# 其の六繪 : 『 茄子の馬 』の事。 東北では年中行事を旧暦で行うところが多く、仙台も七夕まつり然り、その他の年中行事も旧暦に従い行われるという例が少なくない様です。 そんな仙台のお盆のお話です。 仙台では 『 ホトケサマ 』は 旧暦の七月十三日の夕方に家々に帰り、十五日の朝まで留まると言われています。 近年まで市中では十三日までに仏壇に盆棚を設け庭先に松火を焚いて、家々のお墓にも盆棚を作り切子行燈を灯し御霊をお迎えする準備整えます。 果して『 ホトケサマ 』
# 其の一景 : 綾織の雛子。 - Hinako - 遠野市綾織町鶚崎辺り ー。 左右から山の稜線が迫ってくる南北に走る平坦な道路から田畑を外れてその一方、石神山の山麓に向かって少し登って行くと竹林に囲まれた平屋建てのその屋敷に辿り着きます。 広いお屋敷の奥の二十畳の座敷には十二段もある雛人形が飾られて、午後の陽射しが庭の竹林の間から開け放たれた廊下を超えてこの部屋いっぱいに、サラサラと遠くの向かいの山を渡って、下の道路から吹いてくる風の音と一緒に届いてこ
其の伍繪 : 『 雛姫様伝説 』の事。 戦国時代の頃、奥州 • 千代に伝わった伝説です。 千代とは現在の宮城県仙台市の事を指すと謂れます。 今は宮城県の県庁所在地として、また東北の中心都市として市街地に高層ビルが林立する土地となりましたが、今からおよそ四百余年前の慶長五年、独眼竜と呼ばれた仙台藩祖 • 伊達政宗がこの地に城下町を開府するまでは一面の大湿原野であったと云われます。 そんな伊達政宗が仙台に登場する以前の頃の広瀬川のお話です。 その頃の広瀬川の流れは現在よ
其の四繪 : 『 長町橋に出ずる橋姫霊伝承 』の事。 廣瀬川には藩政期から美しい姿を残した伝承が今だに幾つかの形として語り継がれています。 前にも記した『 大橋 • 七夕渕 』もその中のひとつでありますが、今回の『 長町橋 • 橋姫伝承 』も同じく幻想的なものとなっています。 しかし、伝承されるこれらの話にはある点で何れも共通する展開を持つ事に注意して今後、もっとよく調べられて事を期待します。 それらを踏まえて今回の話も記憶して頂ければ幸いであります。 その口碑に曰
其の参繪 : 『 大橋擬宝珠流失せし疑問 』の事。 仙臺開府以来、藩公記録に廣瀬川洪水の記録を見るは元和三年卯月二十四日を初めとして実に藩政期のみで十六回を数えます。 また明治 • 大正十三年まで四回の記録もあります。 大正十三年、河原町桃源院脇の畑で発見された大橋擬宝珠は仙臺城と同時期に架設された創建当時のものとされ、慶長六年のその刻印から初めての洪水の時期に流失されたものとされています。 現在は仙台市博物館の所蔵となっていますが、しかし、それが発見まで二十回の洪水
其の弐繪 : 『 仙臺松火奇話 』 昭和二十年七月十日の仙台空襲以後に仙台に広まった話と聞きますが、また以前からあったものの様にも云われます。 その口伝より、 仙台では藩政期からお盆の送り火として各家の前で松火を組んで夕刻から夜半まで篝火を焚く習慣がありました。 日が暮れるにつれて、松火を篝らせたままちょっと離れたところから松火を見る事があるとそれまで気付かなかった事で、はてどこかで見た覚えのある人物が松火を背にこちらを向いて親しげにしていると言われました。 また
其の壱繪 : 『 七夕淵と呼ばれる 』 の事。 旧 • 仙臺府内、廣瀬川大橋付近に『 七夕淵 』と呼ばれる辺りがあります。 現在の仙台市の広瀬川に今も残る淵称は多くは庶民間での発生 • 起源であるのに対し、この大橋付近に残る淵の名称とそれに纏わる伝承は全く武家間で広まったものと云われています。 その口伝に曰く、 旧七月七日、今で言うところの八月の上旬の夜半、広瀬川の川畔の虫々の鳴声が止み、川の流れが蛍光に光り輝き、天淵に姫姿の御霊が降り立ちます。 姫姿の御霊は暫く
# 002. - 理宇 - Riu 春。 ○ 理宇は何か全身の体中に激痛を感じて目を覚ました。 一瞬、この状況が理解出来なかったが、すぐに自分はどこかの病院のベッドに寝かされており、自分の顔の上には心配そうな表情を浮かべた母親と親友の真由美が自分を覗き込んでいる姿が見えた。 ( えっ、私どうしたのぉ… ? ) と、ちょっとパニックになりかけて飛び起き様としたのだが、その右腕には点滴のチューブ、右足はギプスで固定されて
# 001 那摘美 − Natsumi − 春。 那摘美は目を覚ました瞬間、『 しまった! 』と直感的に思った。 見た記憶がない天井とベッドの香り、そして何よりとなりにはオトコの気配… 。 那摘美は慌てて毛布の中の自分の体を確認した。 ( あ~っ、良かった! 下着は付けている様ね… ) と呟くと、まだ昨夜のお酒が残ってぼやけているアタマを擦りながらベッドから静かに上半身を起した。 『 … おはよ。 』 『 … あら、起こしてしまっ