【短編】パーリーピー法/『しかく』
暗転
影アナ「パーリーピー法。通称パリピ規制法とは、人様の迷惑を省みずに、自分たちのみが楽しければそれでいいという思想の下に集う個人、団体を規制する法律のことである」
明転
勧誘1
SE 人混み
AとBが人混みの中にいる
A 「俺!去年も思ったんだけどさ!新入生多すぎないか!」
B 「え!なんて!」
A 「だから!新入生多すぎないかって!」
B 「新入生が多すぎるって言ってんの!?」
A 「そうだよ!」
B 「でもそれ!ものすごく分かるわ!」
A 「え!なんて!」
B 「だから!ものすごく分かるって!」
A 「ものすごく分かるって言ってんの!?」
B 「そうだよ!」
A 「今さ!喋るのやめにしないか!」
B 「え!なんて!」
A 「喋るのやめにしないかって!」
B 「喋るのやめにしないかって言ってんの!?」
A 「……。お前わざとやってるだろ」
B 「あ、バレた?」
A 「そりゃそうよ。この距離で聞こえないわけないだろ。ホラ、人混みもなくなってきたから、そろそろ始めようぜ」
SE 人混み
B 「なんで、さっきの人混みの中でやらなかったんだ?」
A 「ああいう時は、人の歩いていく流れが出来上がってるから、声かけても流されることが多いんだよ。それに比べて今だったら、確実に声を掛けられる」
B 「お前、プロだな……」
A 「勧誘の?」
B 「プロ」
A 「よせよ」
嬉しさを隠し切れずに
「褒めても何も出ないよ!?」
B 「よっ、声掛けのプロ!」
A 「でも、声掛けって言っちゃうとなんか水商売の客引きみたいで嫌だな」
B 「じゃあ、何が良いんだよ」
A 「……スカウトマン!」
B 「スカウトマンって言っちゃうと、女の子に水商売させようとしてる人みたいじゃない?」
A 「何で、そうなるんだよ。モデルかもしんねえじゃねえか」
B 「でも俺らテニスサークルじゃん!」
SE サイレン
二人 サイレンに気づく
A 「テニスサークルもダメなのか……」
暗転
明転
勧誘2
勧誘1と同じ人が呼び込みをしている
A 「テニスサー……、テニス部でーす」
B 「新歓やってまーす」
上手から暗めの新入生(男)が歩いてくる
A 「テニス部でーす」
B 「新歓やってまーす」
A 新入生(男)がチラシを受け取ろうとした瞬間、手を引っ込める
「でもさあ、なんでサークルはダメで部活は良いんだろうな?」
新入生 驚きつつ、そのまま下手へはける
B 「真面目さじゃない?」
A 「何だよ、サークルの方が不真面目だって言うのか?」
B 「世間のイメージ的にってことだよ」
A 「一部の悪いイメージを全体にまで広げないでほしいよなあ」
B 「ホントにな!」
上手から新入生(女)二人が歩いてくる
何かしらの話題で盛り上がっている
A 二人に気づく
「ねえ、君たち新入生?」
女1 「はい、そうですけど」
A 「僕たち、テニスサー……、じゃなくてテニス部なんだけどさ、テニスとか興味あったりする?」
B 「一部の悪いイメージを作ってるのは、アイツな気がする……」
女1 「あ、あります!私、高校で軟式やってました!ミドリは?」
女2 「あ、わ、私は、高校は文化部だったから……」
A 「そっかそっか、まあでも、二人で一緒で良いからさ、今度の練習体験来てほしいなあ、なんて」
女1 「そうなんですか?行きたいです!ミドリも行こうよ?」
女2 「う、うん……。ベニちゃんが一緒なら……」
A 「じゃあ、決まり!あ、そうそう。今度の土曜日に新入生歓迎イベントでバーベキューやるんだけど、良かったらそれにも……」
SE サイレン
全員 サイレンに気づく
A 「バーベキューするだけなのに……」
B (やれやれ)というジェスチャー
暗転
明転
新歓3
A 「今日は見に来てくれてありがとな」
B 「いや、前からバンドに興味があったので、大学に入ったら軽音楽やろうとも思ってたんです」
A 「へえ~、じゃあどんな楽器やりたいとか、もう決まってるの?」
B 「はい、一応、ベースを……」
C 「あっそうなんだ。俺、ベースやってるよ」
B 「そうなんですか!……、でも、私、ボーカルもやってみたくて……」
C 「気にしなくていいよ。担当は固定じゃないから」
A 「楽器弾きながら、歌ってる人も結構いるしな」
B 「あっそれなら良かったです……。そういえば先輩は何をされてるんですか?」
A 「俺?俺はボーカルだよ」
B 「そうなんですか!楽器も何かされたりするんですか?」
A 「しないよ」
B 「え?」
C 「コイツ、何も出来ねえの」
B 「ああ……」
SE サイレン
ゆっくり暗転
A 「何でだよ……。おい!作詞はしてるって!楽器出来ねえ奴が、軽音やってちゃいけねえのかよ!」
明転
新歓4
新歓3と同じメンバー
B Cに
「先輩は高校生の時、何の部活やってたんですか?」
C 「俺は、吹奏楽でコントラバスをね」
B 「あっだから、ベースをやってるんですね!」
C 「そういうこと」
B Aに
「先輩は?」
A 「俺は……ハンドボール」
SE サイレン
A 落ち込む
B・C Aを励ます
ゆっくり暗転
明転
新歓5
新歓1、2のテニスサークルの4人
男2 「次はお待ちかねの新入生と上級生の親睦を深めるのコーナー!」
男1・女1・女2
拍手
「いぇーい!」
女1 「何をするんですかー?」
男2 「よくぞ聞いてくれた!それは……王様ゲームだ!」
SE サイレン
全員 サイレンに気づく
ゆっくり暗転
男2 店員に話し掛けられる
「え?ああ、帰ってくれ。お会計は……?いらない?はい」
男2 男1とアイコンタクト
明転
新年カウントダウン
或る大晦日
今年も残りあと僅か
道のど真ん中で騒ぐ若者たち
六人 「五!四!三!二!一!」
「明けましておめでとう……」
SE サイレン
暗転
明転
裁判の結果
裁判所前に集まる取材陣
レポーター「はい。私は今、フルリ星アンジェモルドン裁判所前に来ています。被告人がバナナという前代未聞の今回の事件に対して、どのような判断を下すのか。それ知るために、このように私の他にもたくさんの取材陣が駆けつけてきております。……。はい。入ってきている情報によりますと、裁判は既に終了していると思われます。はい。そうですね……。被害者は被告人であるバナナに滑って転んだことによる滑落死ということなっています。被告人が被害者の自宅前にいたことに故意性が認められるのか、そこが今回の裁判の争点となっております。……。あっ。来ました!来ました!ただいま判決結果をもって参りました!」
A 走って入ってくる
手には判決等速報用手持幡
「判決は……」
取材陣 固唾を飲んでAに注目する
A 判決等速報用手持幡を見せる
そこには「無罪」の文字が
「……無罪!」
全員 「イェーイ!」
SE サイレン
全員 サイレンを無視して
サッカーの試合で得点を決めた時のような盛り上がりになる
SE サイレン フェードアウト
B 「アッ!警察だ!」
全員 「ワア~!」
四散して退場
暗転
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