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12人の4つの季節の48のストーリー - Yokohama 48 scenery storys - ①


# 001    那摘美     − Natsumi −      春。


那摘美は目を覚ました瞬間、『 しまった! 』と直感的に思った。

見た記憶がない天井とベッドの香り、そして何よりとなりにはオトコの気配… 。
 
那摘美は慌てて毛布の中の自分の体を確認した。

(  あ~っ、良かった!   下着は付けている様ね… )

と呟くと、まだ昨夜のお酒が残ってぼやけているアタマを擦りながらベッドから静かに上半身を起した。

『 … おはよ。 』

『 … あら、起こしてしまったの? 』

『 … いや、寝ないで君の寝顔をずっと見てたのさ。 』

そう言うどうしょうもないクサいセリフを吐く彼に苦笑いしながらも那摘美はようやくハッキリしてきたアタマの中の昨夜の記憶を整理しながら、

『 昨夜ナンパされた時からヘンタイさんだと思ってたけど、… 確かにそのようねッ、
… だけれど私も酔った勢いでそのヘンタイさんとヤッちゃったんだけど… 』

そう云って那摘美は微笑みながら立ち上がると、その足元に脱ぎ散らかした昨夜の自分の衣服を着ながら、

『 それじゃ、またねッ! 』

とまだベッドで横になっている彼の頬にキスをすると、心残りな表情を浮かべる彼をおいてさっさと彼の部屋をあとにした。

部屋を出るとそこはエレベーターホールになっていて、那摘美はここで初めてマンションの5階にいる事が分った。

エレベーターの中の鏡で急いで髪を整えて、彼のマンションを出ると、その前の大通りの満開の桜並木は、ビルの間から差し込む朝日にその花びらのひとつひとつをいっぱいに耀かせていた。

(  昨日の夜は分からなかったけれど、まぁまぁいいトコに住んでいるのね…  )  

那摘美は小さく深呼吸すると、昨日の事など何の気にも止めていない様子でバックの中からスマホを取り出して、今の時間を確認した。

『 8時32分… 
会社にはまだ十分 間に合うけど、今日はやっぱりサボっちゃおうかなぁ!』

そう独り言を言うと、くすりと笑って両腕を大きく上げて朝日に耀くサクラを見上げながら、う~んと背伸びをした。

と、マンションの上のベランダから起きたばかりといった顔の彼が那摘美に手を振っているのが見えた。

那摘美はそんな彼にニッコリとVサインで答えると、会社とは反対の駅の方へと歩き出したが、

( さあ、今日も私の新しい冒険が始まるわッ! )

なんて言う、自分でも思いもよらないセリフに思わず ぷっと吹き出した。

朝のサクラの甘い香りが那摘美の気持ちを高揚させたのかも知れない。

                                                                           ー Fin. 

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