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従業員全員がオーナーに?新しい組織の形”Co-Owned”を生み出す小泉大輔が薦める5冊。

(この記事は2019年に作成したものを再掲載しております。)

業界のトップを走る「プロフェッショナル」が薦める本とは?公認会計士の資格を持ちながら、従業員の幸せという観点から経営を分析する小泉大輔氏。小泉氏が従業員の主体性が高まる5冊をお薦めする。組織を率いるビジネスマンは必見。

株式会社オーナーズブレイン 代表取締役/公認会計士/税理士 ・1970年9月5日生まれ、東京出身 ・1993年上智大学経済学部経済学科卒業 ・1995年公認会計士第2次試験合格 ・1995年朝日監査法人(現あずさ監査法人)・1995年公認会計士第3次試験合格、公認会計士登録 ・2003年(株)オーナーズブレイン設立・現在、同社代表取締役

”幸せ”に疑問を持つべき

父親の心臓病の手術が、僕にとって大きな転換点でした。父親は、歌手、映画俳優として活躍する芸能人でした。芸能界の中でも、父は、とくに、前向きで、幸せに満ち溢れていることでも有名だったのですが、ちょうど今から10年前、手術不可能といわれた難しい心臓病の手術が成功したと思われたのですが、その後遺症で両足を切断しなければならない状況となり、それ以来、父から笑顔が消えてしまいました。
あれだけ幸せだった人が、急に幸せではなくなってしまう状況に直面したことで、「幸せって何だろう」という疑問が湧きました。イリノイ大学・心理学教授エド・ディナーの研究によれば「幸福度の高い社員の生産性は平均で31%、売上では37%、創造性は3倍高い。」ということだそうです。私自身も、公認会計士として、いろいろな会社をご支援しておりますが、売上、利益が継続的に伸びている会社の共通点として、働いている従業員が幸せであることが大きな要因であることに気づきました。そのようなことからも、「幸せ」というテーマに関心が深まり、どうしたら、従業員が休み明けに会社に出社することがワクワクするようになるかなど、現在は幸福と経営の関係性について研究しています。

幸せに働くことのヒントは”Co-owned”にある

幸せについて考えるにあたって、世界中の事例に目を向けて考えることが重要だと思っています。父からの学びがきっかけとなり、幸福度指標の高い国や地域に行って、インタビューをするようになりました。もう60か国近くに行きましたね。
直近で僕が注目しているのは、2019年8月にアメリカのBusiness Roundtable(日本でいう経団連)が、投資家や株主を重視する株主第一主義を見直し、「従業員や地域社会などの利益も尊重した事業運営に取り込む」と宣言したことです。この変化の社会的な意義は大きいです。
でも、実は、この衝撃的なニュースよりもずいぶん前、英国では約100年前から、また米国では1974年から”Co-owned”という「幸せの資本主義」の事業モデルがあるということは日本ではあまり知られていないと思います。
”Co-owned”は、従業員が自ら働く会社の影響株主・支配株主となる事業モデルです。基本的に従業員は、株式を買うお金を負担しない、株式を引き出せるタイミングは退職時などストックオプション制度や従業員持株会制度とは異なりますが、とくに、従業員が影響株主・支配株主となる点が大きな特徴です。つまり従業員は会社のことを、自分ゴトとして考えられます。実際、英米の研究では、”Co-owned”は、”Co-owned”でない会社と比較すると、利益率、従業員の定着率、会社の持続性で非常に優れているという報告もあります。
日本の書籍でも、”Co-owned”についての本があるのでチェックしてみてください。『コーオウンド・ビジネス』では”Co-owned”型の経営の事例が載っています。会社の儲けが公平に従業員、そして社会に還元されていくことがイメージしやすいと思うので、オススメです。


オーナーシップカルチャーで主体的な行動を促す

”Co-owned”のモデルが向く会社と向かない会社があるのは事実です。例えば、厳しい営業ノルマが課され、仲間を犠牲にしてでも自分の成績を上げるような風潮の従業員同士の競争が激しい会社には向きません。”Co-owned”のモデルが向くのは、仲間を思いやり、互いに協力しながら、従業員同士が分かち合う組織風土がある会社です。

社員一人一人が、自分たちがともに会社のオーナーであるという意識が、エンゲージメントを高め、会社、仲間、仕事を大切にしていこうという意識が生まれる。そして、会社の経営数字もオープンで、努力の成果を公平に分かち合っていき、上から管理されるのではなく、一人ひとりが自ら支援するという文化が醸成される。

この文化を「オーナーシップ・カルチャー」と呼び、このオーナーシップカルチャーがとても重要です。特に、従業員が株式を保有するということが、オーナーシップカルチャーの醸成に深くつながっていきます。もちろん、まだ日本ではこの”Co-owned”は、まだあまり知られてませんが、このオーナーシップカルチャーという考え方に、組織として主体的に動くヒントがあると思います。

『ティール組織―マネジメントの常識を覆す次世代型組織の出現』という本が昨年(2018)、話題になりましたよね。ティール組織とは、「社長や上司が業務を管理するために介入しなくとも、組織の目的実現に向けてメンバーが進むことができるような独自の仕組みや工夫にあふれている組織」を言います。上下関係も、売上目標も、予算もない。そして、従業員のエンゲージメントを上げ、圧倒的な成果を上げる組織によるマネジメント手法は、まさに、未来の経営だと思います。

このティール組織を日本で実現した、近藤宣之さんの『社員に任せるから会社は進化する』を読むと、この組織構造をどのように構築し、経営を実践されているか知ることできます。「社員ファースト、お客様セカンド」に代表される、徹底的に社員を大切にする姿勢を重視した大胆さは、新しい組織を考える第一歩として良いと思います。実際に組織改革をして成功した事例を読む事で、さらに理解も深まるはずです。

また、組織改革には企業の文化づくりが重要です。これに関しては、『THE CULTURE CODE ―カルチャーコード―』がオススメです。トップダウン型で、指示待ち社員が多いと問題意識を持っているリーダーにオススメです。アメリカの通信研究所であるベル研究所を始めとして、GoogleのようなIT系のチームから、ラグビーのオールブラックスのようなスポーツチームの事例まで幅広く載っているので、自分のチームに活かせる知識を抽出しやすい点でかなりいい本です。

その他にも、とてもユニークな会社の事例の多い『非常識経営の夜明け』も合わせて読むといいと思います。従業員が自分で給与を決める会社や組織図が全くない会社の事例など、従業員のエンゲージメントを上げる様々な方法を知ることができます。


新たな発見を読書からできるように

公認会計士になってからの約25年間は、年間で多い時は約300冊、少なくとも150冊以上は読んでいます。読書の方法としては、気に入ったテーマが見つかると、10〜20冊くらいテーマが同じ本を選び、まとめて読みます。一冊一冊を最初からじっくり読むのではなく、好奇心がわくような気になる論点に絞って、10〜20冊分、その論点の部分をコピーして、串刺しでまとめて読むと、かなり多面的に深堀って理解することができますね。

ただ、継続的に読書していると、どうしても自分が好きな分野の本に偏ってしまったり、また、自分の関心がある部分のみにアンダーラインを引くなど、パターン化してしまっていることに気づきます。そこで、少しでも新たな気づきを得るために、自分とは異なる分野で活躍している経営者仲間たちとフランクな読書会をしています。持ち回りで、メンバーがオススメする本を1か月に1冊決め、その本を読んで得られた価値をメンバーでシェアしながら食事する会で、2年くらい前から継続的に行っています。

仲間を通じて、自分が良い本と思えた本の著者に会える機会に巡り合えたこともあり、また、すでに読んだ本でも、自分が気づかない価値に気づけることが多く、とても有益だと感じています。読書をより多くの価値を得るために、新たな発見を提供してくれる環境に身を置くことが必要だと思います。

また、読書がきっかけの出会いは、本だけではありません。僕は、感銘を受けた著者には会いに行くこともあります。昨年は、どうしても、直接お会いして、お話を伺いたいと思い、何とかアポイントメントを取りつけ、アメリカにまで会いに行ってしまいました。著者への質問を考えながら読むと、その本への愛情も深まりますし、読書に対する真剣さも上がります。読書を楽しめる方法はこのように数多くあるので、皆さんも試してください。

自己の利益に捉われない経営を

株主第一主義に代表されるように、これまで企業は、競争することで成長を追い求めきました。ですが、これからの時代、社員や取引先、お客様など全てのステークホルダーの利益を考えることが必要だと思います。自己の利益に捉われないことが、長く続く会社の条件となっていくはずです。組織を率いる際に、この感覚を持てると良いですね。

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