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そばにいる

イチロー先生

少し前、YouTubeで話題になった動画シリーズがある。「おしえて!イチロー先生」というもの。SMBC日興証券のCMとして制作された動画のようだ。内容は、元メジャーリーガーのイチローさんが先生として様々な人の悩みに答えていくという単純なものだった。

どんな視点の質問にもイチローさんは真摯に答えている。どの回答も心をぐっと握られるものばかりで、あっという間にほとんどの動画を見た。

本当にどの質問も面白く、また回答も彼ならではの視点で興味深いのだが、私が最も心をつかまれたのは、ケアマネージャーの女性の質問に対する回答だ。彼女はいつも高齢者や障がい者の方に寄り添ってポジティブな言葉をかける中で、考えることがあるという。

「人間はいつも前向きじゃないといけないのでしょうか?」
※動画内女性の質問を引用(https://youtu.be/R1eQ0ZvhalQ)


それに対するイチロー先生の答えはこうだ。

人間前向きだけでは生きていけないですよ。後ろ向きにもなるし。
向き合うことが大事なことなので。できれば前向きのほうがいいですけど、でもやっぱりつらい状況にある人に頑張れって僕は言えないし。
それは近くにいてくれるだけでうれしいと思うんですよね。
~中略~
黙ってそこに居るっていうのは、何よりも強いメッセージだったりしますよ。※動画内より引用(https://youtu.be/R1eQ0ZvhalQ)

居てくれた人たち

この答えには私にも身に覚えがあった。しかも何度も。
中学の頃、部活で大事な試合の前日にケガをした。私は選手で出ることが決まっていて、今までの積み重ねてきたものとか、そういったものの延長でようやく手にしたチャンスを目の前で手放した。自分は確かに落ち込みはしたけれど、それでも傍に座ってくれていたチームメイトに心は救われた。

高校の部活でも、逆境は何度となくあった。競技に取り組んでいれば必ず勝ち負けは訪れる。思うような成績が残せなくて相手に負けるとき。チームメイトに負けるとき。はたまた自分に負けるとき。競う相手はたくさんで、負けたくないという思いが強ければ強いほどプレッシャーも大きくなる。敗れれば、期待した分だけ心は沈む。

けっこう学生時代を部活にかけていた私は、反面部活で落ち込むことは多かった。でもそんな時、何を話すわけでもないけれど、仲間の存在に救われることは数えきれないほどあった。ただ、そばにいてくれるだけで、正に救われていた。

他にもまだ、まだまだある。大学受験で思うような結果が出なくて明らかに落ち込んでいた時に、それでも静かに見守ってくれた親。就活で落ち込んで悩んだときに、ただただ一緒にご飯を食べてくれた友達。

「黙ってそこに居るっていうのは、何よりも強いメッセージだったりしますよ」

イチロー先生の言葉がよみがえる。

こんな存在にいつも囲まれていた私は、幸せが過ぎやしないだろうか。幸せな私は、いったい何が還せるだろうか。

私もそんな人間に

いるだけで何よりも強いメッセージを感じさせることができる人。私もそんな人間に”なりたい”とは思わない。なりたいという驕りのようなものがある時点で、それは「頑張れ」と似たような一方通行な感じがどこかあると思ってしまう。だから望むならば、真摯に生きて、大切な人と向き合う中で自分がそういう存在に”なっていた”ならありがたい。

きっとそれくらい、ふとしたこと。

イチロー先生、ありがとう。








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