どうして赤ちゃんは何でも口に入れるの?
生後半年前後になると、何でも口に入れてしまいます。
指をくわえることから始まり、足(足趾)を口に入れたり、おもちゃを食べたり。
親としては、口に入れたら危ない物・汚い物も色々あって、悩むところですよね。
どうして赤ちゃんは何でも口に入れてしまうのでしょうか?
実は発達のために重要な行為であり、どんどんさせるべきだったりします。
今回は、理学療法士の視点から、子どもの感覚運動の発達について考えてみたいと思います。
今回のnoteでは、
●子どもの感覚運動発達についてちょっとわかる
●どうして赤ちゃんが何でも口に入れてしまうのかがわかる
●何でも口に入れる赤ちゃんへの関わり方にヒントが得られる
発達に必要不可欠な感覚運動経験
ヒトは様々な感覚器官を持っています。
視覚、聴覚、嗅覚、味覚、触覚、前庭感覚などなど。
この感覚器官ですが、完成した状態で産まれてくるのではありません。
少しずつ発達していき、完成されていくものなのです。
その発達は胎児の頃から始まるとされ、生まれた時点ではまだ未完成です。
では、どうやって発達していくのか。
それは、様々な経験を積むことで、少しずつ完成されていくのです。
今回のテーマである、『何でも口に入れる』という行為は、手や足といった身体部位の動く感覚や触覚、口の中の感覚(触覚)、口に運ぶまでに見える視覚など、多くの感覚を動員して行われる行為です。
赤ちゃんは、大人から見ると「???」となってしまうような遊びを通して、生きて行くために、成長していくために必要な経験を得ているのです。
動くためには感じることが必要
ヒトはどのように動いているのか。
筋肉が収縮して関節が曲がったり伸びたりする、ということを知っている方は多いでしょう。
では、筋肉の収縮の強さ、関節の動きの大きさや方向を調節するのは、どうやって行われているのでしょうか。
コップに手を伸ばして持つという動きを例に考えてみましょう。
少し長くなりますが、お付き合いください。
まずはコップを目で見て、コップの場所を把握します。
コップに手を伸ばすためには、まず自身の身体の状態を知らなければなりません。
コップとの位置関係、距離感、身体の中での手の位置。
自分の身体の状態(手の位置)とコップとの関係から、どのように手を動かせばコップの方向へ手を伸ばせるかを判断し、コップの方向へ手を伸ばします。
動かす際にも感覚が重要です。狙ったよりも少し横に逸れてしまえば肩の動きで方向を調節しますし、コップまでの距離も肘の動きで調節しながら、コップへ手を届かせなければなりません。
コップに手を向かわせることができたら、次は手と指で持ちます。
持つためには、手掌をコップに接触させなければなりません。
コップに触れたことが分かるためには、手掌と指の感覚(触覚)が必要です。
触れたことが分かると、次は適切な力で持たなければなりません。
力が弱すぎると落としますし、強すぎるとコップの素材によっては割れたり潰れたりします。必要以上に強い力で持とうとすると、無駄に疲れたりもしますね。
この力の調節のためには、指先で圧力を感じ取る必要があります。
更に、コップを持ち上げるためにはコップの重量を知らなければならず、コップとその中の飲み物を含めた重心の位置を把握しなければならず、持ち上げる速度や距離などなど、多くの要素を確認しながら調節していく必要があります。
コップを持つという動きだけでも、これだけ多くの要素が関わり、複雑に制御されています。
赤ちゃんや子どもは、こういった制御を上手に行えるようになるため、繰り返し繰り返し試行錯誤を行っているのです。
どうして何でも口に入れてしまうのか
では、赤ちゃんが何でも口に入れてしまうのはなぜなのか、具体的に考えたいと思います。
最初は指しゃぶりから始まることが多いはずです。
自分の手を動かして、口に運ぶ。これは、自分の身体をどのように動かせば、どのように動くのかを知るための経験です。
口と指の両方に触れた感覚(触覚)が生じるため、お互いが接触していることがわかります。
自分の手や腕という存在を把握し、口との位置関係を知るための動きです。
足趾をしゃぶるのも、より全体的な身体部位の位置関係を知るための動きですね。
頭部(口)があって、体幹があって、脚があって、その先に足趾がある。
足趾を口に届かせるためには、多くの関節が動き、身体を丸めるようにしなければなりません。
身体の全体像、ボディイメージと呼ばれるものを確認し形成していくために必要な行為なのです。
更に月齢が進むと、おもちゃなど持てるものは何でも口に入れてしまいます。
それまでは自分の身体を確かめる段階だったのに対し、おもちゃを口に入れる時期は自分の身体以外のものを確かめるという段階に移行します。
手に持った物の素材感やサイズ、重量などの把握のため、手と口の感覚を参照しながら確かめます。目で見た大きさとの照合も行っているはずです。
更には、手で持った感覚、目で見た視覚的な情報、口で触れた感覚を照合することで、目では見えない自身の口の大きさの把握にも繋がります。
このように、大人から見ると「やめて〜!!」と言いたくなるような物を口に運ぶ行為も、赤ちゃんや子どもにとっては重要な感覚運動経験であり、発達に繋がる営みなのです。
大人はどう関わるべきなのか
であるならば、大人はできる限りこの経験をサポートすることが必要です。
何でもかんでも「汚いからやめて!」と取り上げてしまうと、赤ちゃんは重要な感覚運動経験を積むことができなくなってしまいます。
では、大人はどうすれば良いのか。
多少の汚さは大目に見るしかないと思います。
そして、赤ちゃん・子どもが安心して様々な経験を積める環境を作ってあげるのが大人の役割だと思います。
誤飲の危険があるものやあまりにも汚れたものを近くに置かない、遊んだ後のおもちゃを洗ったり拭いたりするなどなど。
あまり神経質になってしまうと親の方が疲れ果ててしまうので、ある程度で諦めることも必要な気がしています。
まとめ
今回は赤ちゃんや子どもが何でも口に入れてしまう理由を考えました。
大人からするとただの遊びでも、赤ちゃん・子どもにとっては発達・成長のために重要な感覚運動経験です。
親の心構えとして、危険な・汚い遊びを止めるのではなく、そういったものに触れられないような環境を作ってあげる、安心して遊べるようにサポートすることが必要だと考えます。
うちの子も1歳になりますが、あまり神経質だとやっていけなくなってきました。
多少のことには目をつぶり、子どものサポート役に達したいと思います。
もっと学びたい方へ
『子どもの感覚運動機能の発達と支援』
子どもの感覚運動機能に関して、非常に詳しく書かれています。
各月齢・年齢ごとにどのような経験をしているのかが書かれているので、発達を考える上で非常に参考になります。
おわりに
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