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SDGsを学べる子ども向け食育教室 ビオモア(前編)

TIPSが『SDGs・ダイバーシティ』をテーマに自ら取材し、発信するWEBメディア RECT。今回は、子どもたちに『食育』と『SDGs』について学び、考える場を提供するオーガニック食育教室 ビオモアを取り上げます。環境負荷の観点から世界的にオーガニック食品への関心が高まる一方で、まだまだオーガニック市場が十分に広がっていない日本の現状から「日本はオーガニック後進国=有機農業が広がる余力がある」と考え、ビオモアを展開する株式会社GIVEFIVE代表取締役 小林美緒氏に、ビオモア設立の思いと、ビオモアが考えるオーガニック食育、SDGsについてお話をうかがいました。また、メンバーがビオモアのレッスンにボランティアスタッフとして参加してきました。

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小林美緒氏
株式会社GIVEFIVE 代表取締役。保育園の給食調理員、フランスの2つ星レストランでの経験を経て、2020年に同社を設立。


■ オーガニック食育教室 ビオモアとは

オーガニックとは、農薬や肥料などに化学的なものを使わず、天然・自然のものを活かして作物を育てる“有機農法”のことであり、環境への負荷を軽減できることから、“環境にやさしい”オーガニック食品を積極的に選ぶ動きがヨーロッパを中心に世界で広がりはじめています。ビオモアは、小学生を対象に毎月開催される、料理の基礎だけでなくSDGsも学べる「素材にこだわった食育教室」です。名前のビオはフランス語でオーガニック、モアは英語のMORE=もっと、を意味しています。

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ビオモアでは、獲れすぎて余った野菜などをスポンサーから提供を受けてレッスンに使用することで、食品ロスの削減に貢献するとともに、材料費を削減して習い事の費用の軽減にも努めています。また、調理に入る前に、使用する食材をつくった生産者の方のお名前、産地、収穫の様子などを写真や動画で子どもたちに伝えています。こうすることで、食べ物に対する理解が深まるだけではなく、例えば「〇〇さんが作ったにんじんだよ」と伝えると、にんじんが苦手でも頑張ってひとくち食べてみる子どもがいるそうです。

■ ビオモアでSDGsを学ぶ

「食育」だけでなく「SDGs」の学びを取り入れていることも、ビオモアの大きな特徴です。レッスンのはじめに、1レッスンに1つの目標をテーマに設定して、SDGsの17の目標について学ぶ時間を設けており、オリジナルのワークシートを使いながら、クイズをしたり、その目標に向かって自分はどんなことができそうかを発表してもらったりして、子どもたちがSDGsの目標について考える機会をつくっています。ワークシートを終えたあとは、テーマに設定した目標を意識しながら調理をします。たとえば、SDGs 6の「安全な水とトイレを世界中に」をテーマにしたレッスンでは、「水を大切にしよう」を意識して、手や食材、調理器具や食器を洗う際に毎回こまめに蛇口をしめるようにします。こうして、SDGsの目標を実行できる身近なアクションとして知ってもらうことで、家や学校でも実践してくれる子どもがいるそうです。

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各回のテーマに加えて、レッスンでは、前述の余った野菜の利用や、食べきれなかった料理を持ち帰れるようにタッパを持参してもらうことで食品ロスの発生を抑えたり、子どもの提案をきっかけにMy箸を持ってくるようにして使い捨てごみを減らしたりと、時には子どもたちのアイディアを反映しながら、SDGsと向き合う学びの場を提供しています。


■ オーガニック食育への思い

小林氏がビオモアを設立したきっかけは、オーガニックについてより多くの子どもたちに伝えたいという思いです。小林氏は、20代で調理師免許を取得し、保育園で給食調理員をしていた際に、園でクッキングクラスを企画・実現し、子どもたちへの食育に関わり始めます。この取り組みは地域に広まり、外部からも食育教室開催のオファーが来るようになったことで、多くの人が「子どもの食育」に関心を持っていることを実感しました。その後、フランスに留学し、2つ星レストランで働きながらフランスの文化について勉強する中で、オーガニックに対する日本との意識の差やオーガニックの魅力を知り、さらに世界50都市をめぐって様々な文化に触れるなかで、食育を通じてオーガニックをより多くの子どもたちに伝えたいと思うようになったそうです。そうして立ち上げたビオモアを、料理教室ではなく「子どもの食育教室」にしたのは、これまで自身の経験から、食べ物という身近なものについて学ぶ機会がまだまだ少ないなかで、未来を生きる大切な子どもたちに食べ物について考えてほしいという思いと、育児に奮闘する親たちを、時間をつくることでサポートしたいという思いがあるからです。

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日本では、オーガニック食品は「美味しくて、身体にいい」という認識が広まっている一方で、生産者の労力や販売ルートの確保の困難さ、消費者が形の整った野菜を好む傾向やオーガニックが高価であるというイメージをもっているなどの課題から、オーガニック市場はまだまだ発展途上の段階です。海外では、これに加えて「オーガニックは環境にやさしい」ことが注目されており、自分や大切な家族の健康のため、そして地球のために、オーガニックを選ぶ動きが拡大しています。有機食品の売上額は、日本が約1,700億円程度なのに対し、アメリカでは約5.1兆円、日本より人口の少ないドイツでも約1.2兆円規模になっています。中国でも、売上額が1兆円に迫っているだけでなく、農地に占める有機農業に取り組む面積の割合は0.6%(302万ha)と、0.2%(1万ha)にとどまる日本の3倍になっています。毎日口に入れるものだからこそ、日本でも健康への影響と、地球への影響の両面から、オーガニックへの認識が広まってほしいと考えています。


■ 後編に続く

後編では、取材班が実際に参加したビオモアの教室の様子と、小林氏が語る今後の展望をまとめます。

この記事は、2021年12月10日に公開された記事を一部編集して再公開しています。(Writer:中村美心、三浦寛人)


■ ABOUT RECT

RECTは、2018年に設立し、東洋大学を拠点にSDGsとダイバーシティに取り組む学生団体TIPSが運営する、SDGs & Diversity WEB MAGAZINEです。


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