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子どもに『正しさ』を教えてはいけない?

子育てを頑張るお父さん・お母さん、毎日お疲れ様です。

子どもがイタズラをして、それを注意する。

毎日繰り返される子育ての風景ですよね。

今回は子どもがイタズラをしたときに、『正しさ』を教えてはいけない、押し付けてはいけないということを書いてみたいと思います。

「悪いことをしたら注意するのは大人の役割だ」

「正しいことを教えないでどうする」

という直感や意見を持たれる方も多いと思います。

それはそうなのですが、『正しさ』ばかり教えてしまうと、子どもの発想や可能性を狭めてしまう可能性があるのです。

今回の提案で、親御さんの気持ちを少し楽にできればと考えています。


子どもはなぜイタズラをするのか

子どもはイタズラを『悪いこと』と思ってやってはいません。

大人と子どもでは見ている世界が違う、ということを以前のnoteでも書きましたが、大人にとっての『悪いこと』は子どもにとって『悪いこと』とは限らないのです。

では、子どもはなぜイタズラをするのでしょうか。

それは、世界に触れて、自分の中の世界を作っていくためです。


子どもはイタズラを通して成長する

ヒトは、感覚が未分化の状態で産まれます。

未分化というのは、それぞれの刺激(光、音、接触など)の違いが分からない状態です。

産まれた瞬間は目もほとんど見えませんし、身体を動かして何かに触れることもできません。

口の近くに何かが触れるとそこに口を近づけるという吸啜反射(きゅうてつはんしゃ)があるので、反射を利用して授乳が可能なだけです。

そのような状態で産まれたヒトは、長い期間をかけて感覚を分化し、成長していきます。

初めは<人の顔とそれ以外の区別>、数人の顔を見比べることで<親とそれ以外の顔の区別>、<母親とそれ以外の声の区別>など。

そのためには様々な感覚を経験し、比較し、違いを確かめ、学習していかなければなりません。

そして、受動的に様々な感覚を経験・学習して発達してきたヒトは、自分から世界に働きかけ、<何をしたらどうなるのか>を学ぶようになっていきます。

その延長線上にあるのが『イタズラ』なのです。

「これを投げたらどうなるのだろう」

「これを落としたら、どんな音がするのかな」

「ここに触れたらどんな感触なのかな」

子どもがこんな風に考えているかはわかりませんが、何かをした結果どうなるのかを確かめる、という試行錯誤を繰り返していることは間違いありません。

このような営みは、子どもが成長していくために必要不可欠なものなのです。


ユクスキュルの機能環

このような試行錯誤をもう少しややこしく、生物学の観点から説明します。

興味のない方は飛ばしてください。(笑)

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上の図は、ユクスキュルという生物学者が提唱した『機能環』と呼ばれるものです。

主体の客体に対する関係は、上の機能環の図式によってもっとも明瞭に表される。それによって主体と客体がいかにお互いに適応し合って整然とした全体を形づくっているかを示すことができる。(ヤーコブ・フォン・ユクスキュル著.日高敏隆ら訳:生物から見た世界, P20)

この図を子どものイタズラとして説明すると、『主体』は子ども、『客体』は子どもにとってのおもちゃとなり得る全てのモノ、となります。

子どもはおもちゃの存在を『受容器』と『知覚器官』を通して認識すると、『作用器官』と『実行器』を用いておもちゃに働きかけます。

そしておもちゃに働きかけた結果、『受容器』を通して新しい知覚が『知覚器官』に入ります。

そしてまた新たな作用の仕方が生まれ、おもちゃに対してそれまでと異なる働きかけを行う。

このようなループが繰り返されることを図式化したのが上の『機能環』です。

そして、このループを繰り返し回していくことが、生物が世界を知り、自身の世界を作っていくための営みです。


子どもにとってのイタズラの本質

子どもは自分の周りにあるモノ全てに働きかけ、様々な知覚経験を積み重ね、自身の世界を作り上げていきます。

それは、「これは何だろう?」「こうやったらどうなるのだろう?」「こうしたらこうなったけど、次はこうしたらどうなるのだろう?」という、発想と実行を繰り返すということです。

大人の考える『正しさ』とは、例えば道具の正しい使い方だったり、おもちゃの正しい遊び方だったりします。

しかしその『正しさ』は大人が決めた規範に沿ったものでしかなく、その『モノ』や『おもちゃ』の本質ではありません。

子どもが自分自身で試行錯誤を経験することなく大人が『正しさ』を押し付けてしまうと、自分で考えて試してみる、という機会を奪ってしまうことになります。

このように考えていくと、『イタズラ』とは子どもにとって大切な学習の機会なのです。


まとめ

今回は、子どもに大人が大人の『正しさ』を教えてしまうことがなぜいけないのかを解説してきました。

大人から見た『イタズラ』も、子どもにとっては大切な学習の機会です。

子どもの自由な発想を肯定し、子どもの可能性を広げる。

そのためには、大人の『正しさ』を押し付けるのではなく、試行錯誤を肯定する態度で関わることが大切なのかもしれません。

悪いことをしたらすぐに注意する、というのは親にとっても大変です。

多少のイタズラであれば、「命に関わるようなことはないから大丈夫」「他人に迷惑はかからないからOK」ぐらいの気持ちでいる方が、親の気持ちも楽になるのではないでしょうか。


より深く学びたい方へ(書籍紹介)

今回紹介したユクスキュルの『機能環』が説明されています。



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