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【読書感想文】アルケミスト-夢を旅した少年-

始めに

 読者諸君、ご機嫌よう。約3週間、音沙汰無いままにnoteを放っておいてしまった。忸怩たる思いが胸の内から溢れ出して纏わり付く。気持ち悪いのでお風呂で洗い流した。さりとて諸君らも棒立ちの阿呆面で私の投稿を待ちわびていた訳ではあるまい。   
 各々が自己を精錬し、私の高尚な散文に追いつく努力をしていたことだろう。ならば、久方ぶりの私を刮目するといい。相も変わらず天上天下唯我独尊の私だ。

紹介する本は

 本日、皆に紹介する本は『アルケミスト―夢を旅した少年―』である。アルケミスト(alchemist)は英語で錬金術師のこと。現代ではなかなかお目にかかれない職業だ。もし、現代日本に錬金術師を名乗る者がいたら、それはこの本に感化された人間か、本気で錬金術を嗜んでいる人間のどちらかだろう。前者ならひたすらに膝を付き合わせて語らいたい。後者ならば憐憫の情から全米が落涙する。読者諸君が前者であることを祈るばかりだ。

───さて、懐かしきいつも通りの蛇足をお見舞いしたところで、話を本題に戻す。

あらすじ

 この物語の主人公は、スペインのアンダルシア地方で羊飼いをしていた少年。少年の人生の目的は旅をすることだった。故に、少年は羊飼いとして生きる。羊と心を通わし、ささやかな幸せを旅の中で見つけた。少年は考えていた。最も大切なことは、日々自分の夢を生きること。そして、その夢が実現する可能性こそ、人生を面白くするものなのだと。

 そんなある日、少年は啓示を受ける。エジプトのピラミッドへ向かい、宝物を見つけるという運命が舞い降りた。少年は羊を売り、それまでの日々をスペインの地に置き去り、エジプトを目指してさらなる冒険へ挑戦する。

 人に騙され、人に救われ、ある時は数年も立ち止まり、ある時は俄にピラミッドが近づく。宝物を夢見て、少年は冒険を諦めない。

刮目すべき三つの点

錬金術師(アルケミスト)とは

 この本における錬金術は、人生をより良くしようとする挑戦のことだ。

全てのものがそれぞれの運命を持っていると言うことは本当です。しかし、その運命はいつか実現します。そうなったら、それぞれのものは自分自身をより良いものへと変えて、新しい運命を得なければなりません。(中略)錬金術が存在するのは、そのためです。全ての人が自分の宝物を探し出して、以前の人生よりも良くなりたいと思うからなのです。鉛は、世界がそれ以上鉛を必要としなくなるまで、鉛としての役割を果たすでしょう。しかし、そのあとは、鉛は金に変わらなくてはなりません。
p148

 少年は羊飼いとして生きていた。しかし、運命を見つけ、宝物を探すためにエジプトのピラミッドへ向かった。羊飼いとしての人生は捨てた。少年は目的のために行動し、失敗から学び、やる気と根気を常に試されながら夢を追求した。

 宝物を手に入れた少年は知った。今の自分よりも良いものになろうとすれば、自分の周りの全ても良くなると。少年は変わった。見える世界も大きく変わった。

夢を生きること

 夢は追求の過程で多くの体験と学びを与え、達成して1つの教訓となり、物語となる。過去の教訓と未来の夢と共に、今を生きる。そこでは、一瞬一瞬が神との出会いになることを忘れてはならない。

 日々、自分の夢を生きることが出来ているだろうか。多くの人は人生のある時点で、自分に起こってくることをコントロールできなくなり、宿命によって人生を支配されてしまう。体裁を気にして、運命を変える前兆から目を背けてしまう。払う代価やリスクへの恐怖もある。

 しかし、望むことを追求し、それが叶う可能性があるからこそ、人生は面白い。夢を生きなければ、宝物は見つからない。出会いと物語も生まれない。

僕が真剣に自分の宝物を探している時、毎日が輝いている。それは、一瞬一瞬が宝物を見つけるという夢の一部だと知っているからだ。本気で宝物を探している時には、僕はその途中でたくさんのものを発見した。それは、羊飼いには不可能だと思えることに挑戦する勇気がなかったならば、決して発見することができなかったものだった。
p154-155

どこへ行くための今か

 今に集中すること、自分の目で世界を見渡すこと、どちらも大事である。世界が大きくて無尽蔵なことに気がつけるか、些細な変化にも気がつくことができるか。
 自分の心に従った明確な人生がなければ、前兆を掴めない。辛い状況も、幸せの瞬間も捉え方は自分次第である。

幸福の秘密とは、世界の全ての素晴らしさを味わい、しかもスプーンの油のことを忘れないことだよ。
p40

 少年は降り掛った災難も、全ては宝物への前兆だと捉えるまでに成長した。それは彼が、旅を通して学び、失敗を通して自分の目を改め、苦難を超えて恐怖に打ち克つことを覚えたからだ。何の為に、その一瞬一瞬があるのか。夢というゴールは常に見据えないといけない。

お前が何かを望む時には、宇宙全体が協力して、それを実現するために助けてくれるのだよ。
p20

まとめ

 夢という大きな軸が人生を動かす。何を叶えるために、自分が今ここにいるのか。忘れずに行動した者のみ、宝物と物語を得る。

終わりに

 ここでは冗談をばらまき続けて、読者の開いた口を塞がらないようにし、その開いた口にさらなる冗談を注ぎ込む愚行を弄する私だ。だが、普段は仕事に追われる一般人。有象無象の一般人過ぎて、社会通念上の概念を固め、たまたま生き物になった物体が私だと思っている。

 残業をしていると物語が好きな自分を忘れそうになる。仕事でミスをするとそのミスが頭に巣喰って物語を生み出せなくなる。そして、何者でもない無味乾燥人間へと垂直落下していく。このまま幾年も過ぎ去ってしまえば、社会の隅でギチギチとぎこちない音を鳴らすだけの歯車になるだろう。

 だからこそ、夢が必要だ。何の為に今生きているのか、コペル君以上に我々は考えるべきなのだ。夢という軸をもとに。諸君、本気で自分の夢を生きようではないか。さすれば、森羅万象は諸君らを助けるだろう。

もし、わしがおまえに話していたら、おまえはピラミッドを見なかったことだろう。ピラミッドは美しくなかったね?
p195

 そして、夢のありかは自分の目で見つけなければ、その美しさを知ることができない。肝に銘じるように。ではまた。

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