的には歌い合うハッピーエンドを迎えるのです。


なぜ、「おにげなさい」と言ったのか。


佐伯昇は気になって仕方がなく、当時通っていた保育園の先生に訊きました。

「くまさんはねぇ、おなかがすくと人間を食べてしまうの。だから、お嬢さんあぶないですよ、はやくにげてって言ったんじゃないかな」


佐伯少年の背筋は凍りました。


お腹がすくと、くまは人間を食べようとする。だから、せっかく知り合ったお嬢さんを逃がさないといけない。我慢できなくなる前に、遠くへ逃がさないといけない。そういう解釈をしたというわけです。


つまり、「自分の狂暴性を制御できないが故に、誰にも触れられずにいる、孤独な姿」を描いているわけです。
#本文引用



◆後輩の女の子が家で眠っている


さて、場面は変わり、佐伯昇の部屋、時刻は深夜1時32分。


彼は自分の部屋で『もりのくまさん』って怖い歌だったよなあと思い出していたのです。なぜ、今そのことを思い出したのかわからぬまま、話は進んでいきます。


佐伯昇の部屋には、彼の他にもうひとりいました。後輩の西澤可奈子。飲み会で酔いつぶれて、佐伯昇は仕方なく自分の家までおぶって運んで、寝かせてあげているのです。


ありふれた大学生のエピソードのようですが、終盤にかけて、この物語は深みを増します。最後の1行まで目の離せない展開が待っていたのです。


この衝撃を味わっていただきたいのでネタバレはしませんが、ひとつだけいうとすれば、「『もりのくまさん』と「後輩の女子を連れ込んだエピソード」の取り合わせが最高!」です。


ちなみに、noteでも全文読めるそうなので、興味を持たれた方は、是非!

↓↓↓



素敵な物語に出逢えてとても嬉しいです。

文学フリマは、魔法みたいな場所。

次回11月に開催される文学フリマ東京35には、出品者として参加しようと考えています。みなさんと一緒に盛り上げていきたいです!


最後まで読んでくださりありがとうございました。

【#337】20220602 横山黎



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