「れあさんのデザイン教室」なるものを開いてみたら。
ちょっと風変りなデザイン人生
もうかれこれ18年くらい、デザイナーをやっている。
「デザイン」と一言で言っても、その分野はものすごく幅広いのだけれど、私の場合の専門分野は、主にこの3つ
・広告やWebバナー等の「グラフィックデザイン」
・本や雑誌等の文字組みをする「エディトリアルデザイン」
・CI開発等の「ブランドデザイン戦略」
扱えるツールは、Illustrator、Photoshop、InDesign等のAdobe系デザインソフトと、プレゼンテーションのデザインも相当数やってきたのでPowerPointも。
実務経験として他にも、動画制作のディレクションや、ノベルティ等のグッズデザイン、パッケージデザイン等もやってきている。
とはいえ私は、美大やデザイン系の学校で学んだことは一度もなく、独学&実務でのみデザインができるようになった、いわゆる叩き上げのデザイナーだったりする。
思えばデザイナーになろうと明確に志した訳でもなく、心を病んでフラフラと生きていた19歳、幸運にもカナダに留学する機会を得たときに、留学先で出会った恩師に「君はアートやデザインの才能がある。日本に帰ったらデジタルアートの分野を学ぶといい。」そう言ってもらったことが心に残っていて、何となく、「帰国したらクリエイティブ系の仕事とかアリだなぁ」とふわっと考えていた。はじまりはその程度のものだった。
20代の頃は油絵をやっていて、イラストを描くのも好きだったけれど、コンクールに応募したりするものの、自分の絵の下手さ加減と、プロになる道のりのあまりの途方の無さに絶望していて、「結局『好き』は仕事にはならないんだよな」と、いじけてはなから諦めてもいた。
留学から帰ってきても就職できないまま、それでも生活のために仕事を転々としながら生きてはいたけれど、ある時やっていた派遣の仕事で、ひたすら年金番号の照合をするという単純作業に気が狂いそうになって、「やっぱり、なにかを考えて、生み出す仕事がしたい」と思い至って、「もうイラストレーターやアーティストでなくてもいいから」と、デザイン系ソフトをいじったことすら無かったのにも関わらず、未経験可の制作会社を探して就職したのが、私のデザイナー人生のはじまりだった。
最初に就職した会社で、冊子モノのレイアウトや編集、デザイン系のソフトの使い方や、デザインのあらゆる基礎を実務を通して学んでいって、始発から終電まで働いてこの時期はものすごくキツかったけれど、続けていくうちに「目的に沿って考えて、何かを生み出す仕事は私の性に合ってる」ということは、徐々に確信に変わっていった。
はじめの会社で産休育休を取っている最中に、会社が経営不振に陥り解雇、長ーい紆余曲折あって(ホントに笑えるくらい色々あったw)その後、当時武蔵小杉にあった富士通のデザイン部門に入社。
CI開発やコーポレートブランディング、マーケティング、新規ビジネス創出などのプロジェクトを通して、それまでは単純に「デザインをつくる仕事」だったものから、よりハイレベルな「戦略的に世界観をつくる仕事」へと、出来ることの幅も広がっていった。
富士通時代は、それはそれは、いろんなプロジェクトを経験させてもらって、会社の受付嬢が首に巻くスカーフのデザインから(今も皆さんまだ巻いてるw)、自社のグローバルイベントのテーマビジュアル開発から、動画制作から、役員のプレゼンテーションから、新規事業の企画・立ち上げまで…それはもう色々な「企業のデザイン」というものをやらせてもらえたことには本当に、今だに感謝しかない。
独立した今もクライアントワークが中心の日々を送っていて、いわゆる「見た目」をデザインする仕事もあれど、「新しいことを生み出す過程」をデザインする仕事も多い。組織ビジョン策定や、新規ビジネス創出のワークショップ設計・ファシリテーション、戦略立案、ステークホルダーに共感してもらうためのストーリーを構築して資料化する仕事なんかがそれにあたる。
同じくらいのボリュームで、プレゼンテーションやコミュニケーションの講師もやっていて、いろんな企業さんの社員研修なんかで先生的なお仕事もしている。今やっているお仕事はどれも楽しんでいるし素晴らしいけれど、特に教えるお仕事は、私のど真ん中だと思う。やっていて本当に時間を忘れるというか、楽しいしかないし、誰かに喜んでもらえる感じもたまらなく好き。
…とまあ、色んな時代を過ごしてきたのだけれど、こうあらためて私の風変りなデザインキャリアからすると、随分と遠くに来たもんだなぁ。と、なんともしみじみ思ってしまう。
デザイン教室をやろうと思ったのは
さて前置きがかなり長くなってしまった。ごめんなさい。
デザイン教室の話をしていきたいと思う。
(ここから書く内容について、こちらのガイダンスの動画でサマリーしています。)
前述したように、講師の仕事はもう随分としていて、これまで12000人くらいの方にプレゼンテーションの作り方、デザインを教えてきた。
色んな企業の方が集まる研修等で私の講座を受けてくださった方が、「自社でもとても必要としている内容なので、是非今度はうちの社内向けにお願いしたい」とリクエストくださることが多く、有難いことにほぼ口コミだけで企業から企業へ呼んでもらえるようになった。
話すことも、参加者の顔がキラキラと輝いていく様子を見ることも、大大大好き。この上ない喜びを感じるのだけれど、通常は単発のセミナーやワークショップであることが多く、一度にたくさんの方々に向けて発信できる素晴らしさはあるものの、もっとひとりひとりの方に丁寧に関わりたい。という想いもずっとどこかにあった。
と言うのも、私の講座では速攻使えるテクニックも沢山教えるけれど、私が講座の随所に滑り込ませている、本当に伝えたいメッセージは「テクニックの先にある『あなたらしさ』こそ、本当は何よりも素晴らしいのだ」ということだから。
私たち現代人は、スキルアップや知識を取り込むことに関しては、関心が高く真剣な人が多いと思う。でも、沢山の人にノウハウを教えてきた中で感じるのは、本当はもっと、スキルやテクニックを磨く前に、「自分がどんな人間であるかに目を向け、それをもっとストレートに表現してみたっていいじゃないか。」ということだったりする。例え、ビジネスの文脈であっても。
上手い人、優秀な人の真似をするコトも大事だけれど、その人のココロが動くこと、その人が好きだと思うものの中に、その人のユニークさ、「らしさ」って隠れている。そして、人が自分のそれに触れた時、身に着けたテクニックが最大限に活かされるのだ。ということもまた真実だと思う。
これまでデザインという仕事に向き合う中で、私はそんなことを感じていて、個別の人にもっと深く関われる場をつくりたいなと常々思っていたことが、デザイン教室を始めようと思ったきっかけだった。
そして、もう一つの理由としては、デザインて結構普遍的に色んなシーンで役に立つツールなんじゃないか、というところ。だからそれをもっとデザイナーではない人でも使えたら、その人が何か新しいことを始めようと思った時や、もっと自分を活かして働いたり生きたりしたいと願った時に、ハードルがぐっと下がるって気もしていて。
お金を払ってプロのデザイナーに依頼をするって程ではなくても、ちょっとイベントの告知バナーを素敵に作りたい。であったり、セミナー資料をもっとカッコよく洗練させたい。であったり、そうゆう時にサクッとデザインのノウハウを使えたら、すごくいいんじゃないか。
いつものちょっとエモい言い方をすれば「人がその人のGIFTを輝かせるきっかけ」ということであり、デザインというツールにもそれは出来るよ。ということなんだと思う。
それに、レイアウトの仕方や配色、ソフトの使い方等、実務レベルで使える有用テクニックもわんさか教えるんだけど、それより何より「デザイン的な考え方」はもっと大事で、これはそれこそ、人生の色々なシーンで活きる宝物な気がする。デザイン的な考え方とは例えば、「相手を見ること」「共感すること」「話の聴き方」「ものづくりのプロセス」「リサーチの仕方」「仮説の立て方」…等々。これらは大抵アカデミックに寄った内容であることが多いんだけど、必ずしもすべての人がアカデミックに習わなくても良いと思うし、その本質はどんなにデザインに触れたことがない人でも培うことができるものだと私は思っている。
こういったデザインのエッセンスを分かち合うことで、人がその人らしいGIFTに触れることができる時間、そして「なんちゃってで始めてみたら、うっかり『上手すぎる素人』になれちゃったよ」そんな学びの場。
それがこのデザイン教室かなぁ、なんて思ったりする。
デザイン教室でやること
まず最初に、私がこの教室をやるにあたって大切にしていることについて。
プロになりたい訳ではないけれど、デザインを学んで、自分の想いに向き合いながら、自分らしくそれをカタチにしたり、それを今っぽく魅力的に人に伝えることがしたい人。そんな方に来ていただけたら、最高に楽しんでいただける自信がある。
逆に、テクニックだけを習得して数か月後にWEBデザイナーとして開業したい方や、パワポやイラレの操作方法だけをピンポイントで知りたいという方は、そこまで楽しんでいただけないかもしれない。
私は、直接的なテクニックも沢山教えるけれど、それ以外の「デザイン的なマインドセット」や「共感」、そして「自分の想いやらしさに触れる」というような事をとても大事にしているので、その辺りも含めてデザインを学びたい方ならきっと楽しんでいただけるんじゃないかな?と思う。
それから、もう一つ。
私は、デザイン教室に来てくれた方にとって、講座の期間中も終了後も、デザインの先生であり続けたいと思っている。これはどういうことかと言うと、主に以下の3つの内容が受講者の方には適用されるということ:
これらを踏まえた上で、教室での講座の内容について説明していく。
デザイン教室には、3つのコースがある
◆PowerPointでプレゼンテーションのストーリー作り、プレゼン資料のデザインの仕方を学ぶ「プレゼンデザインコース」
◆Illustratorの基本操作、グラフィカルなデザインレイアウトの仕方を学ぶ「Illustratorコース」
◆講座への参加はせず、上記2つのコースの「動画視聴のみ」のコース
DAY1
DAY1は、両コース共通で開催し「デザイン基本プロセスと考え方」についての座学。多くの方が「意外!」とおっしゃるけれど、デザインて感覚だけではできなくて、皆さんが思ってるよりずっとロジカル。
「誰に向けて、なぜこのデザインなのか?」それを考えて軸を決める所が、デザインの出発点だよーというお話をするのがこの回。
DAY2
DAY2から、「プレゼンコース」と「イラレコース」に分かれて。
どちらのコースも、以下のPhase1~5の流れを辿り、ただ制作物は異なる仕立てに。
プレゼンコースは「MY STORY プレゼンテーション」を、そしてイラレコースは「MY レジュメ」を制作していく。
Phase1:自分に目を向ける対話
Phase2:真似して学ぶ
Phase3:手を動かしてみる
Phase4:フィードバックをもらって、修正・仕上げる
Phase5:発表する
そしてDAY2は、ペアになってインタビューをし合うのがメイン。
◆プレゼンコース「MYSTORYプレゼン」↓↓↓↓
インタビューをしたら、MYSTORYプレゼンのテーマを以下の中から決める。(もちろんこれ以外のテーマでもOK)
・私の中の小さな夢
・私が大事にしているコト
・私が幸せを感じる瞬間
いきなり作れと言われて一番困るのが、プレゼンのストーリー。
プレゼンて何気に、デザインより何より、ストーリー作りが一番難しかったりするんです。なのでここは丁寧にレクチャーしていく。
最初はざっくりとしたフレームを用いて、MYSTORYを整理しながら。
もちろん、このフレーム通りにやってね、ということではなくて、これはあくまで目安。ワークをしていくうちに、徐々に「プレゼンの流れってこうやって作るんだ」が分かってくるので大丈夫。
◆イラレコース↓↓↓↓「レジュメ」を作ります。
一般的な履歴書や職務経歴書は味気ないですよねー。それに比べて海外のレジュメはもっと自由でおしゃれ!
教室では後者を作りますww
準備として、同じくイラレコースでも、インタビューワークを。
自分が作ってみたいレイアウトを選択するところから制作がスタート。ちなみに第一期のイラレコースに参加してくれた方は全員初心者。「ソフトを一度もいじったことないですけれど、大丈夫でしょうか…?」って方も割と何人もいらっしゃって。でもそうゆう方でも基本操作を覚えて、デザイン性の高いしっかりとしたものを制作できるように、色々な「デザインのショートカット」を伝授していきます。
DAY3
DAY3は、DAY2でスタートしたワークを引き続き。
基本的に各回の講座の中で、皆さんに手を動かしていただくことは、あまりしない。私が画面共有しながら作り方をデモしたり、皆さんの中間地点の制作物に解説しながら手を入れていくのがメイン。手を動かしてもらうのは、講座の動画を観ながらマイペースで取り組んでもらったほうが、変なプレッシャーにならなくて良いと思っている。
プレゼンコースのDAY3では、まだまだストーリーの作り方を丁寧にやっていきます。
お一人のストーリーを題材として、ストーリーの組み立てとデザインの触り部分をデモしながらレクチャーしていくのがこの回。
イラレコースも同様に、画面共有によりデモが中心の2時間。
レイアウトの基礎的な考え方、文字組みの仕方、配色等について。
私が講座で大事にしているのは、「教えてもらったやり方をなぞってやったら、それなりに良いものができちゃった!」という驚きと喜びを味わってもらえるような仕立てにすること。
だから複雑で難しいテクニックは教えないし、「初心者でも最短でデザインができるようになっちゃう方法」を教えます。そのための使える素材の集め方なんかも伝授。Web検索で自力でいい素材を探すなんて時間の無駄。これだけ覚えればOK!ってものに絞るってお伝えするってところには、一応結構気を使っていたりします。
DAY4
DAY4もDAY3に引き続き、参加者の方々の中間地点の制作物にフィードバックと解説をしながらデモしていきます。
この「他の人のアウトプットを見る」というのは、実は制作する上ですごく重要。「他の人の制作物を見て、こんな方法があるんだ!って刺激を受ける」と皆さんおっしゃる。テクニックだけ教わっても、実際自分の制作物にどう適用すればいいの?というのが一番難しいところなので、デモしていくことでそこのギャップを埋めていくのがDAY4。
フォローアップ回
DAY4と最後のDAY5の間に、フォローアップの回を設けています。
ここでは引き続き、皆さんがワークされている制作物にフィードバックをかけつつ、最終化に向けブラッシュアップに取り組みます。
DAY5(最終回)
そしてDAY5は、2つのコース合同での発表会。制作物をおひとりお一人が発表。
この回は本っ当に感動パート(T T)。みんな、こんなに違う。でも、みんなが美しくてユニークで、こんなに素晴らしい。そんな風に心から感じる時間。
これまで1期2期合わせて32名の参加者の方々とご一緒できて、講座が終わってからも「いまだに動画を見返して復習してます。」って言ってくださる方もいらっしゃったり。嬉しいかぎりです。
受講生の皆さんとは有難いことに「アドバンスコース」で引き続きご一緒できそうで、そして沖縄デザインリトリートも2021年11月に開催できて、最高に楽しい時間を過ごしました。
次の期はどんな方々とご一緒できるのか、楽しみが増す♡
みんなの感想
参加者の方々に感想をインタビューさせていただいて、みんな私に気を使って言ってくれてるんじゃなかろうか…と心配になるほど、すごく嬉しい言葉ばっかり頂いてしまった。許可をいただいたので、こちらで一部シェア。
私が場をつくった。というよりは、参加者の皆さんお一人おひとりと作った場だった。本当にそう思っていて、皆さんには感謝しかない。
デザインを学ぶことを通して、互いに手にできたもの。それは、自分の内側に目を向けることの大切さとか、それを安心な場で誰かと分かち合うことの喜びであったり、全国各地にいる仲間と知り合い繋がりあう温かさであったり、「つくる」や「伝える」という行為を通して実感するワクワク感であったり、これまでは頭の中にしかなかった「自分の想い」がアウトプットできることに対する充実感であったり。
今回デザイン教室なるものを開いてみて、「あぁ、こうゆう場をつくること自体が、私は心底好きだな。」と強烈に思った。このデザイン教室には、人生の中で私が心からやっていきたいコト、GIFT、喜び、充実感、全部が詰まってるんだと思っている。
この記事が気に入ったらサポートをしてみませんか?