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『フレイル』から考える、これからの働き方

『フレイル』という概念をご存知でしょうか?

理学療法士界隈と行政界隈(介護予防関連)では盛り上がりつつあるのですが、まだ一般的に周知されているとは言えない状態かもしれません。

実は、国はこの対策に200億円(2020年〜)もの予算を計上し、都道府県や市区町村へ交付するという事業を行っています。

日本は少子高齢化によって定年が延長されたり、年金がもらえる年齢が引き上げられたり、様々な問題が生じています。

こうした様々な問題に対応するため、「高齢になっても働き続けないとならない」という声も聞こえますが、これはネガティブなことなのでしょうか?

『フレイル』という概念を知ると、国が高齢者を働かせようとしているという一般的な見方が少し変わってきます。

今回はそんな視点から、今後の働き方について考えてみたいと思います。

このnoteを読むと、
✅️『フレイル』という概念を簡単に理解できる
✅️働くことに対する意識が変わる
✅️今後の働き方を考え直すきっかけになる


『フレイル』って?

そもそも、『フレイル』とは何なのでしょう?

一般の方は聞いたこともない方が多いでしょうし、理学療法士も「言葉は聞いたことあるけど…」という方が多いかもしれません。

『フレイル』とは、加齢に伴う虚弱状態のことです。

この『フレイル』の状態は健常と要介護との間に位置し、要介護状態に陥るリスクが強くなっている状態であるとも言うことができます。

さらに『フレイル』は次の3つの側面があるとされます。

●身体的側面
●精神・心理的側面
●社会的側面

これらの3つの側面がお互いに影響し合っており、単純に体力が低下するような虚弱の状態だけではないということです。

『フレイル』の状態は要介護状態の予備軍と位置づけられますが、可逆的なものと考えられています。

つまり、要介護状態になってしまえばそこから脱却するのは難しくなってしまいますが、その前段階である『フレイル』の状態であれば健常の状態に近づけていくことが可能であると考えられているのです。

ここで、『フレイル』を改善するために何が必要なのかを考えてみたいと思うのですが、先ほどの3つの側面を全て含む活動は何があるでしょうか?

色々な活動が挙げられ、介護予防事業として現在行われているもの(通いの場、体操教室など)も有効だと考えられますが、もっと良いものがあると思うのです。

それは、仕事・働くことです。


国が目指す健康寿命の延伸

国は2040年までに健康寿命の3年延伸し、75歳以上にするという目標を立てています。

健康寿命は寿命とは異なり、活動を制限されない状態を維持できる年齢のことを指します。

そしてこの健康寿命と寿命とは約10年の開きがあるのです。

理学療法士として高齢者に関わっていると当たり前のように感じてしまいますが、多くの場合、疾病や疾患にかかってすぐに亡くなるわけではありません。

ケガや病気によって身体が弱り、それまで通りの生活が困難になってしまいます。

そして、その状態が平均で10年続き、寿命を迎えるということです。

そしてこの10年間に介護保険を利用したサービスを利用したり、多くの医療費が必要となる場合も多いということです。

こういった状態になってしまうのを防ぐため、要介護状態の手前であるフレイルの時点で手を打とう、フレイルになる前に手を打とう、というのがフレイル対策における中心的な目的です。

国の意図としては介護費や医療費の削減をしたいという意図も当然あると思います。

国民の立場では「介護費・医療費の削減なんて知らないよ!」と思われる方も多いのかもしれませんが、これはお金だけの問題ではないと考えます。

シンプルに考えましょう。

寿命を迎える前の10年間も介護が必要な状態で生きていくの、嫌じゃないですか?


健康寿命と働ける期間

先ほども書きましたが、『フレイル』には身体的側面、心理・精神的側面、社会的側面、という3つの側面があり、お互いに影響し合っています。

そして、この3つの側面を全て含む、3つの側面全てを活性化できる活動というのが、仕事・働くことだと考えられるのです。

浅い考えで簡単に言いますが、<健康↔働ける>という相互的な関係を長く維持できれば、それは私たち自身にとっても幸せなことではないでしょうか。

仕事自体が嫌だという方は多いと思います。

ただ、それは自分のしている仕事が嫌だというだけで、自分のしたい仕事・楽しいと思える仕事に出会えていないからかもしれません。

現在、介護予防事業の対象となっている高齢者は、体操教室や地域の通いの場を活用して、フレイル予防に努めるのが良いかと思います。そのための施策が数多く行われていますので。

ただ、これから先、私たちが高齢者となる頃には、介護予防の在り方は大きく変わっているのではないでしょうか。

おそらく、近い将来、75歳くらいまでは仕事をしなければならない世の中が訪れます。

これは「長く働かなければならない」という捉え方もできますが、「長く働いて良い」という捉え方もできます。

これをポジティブに捉えるのであれば、<長く働くことができる→フレイル状態を予防できる→もっと働くことができる>という好循環になります。

そのために必要なのは、体力が衰えてきたとしても長く続けられる、しかも自分自身が楽しいと思える仕事に出会うことではないでしょうか。


まとめ

『フレイル』という概念を紹介し、今後予想される働き方について考えてきました。

高齢になっても働かなければならない世の中は間違いなく訪れると思います。

であれば、今のうちから『高齢になってもできる楽しい仕事』を探しておくことも重要だと思うのです。

そして、その仕事をするための知識・技術の習得も早いうちから始めておかなければなりません。

「働くの嫌だ〜」と思う方も多いように思いますが、働くのが嫌ならば若いうちにがっつり資産形成しましょう。

ただその場合、自分の健康を自分で守るための活動は確保しなければならないことを忘れないでください。


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教科書的なものなので、とりあえずこれを読んでおけば間違いないと思います。


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