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仙臺古談

其の壱繪 :  『 七夕淵と呼ばれる 』 の事。

旧 • 仙臺府内、廣瀬川大橋付近に『 七夕淵 』と呼ばれる辺りがあります。

現在の仙台市の広瀬川に今も残る淵称は多くは庶民間での発生 • 起源であるのに対し、この大橋付近に残る淵の名称とそれに纏わる伝承は全く武家間で広まったものと云われています。


その口伝に曰く、

旧七月七日、今で言うところの八月の上旬の夜半、広瀬川の川畔の虫々の鳴声が止み、川の流れが蛍光に光り輝き、天淵に姫姿の御霊が降り立ちます。

姫姿の御霊は暫くの間、大橋を挟む下流を望んでいますが、その後、下流に公姿の霊が現れ、姫姿の御霊はそれを合図に待ち切れない様子で淵に続く御掛淵を渡り身撫瀬に現れ立つその公姿の御霊に会いに行くのだと言われます。 

翌八日、夜の白みかける時刻に二つの御霊は別れを愛しみながらもそれぞれの淵に消えて行くという伝説です。

天淵を現在の女淵、御掛淵を五間淵、身撫瀬を小川瀬と云われており、また大橋の脇に屋敷を構えていた片倉小十郎が夏の水の枯れる時期のみ河水上に出てくる舟入という石造りの通路の御橋を造らせて二人の御霊の出逢いを許した等と云われる口伝も残っています。

何れにしても現在の大橋付近の伝承であると思われます。


                                                                       ー 続く。

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