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【R36:WORKS】自然と旅と酒をこよなく愛し、呼び起こされる「状態」を描く

茨城県取手市在住の絵描きであり、ライブペインティングパフォーマーとして知られる近藤康平(こんどう・こうへい)。彼の絵の描き方やインスピレーションを得る方法、ライブと個展への思い、2020年に発売した画集について聞いた。


見たままの景色ではなく、その時の感覚を呼び起こす絵

近藤は美術学校等には通わず、独学で絵の描き方を身に着けた。

「何をどうすればいいかも分からないところから、トライアンドエラーを楽しんできました。今は、主にアクリルガッシュを使って、指で直接キャンバスに絵を描いています。これは発色が良くて、混ぜても汚くならないし、水分量がちょうどよくて伸びやすい。乾くのも早いので、ライブペインティングにすごく向いているなと思います」

そんな彼は、自然の中に身を置くことで、様々な着想を得ている。

ただ目の前の景色の美しさを描くのではなく、「その状態を描きたい」のだと言う。

「たとえば『夕焼けが綺麗だな』と感じた時、見た景色をそのまま描いたって、結局は夕焼けの方が綺麗です。そうじゃなくて、あれと同質の画面を作って、同じように人の心を動かしたい。僕の大好きなフィッシュマンズというバンドの表現を借りるなら、『煙草の煙が綺麗だ』という歌詞の曲を作るんじゃなくて、発声やリズムやメロディなどの音楽そのもので、『煙草の煙を見て綺麗だと感じるのと同じ感覚を与える作品』を作りたいんです」

近藤は、自身の3大バックボーンとして「自然」「旅」「酒」を挙げる。

「ワインやビール、最近はウイスキーもすごく好きです。旅とお酒は、合わせて楽しめるんですよね。東南アジアを散歩したら、向こうの薄めのビールを飲むのが楽しいし」

絵を描くために旅をして、現地の自然や酒や文化を楽しむ。そこから得たものが彼自身を豊かにし、新たなインスピレーションを生み出していく。

「ニューヨークのハーレムで、ライブペインティングをしたことがあります。オルガンプレイヤーとジャンベ奏者とのセッションで、お客さんも黒人の方ばっかりでした。たまたま通りかかったおばあちゃんが、最前列でノリノリで見てくれて、『あなたのペインティングよかったわ』と言ってくれたんです。その時、『色んなものを超えて伝わっていくのは幸せなことだな』と痛烈に思いました」

2024年7月には、島根、岡山、広島を巡るツアーを企画している。

新たな出会いと、そこから生まれる作品に期待したい。

数えきれないほどの作品群と、代表作について

2009年ごろから本格的な活動を始めた近藤は、非常に多くの作品を制作してきた。

「平均すると年間100本のライブをしていて、毎回10枚は描くので、一年で1000枚は描いています。それを10年以上続けているので、総数は1万枚を超えるはずです」

ライブペインティングの作品は、ほとんど会場で販売している。

「ライブの告知用に描いた絵などは、保存しているものも多いです。いつかまとめて展示してみたいですね」

さらに毎年、個展用に100点以上の新作を用意している。

「コンセプチュアルな作り方はしていませんが、『今年はこんな気持ちを表現したい』というテーマはあって、タイトルに詰め込んでいます。たとえば『ゼロに立ち戻っていくようにしたい』とか、『前衛的な気持ちとイラストレーション寄りの気持ちをミックスしたい』とか」

彼の個展には、老若男女が訪れる。

「音楽経由で僕のことを知ってくれる人がたくさんいて、嬉しいです。ライブペインティングをやっていてよかったことの一つですね。毎年のように足を運んでくださる方もいて、『ここは変わったね。ここは変わってないね』といった感想をいただくと、僕よりも僕のことを分かっていらっしゃるなぁと思う時があります」

そんな近藤の代表作と呼べるのが、2020年11月30日に発売した画集『ここは知らないけれど、 知っている場所』の表紙だ。中央に立つカリブーと、青と白のコントラストが美しい作品である。

「一匹だけど、寂しくはない。『寂しい』や『懐かしい』という感情が描きたかったけど、おおげさなものじゃなく、しいんとした寂しさを表現したかったんです。色にもこだわりました。僕は青が好きだし、お客さんからも『近藤さんと言えば青だよね』と言われることが多いです。ザ・近藤って感じの一枚ですね」

まだ彼の作品に触れたことがない方は、ぜひ、ライブや個展に足を運んでみてほしい。

文:紅葉

INFORMATION

◎ライブドローイング

2024.07.05(金) open 18:30 / start 19:00
近藤康平個展「サイカイin岡山オープニングイベント」

[会場] 岡山 城下公会堂(岡山県岡山市北区天神町10-16 城下ビル1F
[料金] 前売¥4,000 / 当日¥4,500 (+1drink)
[演奏] 波多野裕文(People In The Box)
[ライブドローイング] 近藤康平

2024.07.15(月祝) open 16:15 / start 17:00 -18:30 END
" 月に吠える "

[会場] 上野 YUKUIDO工房(東京都台東区東上野4-13-9 ROUTE89 BLDG. 1F
[料金] 前売¥4,500 / 当日¥5,000 (+1drink)
[演奏] 猪狩翔一(tacica)
[ライブドローイング] 近藤康平

◎個展情報

近藤康平個展「サイカイin岡山」

[会場] 岡山 城下公会堂(岡山県岡山市北区天神町10-16 城下ビル1F
[期間] 2024.07.05(金)~2024.07.21(日) 11~18時 ※火曜定休
[詳細] http://shiroshita.cafe/

※イベント等により、定休日以外もお休みになる場合があります。ご来場の際は、事前にお店のHPをご確認くださいませ。最新情報は、随時お店HPにてアップされていきます。

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