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飲食アルバイト50代お局様‼第7話 朝から叱られて謝罪のピタゴラ装置発動した件

家から近い職場のはずだがついギリギリ到着になってしまうことが多かった。私はADHDの疑いがあり時間の先読みが苦手なのだ。
予定時間に間に合わせようとすると私の場合はかなり余裕をもって準備しなくてはならないのだがこの日は遅刻してしまった。
ほんの数分だが私は大きな声で「遅れてしまい申し訳ございません!」と謝罪し頭を下げた。
一号さんに「遅刻?気を付けてください。ちゃんと余裕を持って家を出ましょうね。」と嫌味っぽく言われる。
「ダメだよ、遅刻しちゃ!いつもギリギリに来て!5分前に着くようにって言ってあるでしょう!」と社長の怒号が響き渡る。
わ・・・怖い!「あ・・・はいっ!はいっ!すみませんでした!」と謝る。
するとそれを聞いていた一号さんが「ハイハイじゃないでしょおっ~!かしこまりましたでしょ~!ハイハイって社長に言うのやめてください!ちゃんとかしこまりましたって言ってくださいっ!」とこれまた大きな声で叱られる。
「あ、はい、か・・・かしこまりました!」と一号さんにも謝る。
なんだこれ・・・
誠心誠意謝ってるのにちょっとひどすぎないか?遅刻した私が悪いけど数分の遅刻でこんなに叱られるの?
ちょっとした言葉のあやまで指摘されて遅刻関係ないやん。
私のミスによる私を的にした負のピタゴラ装置が発動している。(Eテレの番組ピタゴラスイッチのコーナーに登場するからくり装置)
遅刻して怒鳴られ慌てて謝ればその言葉遣いを注意される。
ミスがミスを呼ぶからくり。
謝罪のドミノ。
方々に頭を下げるお辞儀人形。ペコペコペコ・・・・
・・・ヤバ!これから仕事なのにまたネガティブになってる。
もういい・・・仕事頑張ろう・・・
あーまた怒られたらどうしよう。
こういう動揺が仕事上のミスを引き起こし、また怒られてピタゴラしそうですでに不安だ。

「お願いしまーす」と汚れた食器を洗い場のカウンターに出す。
返事が無い。
お店ではホール係は下げ物を出すときキッチンの人に「お願いします」と言いキッチンの人は「かしこまりました」と言うのがルールだ。
社長やマナさんは必ず「かしたー」とかなり略式だが返してくれるが熊田さんはあまり返事をしてくれない。
新人だから相手にしてもらえないのかもしれないけど返事が返ってこないことを確認するたび悲しい気持ちになった。
気にしちゃいけない。聞こえてないだけだ。仕事仕事・・・。

一号さんが「だいぶ慣れてきたね!」と声をかけてくれる。
先ほどとは打って変わって優しい口調。
「そうですねー。」見ててくれてありがとう。
「コマ井さんってストールいっぱい持ってるね!おしゃれだね!」と一号さん。
嬉しい。出勤時の服を見ててくれたんだ。
「いっぱい持ってるだけですよ。もの捨てられないんです。」
ちょっとした会話で悲しい気持ちが切り替えられた。

お客さんが少ない時間帯に突入しちょっと時間が空いた時に社長に話しかけられた。
「一号君はちょっとうるさいかもしれないけど まあ、あまり気にしないで」
うわぁ、やっぱりめんどくさいタイプなんだ・・・。膝から崩れ落ちるような感覚。
ちょっと待って、もしかしてこれずっと続くの?
『気にしない』が私にできるだろうか・・・?
毎回怒られるたびに「気にしないように」って言い聞かせてる時点でかなり気にしてるんだけど。
 不安な気持ちが押し寄せる。
わずか一秒に満たない時間によぎった思いにかぶせて私は答えた。
「はい」

「コマ井君、休憩入って」と社長から声がかかった。
ふう・・・色々あるけどちょっと頭休めよう。
いつものようにパンと卵とカフェオレのセットをキッチンに入っているマナさんにお願いしようとしたらマナさんから衝撃の一言が出てきた。
(つづく)


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