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飲食アルバイト50代お局様‼第8話 労働者の楽しみを減らされて悲しかった件と同調圧力と余計な遠慮

「コマ井君、休憩入って」と社長に言われいつものようにパンと卵とカフェオレのセットをキッチンに入っているマナさんにお願いしようとしたらマナさんがこんなことを言い出した。

マナさん「コマ井さん、今日は3時間なので飲み物だけで・・・。」
私「え・・・?」
マナさん「今日は3時間だけなのでフードはちょっと・・・飲み物だけで・・・ええ、はい・・・」
こちらをじっと見つめ、うなづきながら語尾を濁している。
フェイドアウトしている言葉を空白のパズルを埋めるように想像し、マナさんの表情を読んだ。

表情で言いづらいセリフを読み取らせようとするマナさん


どうやら飲み物だけしか出せないと言っているようだ。
えーーーーーーーーっっっ
パンと卵が食べられない⁉
一瞬理解できなくて頭が真っ白になる。
とっさに「はい!」と答えながらも「なぜ?」の嵐。

こんがりと焼けたトーストをカフェオレで流し込み合間に塩を振ったゆで卵をほおばることを考え準備していた食物を咀嚼するための唾液と分解するための胃液が行き場を失い私とは別の意志をもって暴れている。
WHY⁉

3時間の勤務だけど一日一回パンと卵と飲み物は出るんじゃなかったっけ?最初の日も同じく3時間だったけどパン卵が出たんだけど。
もしかして私の働きが悪いから出すのもったいないってこと?
というか3時間しか働かないなら何も食べなくて大丈夫でしょ?ってこと?

「あっ・・・私、冷タン(お冷を入れる小さいグラスの事)でいいです。」
仕事量が少ないうえにろくに仕事もできないくせに大きいグラスでカフェオレを飲むことに申し訳なさを感じ出た言葉だった。

釈然としないがカフェオレを飲みながら十五分の休憩時間を過ごす。
にしても大事なことなので最初に説明が欲しかった。
しかも3時間のシフトって決めたの社長だし。
3時間だしな・・・まだ仕事始めてから1時間半しかたってない。
休憩時間15分260円位か。パン出ないなら休憩無しで働いた方が良くね?時間がもったいないわ・・・。

タイマーが鳴りホールに戻ると一号さんに
「ちゃんとタイマー押して入った?」と睨まれた。
いやいやいや、もちろんタイマー押して休憩に入りましたよ!
ズルしてたくさん休憩とるような人間に見られてるのか?
そんなに信用されてないんだ私。
すきっ腹にこたえるわ・・・

仕事に戻るとオーダーミスが出たようで社長がご立腹だ。
「なんでちゃんと確認しないの!?」
ホール担当者がキッチンにオーダーを伝えるのだが伝票をきちんと確認しないため聞き間違えが生じることがある。
その時の怒り方がめちゃくちゃ怖い。

一日一回無料で飲めるドリンクはコーヒー紅茶と決まっているのだが私はカフェオレを氷ナシ牛乳多めで頼んでいるがマナさんや社長に頼むと他のバイトの人が作るよりも牛乳は少な目で飲み物の量自体も少ないのだ。
気のせいかな?節約されてる?

そういえばコーヒーポットを傾けて出なくなっても蓋を開けて傾けるとまだ少し残っている分が出てくるのでそれを必ず使う事も一番最初に習った。
コーヒーは落としてから一時間以上経ったらぬるくなるので温めなおして使う。
一杯のコーヒーの廃棄も無いよう気を付けているお店なんだという事がうかがえる。

クローゼットの中には使用済みのビニール袋や何に使うのかわからないお菓子の缶の蓋等も所狭しと置かれている。
そういえばお皿を割った時に誰が何日に何枚割ったか書き記す表がバックヤードにかけてあった。失敗を見える化して反省を促し再発の防止に努めているのだろう。でもちょっと怖いな・・・
もしかしたら単なるケチ?とも思ったけどそれが確信に変わるのはもっと先の話だ。

後にわかることだが3時間以内はまかないの食べ物ナシというルールは存在せず、社長の気まぐれだったという事が判明した。
社長が言うことをコロコロ変えるので困るという話を妹にしたらうちもそうだという返事が来た。
まあ、朝礼暮改ってやつですな。
環境の変化に応じてやり方を変え黒字にしたいという経営者の性かもしれない。

でも自分から起こした行動で余計だったなと思う事が一点。マナさんとのやり取りの中で私は勝手に加害者意識を感じ仕事ができないと自分を卑下して普通のグラスじゃなくて冷タンでと頼んでしまったのだがこれは大きな間違い。

次の日のまかないの時もマナさんから「コマ井さん今日も冷タンに入れますか?」と聞かれ面食らった。
沢山飲みたくない人と判断されたのかわからないけどお店の節約に貢献する都合の良い人物だと思われているのは間違いない。
ここで「はい」と答えたら次回から何も言わなくても冷タンで飲み物が出てくる。
私は「普通のグラスでお願いします。」と答えた。
日本人独自の美徳文化「遠慮・謙遜」は同時に自信が無い人を生み出し経営者にとって都合の良い労働者を作り上げてしまっているのではないかと思う。労働者には自信をもって権利を主張してほしいと思った出来事だった。
















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