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PT/OTのための更衣動作3つのプロセス

読んで頂いているあなたに質問です。
更衣動作へのアプローチでは「服を着る」のどの段階にアプローチすることが多いですか?
この記事を読みながら振り返って頂けると嬉しいです。

ちょっと臨床の思い出話

以前、維持期施設に勤めていた頃、利用者の服に「番号」が振ってあることに気づきました。本人に尋ねると
「リハビリの先生が順番を間違えないように書いてくれた。」
とのこと。

なんということでしょう

非常に複雑な造形の衣服ならそれも必要なのかもしれませんが、それはもはやアートです。
「順番が分からないのですか?」と問うと、
「いや、こうするって分かっているけど、上手く着られない」と言います。

ですよね(笑)

上手く着られないから、着方を教えてあげる。というのは安直すぎます。
手順で躓いていない人に、手順で縛るとまた新たなエラーが生じます。

患者が更衣動作のどこでエラーが生じているかを評価するためには、更衣動作のプロセスを振り返る必要があります。

ということで、今回のテーマは「更衣動作」です。
理学療法士・作業療法士であれば臨床で必ず関わるADL動作ですね。

更衣動作3つのプロセス

更衣動作の要素に関しては、次の記事で細かくお伝えしていきます。
今回はもう少し、ザックリと服を着るプロセスを考えてみます。
ヒトは、服を着るということには大きく分けて3段階の手続きを踏んでいるようです。

①服を認識する
②服と自己身体のマッチング
③服を自己身体に身に着ける

臨床上、もっともアプローチされている段階は③でしょう。
取り上げる要素の数としても「③服を自己身体に身に着ける」という点が多くなりますが、①、②でエラーが生じると③で必ずエラーが生じるため、①、②の要素も非常に重要です。

細かな反応に関しては、一つの記事に収められないので、各論でお伝えします。
一部「更衣動作におけるヒト本来の反応」をYouTubeで先行して配信しています👉コチラ

更衣動作の要素を抽出すると10項目程度になるでしょう。
そんなにたくさん見るのは大変!と感じる場合は、まずこの①~③の段階のどこでエラーが生じているかを見極めましょう。

①服を認識する

更衣動作のプロセス1

我々健常者が見えているように、服を服として認識できているかがポイントです。平置きにされても、クシャクシャに形が変わっても認識できること。
クシャクシャになっても持ち上げて広げれば構造は明確に分かりますよね。
それを評価します。
といっても患者の反応は障害に応じて人それぞれです。
ここでは一部の例を挙げます。

👉単純に服が服として見えているか?(ベストは難易度が高い場合あり)
👉たたまれた状態でも服として認識できるか?
👉服の前後の認識ができているか?(タートルネック等は難易度が高い場合あり)
👉服をたたむ、広げる課題でそれぞれの位置関係が混乱していないか?
👉服の形なりにハンガーに吊るせるか?

などなど。

「①服を認識する」は、視知覚の能力を強く反映していると言えます。

患者の主観を尋ねるというのも良いですね。
「厚みが見た感じでは分かりにくい」「境目が分からない」といった表現があるかもしれません。

同じ「服を認識する」といっても様々な要素がありますよね。
服は多種多様で、形も柔軟に変わるものです。
我々ヒトは、何を基準に服を服として認識しているのか、それは「②服と自己身体とのマッチング」とも密接につながっているため、この記事では①②を中心に紹介します。

②服と自己身体のマッチング

更衣動作のプロセス2

①で認識した服に対して自己の身体を重ね合わせることをします。
ここでは、自己の身体認識の要素が強く反映されます。
もちろん「①服を認識する」際の視知覚の機能があってこそ、自己身体とのマッチングが可能です。
また、単純な自己身体の認識だけで、服とのマッチングが完成しているわけではありません。変化する服の形状と自己身体の形状の両方をお互いに変化させて合わせていきます。

そのため、この段階では①③両方の性質を重複していると考えてみましょう。
評価する時の視点として、以下に例を挙げます。

👉服を身体に合わせられるか?(ショッピングで自分に合わせるように)
👉見た目で服のサイズが自分に合うサイズか概ねの予測が立てられるか?
👉服を着た時に体系に合っているかどうかの認識ができるか?
👉服の形状に対して、着る動作がマッチしているか?

などがあります。

今回は更衣動作に絞って反応の評価方法を提示していますが、身体認識という視点で考えれば、更衣動作以外でも評価できますね。

②でエラーが生じる患者は、机の下の物を取ったり、狭い隙間を通ったりといった周辺環境に対して身体を合わせるということが難しい場面を見かけることがあります。

厳密に①と②のプロセスを分けることは難しいですが、課題を提示した時の患者の反応からどちらの要素が強く障害に影響しているかを考えます。

③服を自己身体に身に着ける

ようやく服を実際に着る段階に入ります。
理学療法・作業療法場面で最もアプローチされている段階ですよね。
逆に①②にアプローチされているセラピストは非常に少ない印象です。

この③については次回の「更衣動作の要素」で詳しく取り上げますので、今回は割愛させていただきます。

まとめ

いかがでしたか?
服を着るための3つのプロセス
①服を認識する
②服と自己身体のマッチング
③服を自己身体に身に着ける

この中でも①②を取り上げました。
①服の認識では視知覚の影響をメインに評価しつつ、身体認識の影響も考慮する。
②服と自己身体のマッチングでは、身体認識の影響をメインに評価しつつ、視知覚の影響と③に生じるエラーの影響も考慮する。

でした。
記事のボリュームの関係で③服を自己身体に身に着けるは次回となりますので、楽しみにしておいてください。

この記事が皆様の明日の臨床の手がかりになりましたら幸いです。

ご質問・ご意見等ございましたらコメントください。
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