見出し画像

医療で生かされるバーチャルリアリティの可能性/寺島直行

こんにちは、放送作家&ライター集団リーゼントです。
各界のプロがその業界の気になるアレコレをつづる「いろいろコラム」。
今回は、ゲームや音楽業界で活躍する映像プロデューサーがVR(バーチャルリアリティ)の技術ついて語ってくれています。VRというと、どうしてもエンターテイメント分野での活用をイメージしがちですが、今後は医療分野での可能性が期待されるというのです。超高齢化社会でVRは私たちの生命をどう変える? では、どうぞ。 

【寺島直行 プロフィール】 
テレビ番組制作を皮切りに、ゲーム・音楽業界と好きなことばかりしている映像プロデューサー。VR撮影もしますし、ミュージックビデオも撮ります。器用貧乏です。

今、VRはビジネスで可能性を見つけ出している!

VR(バーチャルリアリティ)――映画や漫画アニメの世界では昔から描かれており、仮想現実の世界をあつかった作品は多数あります。
 
僕がテレビ番組のディレクターとしてゲーム番組を担当することになった1993年頃には、そのVRがゲームとして実際に大型ゲームセンターに登場し、1995年には任天堂から「バーチャルボーイ」が発売され、これで一気にVRテクノロジーが活性化していくのか! と当時は考えたりしました。が、バーチャルボーイは全く売れずに発売終了。ゲーセンにあったVRゲームも特に盛り上がらずVRという言葉自体がすっかり鳴りを潜めていきました。
 
当時を振り返れば、CG技術もCPUパワーも360度視聴のVRに対して貧弱だったので盛んに開発が行われなかったんだろうと想像します。それより2D画面でのゲームで全然面白かった時代ですからね。任天堂・セガ・ソニーの3強がひしめき合った次世代ゲーム戦争時代。懐かしい。
 
そこから十数年が経ち、2015年前後からプレイステーションVRやオキュラスリフトが登場しVR市場が一気に動きだすのかと思えば、またまたゲームデバイスとしては静かな動きに留まり、どちらかというとVRはBtoB(ビジネス to ビジネス)の分野で活性化し始めています。
 
ここ数年、僕がお手伝いしている案件でいうと「医療分野でのVR技術」がまさにそれで、具体的にいうと、360度動画が撮影可能なカメラで様々な医療スペシャリストが行う手術現場を撮影します。
 

VRで手術現場を体感!患者側にも医療側にもメリットが

 手術現場というとよくドラマで描かれているような緊張感ある風景を想像しますが、病院によって違いはあるんでしょうけど、僕が行った現場では患者が運ばれてきてからビシッと始まる感じではなく、ふわっとゆるくスタートするケースもありますし、なんなら有線でBGMを手術室に流しながらの執刀なんてのもありました。緊張緩和にいいんでしょうね。医師が両手を胸元に広げ、「オペ始めます」みたいな現場は一度も見たことがありません。
 
そんな様々な手術を撮影し、撮った映像を後日VRゴーグルで視聴することで手術現場にいなかった方々が現場を体感することが可能になるわけです。
 
手術現場は執刀医ひとりで行うものではなく、助手、麻酔医、看護師、ME(臨床工学技士)などチームで行うので360度視聴できることによって現場の動きがすべて見られるメリットがあります。
 
この撮影コンテンツは全国の若手医師にとっても非常に勉強になる動画になり、コロナ禍で大勢の人間が現場に入れない時期には、医療メーカーにとっても新人研修目的での活用もされています。
 
以上はVR動画を撮影しての話です。さらにこの医療動画の撮影技術は、5G通信と融合することで飛躍することになります。
 

VRで救える命の可能性が格段に広がる!

例えば、札幌で行われている手術現場を5Gの高速通信で配信することで、全国どこからでもリアルタイムの視聴が可能となります。この通信インフラを利用する形で現在進んでいるのが、手術現場にある医療支援ロボットやダヴィンチを遠隔地から操縦して執刀を行うという技術です。リモート手術ですね。
 
この技術によってダヴィンチ操縦のスペシャリストがどの場所にいても執刀することが可能になり、地域や距離によって受けることができない手術がなくなると予想されています。患者の病状によっては長距離の移動ができないケースが多々ありますから。
 
ダヴィンチだけでなく他の医療支援ロボットも対応できるでしょうし、今後進化していく医療技術が遠隔医療を進めていくのは当然のことのように思われます。VR映像で現場を共有することで適切なアドバイスを送り、手術を成功に導く時代になっていくでしょうね。また、手術だけではなく、普通の診療や虫歯治療まで、なんなら美容整形も離れた場所から対応できるようになるかもしれません。
 
そうなれば、医療過疎地域がなくなるんですから5Gデータの圏内であればどこでも住みたい所に住んでOKです。私たちの暮らし方も変ってきます。
 
VRと医療という視点からあれこれと書いてきましたが、ビジネスでの利用はどんどん進むんでしょうけど、エンターテイメント分野ではいつになったらVRが広がるんでしょうか?
 

ビジネスからエンタメへ!私たちの暮らしはもっと楽しく

実は4K8Kなど映像の高画質化が進んでいますが、360度すべてを実際の風景と同等くらいに視聴するためには8Kでは全然足りないんですよね。

今後さらに高画質化が進めばエンターテインメントでの活用も見えてくるんでしょうか。それとも、やはりあの巨大なゴーグルがメガネくらいまで軽量化しなければならないのか? そしたら電源は? 超小型バッテリー? CPUは? まだまだ実現まで難関はありそうです。
 
しかし映画で描かれていた世界はそんな遠くない未来に実現するハズです。最近ではメタバースといった仮想現実の話も様々な場所から聞こえてきます。メタバースを利用するにはVRゴーグルは必須アイテムなので、どんどん進化してもらいたいです。
ついていくのに必死ですが、せめて僕が生きているうちにお願いしたいところ。VRがゲームとして登場した時代を通ってきている以上、そこはしっかり見届けたいのです。

あなたがVRから恩恵を受ける時代はすぐそこまで来ています。


この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?