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経営・ビジネスを人間心理から分析する経営心理学の『藤田耕司』が選ぶ必読7冊。

(この記事は2019年に作成したものを再掲載しております。)

業界のトップを走る「プロフェッショナル」が薦める本とは?読書をもっと面白くする実名ソーシャルリーディングアプリReadHubが、独自インタビューをお届けするReadHubTIMES。AI時代のビジネスマンの働き方を経営心理学から考える藤田耕司氏。公認会計士でもある藤田氏が薦める、経営・ビジネスを人間の性質から学ぶための本をご紹介する。【Professional Library】

1998年に早稲田大学に入学後、大学3年の時に公認会計士の受験勉強を始め、2004年に公認会計士試験に合格。
同年、有限責任法人トーマツに入所後、心理学に基づいて経営のアドバイスをすると次々に成果が出るようになり、なぜ成果が出たのかについて心理学的に解説した内容を経営心理学としてまとめていく。2011年に有限責任法人トーマツを退所後、経営コンサルティングを事業として始め、更なる成功事例を積み重ねるとともに、経営心理学のコンテンツを体系化し、2012年から静岡産業大学で経営心理学の講義を受け持つ。2015年には経営心理学を学ぶための経営心理士講座を始めるべく、一般社団法人日本経営心理士協会を設立。経営心理士の資格を発行するようになる。2016年には日本経済新聞出版社から「リーダーのための経営心理学」を出版し、Amazon2部門で1位を獲得。台湾、韓国からも出版のオファーがあり、同著の翻訳版が2カ国で出版される。


人間の性質を知っている人が最後は勝つ

人間そのものを理解する必要があると気づいたのは、大学受験の時期に遡ります。高校3年生の夏に野球部を引退するまでは、野球ばかりの人生を送ってきました。部活の感覚が残っていたため、受験勉強を根性だけで乗り切ろうとしていました。しかし、偏差値は40程度で、そこからほとんど伸びませんでした。そして結果的にはそのまま浪人することとなり、勉強方法の根本的な変更の必要性を感じました。

記憶にはメカニズムがある。これに気づいたのが私の受験の戦略の転換点となりました。掃除機を買ったらその説明書を読むと同じように、勉強では脳を使うから、脳の説明書を読んで、その性質を理解してから勉強した方が効率的なのでは、と思ったわけです。そこで何冊かの脳に関する本を読み、浪人生活の初めの1ヶ月を記憶法の研究に費やしました。すると、その後は、みるみるうちに成績が伸びていきました。

最終的には早稲田大学の合格までたどり着くことができ、これが自分の中で大きな成功体験となりました。そこで私は、脳や心などの人間の性質を知っている人が最後は勝つ、と確信しました。


人間を知ることの重要性に気づいてほしい

人間の性質を知っている人、と言われても想像するのが難しいですよね。私は最初に脳についての勉強をしたので、脳科学を初歩から学ぶのにオススメの本を2冊紹介しようと思います。

1冊目は『ブレイン・ルール』。この本はまだまだ謎の多い脳に関して、すでに証明されている研究結果に基づいて説明をしています。脳が持つ基本的な性質にはじまり、短期記憶、長期記憶、運動や睡眠が脳に与える影響など、脳について何も知らないという人が、最初に知っておくべき内容が詰まっています。

2冊目は『心脳マーケティング』です。これは科学に忠実で、学術的とも言える『ブレイン・ルール』に比べ、より実践的な内容の本です。私の専門である経営心理学に通じる本でもあります。これまで営業などマーケティングに関わる仕事をしてきた人に、自分の知識や経験に結びつけながら、脳や心がいかに消費行動に影響を与えているかを知ることができます。

脳はまだまだ謎が多い分野ではありますが、人間の行動に大きな影響を与えていることは間違いないです。経営やビジネスをより良くするためにも、効率的に何かを学習するためにも、人間そのものの性質を知った上で始めた方が効率的かつ効果的です。

心理学はコミュニケーションを向上させる

大学に入学し、私は野球サークルに入りました。しかし、そのサークルの同期は私を含め2人だけでした。このままでは廃部になる。そんな危機感を覚えながら、大学3年生になり、幹事長としてサークルの勧誘活動を仕切ることになりました。

当時から消費者心理を学んでいた私は、サークルの勧誘活動においても消費者心理の内容を活用していました。新入生が入りたくなるサークルにするためにはブランディングが必要。そう考えた私は、早稲田大学のみならず日本大学と明治大学の野球サークルも巻き込んで、計12チームからなる2部制の野球リーグを立ち上げました。そして、その野球リーグの主幹事サークルというブランディングを行いました。また、日テレから収録の話を持ってくるなどして、メディアの力も活用し、結果として、30名を超える新入生の勧誘に成功しました。

このように多くの人を巻き込めたのも、独学で勉強を続けていた心理学が大きな要因になったと思います。当時は勉強した心理学の知識を、普段の友人とのコミュニケーションで試していました。すると次第に友達が増えてきました。友達が増えるといろいろな情報が入ってくるとともに、多くの人のつてができます。こういったことが自身の可能性を大きく広げてくれました。

プロフェッショナルとしての経営心理学

野球サークルが落ち着いて、大学3年生の途中で公認会計士を目指すことを決意します。
その時は就職したい企業も、やりたい仕事もなかったので、新卒採用の機会を捨て、受験勉強に専念しました。ここでも大学受験の際に活用した記憶の研究の内容が大いに役に立ち、無事に合格することができました。

公認会計士試験合格後、私は監査法人に入所しますが、公認会計士に合格する前からずっとやりたいと思っていたのが、社長を集めた異業種交流会の主催でした。最初は、手当たり次第にmixiに掲載されている異業種交流会に参加し、自分の交流会の参加者を集める地道な勧誘活動をしていました。すると、六本木ヒルズのヒルズクラブの会員券を持っている社長と仲良くなり、その社長の協力のもと、ヒルズクラブで経営者交流会を定期的に開くようになりました。「ヒルズクラブで経営者交流会を主催している会計士がいるらしい」。その噂が広まり、毎回30~60人くらいの方が参加する交流会に発展していきました。そこで私はビジネスで相乗効果が生まれそうな参加者同士を交流会でお繋ぎすることを繰り返すうちに、様々な会社のビジネスモデルを理解するようになり、経営者の方々と親睦も深めていきました。

親睦を深めた様々な経営者と頻繁に飲みに行くようになり、私が会計士ということもあって、経営者の方々からはよく経営の相談をされました。そういった相談を聴く中で気付いたのは、業種・業界・規模を問わず、経営者が悩んでいることはほぼ同じだということでした。その悩みの中で特に多いものが2つあります。1つは従業員のモチベーションを上げたいということ。もう1つは売り上げを伸ばしたいということです。

私の理解では、この二つはどちらも「人」についての悩みです。前者は従業員という「人」の悩み、後者はお客様という「人」の悩みです。勉強をする前に脳の勉強をするのと同じように、人を動かすためには人の性質の勉強をする必要があります。また、人の性質を知った上でコミュニケーションができれば、人を動かすことができる可能性は高くなります。こういった経営者からのご相談に対して心理学や脳科学に基づいてアドバイスをすると、納得し、成果を出される経営者も多く、人間の心や脳の性質を理解することは、経営やビジネスの成果を高めることに繋がるということを知りました。

人間の性質に基づいてマネジメントしろ

世の中には、偉大な経営者のエピソードや経営手法に関する書籍はたくさんあります。しかし、そう言った書籍を読んでも普通の人にその内容を再現することは難しいものです。そこで、経営・ビジネスで高い成果を収めている人たちの行動を心理的に説明し、自らも再現できる形でお伝えするのが経営心理学です。

例えばマネジメントを行うにしても、その相手は人間ですし、その主体となる自分も人間です。だからこそ人間の性質を勉強することはマネジメントの基本となります。そういった人間の性質を学んだうえで、取るべきアクションを起こし、コミュニケーションを通じて人に影響を与えていくことが重要になります。
部下を持つ方やチームを引っ張る方に、まず必要な知識として人間の性質を学んでほしい。その思いで書いたのが自著の『リーダーのための経営心理学』です。この本は現在、台湾や韓国でも翻訳され、日本を含め世界3ヶ国で出版されています。


人の行動を変えるためには感情を動かす

最近は、経営者向けのセミナーや大学での講義を行っています。それらの講義で重点をおいていることは、実際に現場を変えるということです。現場を変えるためには、自らの行動を変える必要があります。そのために重要なのが、人間の行動を司っている感情です。

リーダーには思考力をはじめとした知性が必要です。ですが、それ以前に感情の理解能力や意思決定の際の直観力が、基礎力として必要になってきます。これらのことが書いてあるのが『EQリーダーシップ 成功する人の「こころの知能指数」の活かし方』です。EQは、一般的に知られているIQ(知能指数)とは異なる、心の知能指数(Emotional Intelligence Quotient)を指します。脳の仕組みから感情を説明し、それをどのようにリーダーシップに活かしていくかについてまで書かれています。


単純作業はAIにとって代わられる

経営心理学の1つコンセプトに、「AIとの共存共栄」があります。
2013年にオックスフォード大学のマイケル・A・オズボーン氏が書いた「The future of employment(雇用の未来)」は日本でも話題になりました。20年以内に約47%の仕事が機械にとって代わられると予想した論文です。当時、私はエクセルのマクロを使って業務の効率化を進めるのが得意であったこともあり、この論文の通り、近い将来、多くの作業は機械によって自動化されていき、技術の進化とともにより多くの仕事が自動化されていくようになると感じました。以来、AIと人間の仕事に関する調査を始め、そういったテーマの講演活動も行うようになります。

自分の強みを発揮できる経営を学べ

自分が公認会計士であることもあって、士業の業務のうち、単純な作業は近い将来、自動化され、なくなっていくことはすぐに理解しました。講演などでも、今後、より多くの仕事がAIや機械に仕事がとって代わられる話はしていたのですが、AIという言葉が今ほどメジャーではなかった当時は、受講者たちはSFの世界の話のように面白がって聴いていました。それが今では急に現実味を帯び始め、士業として単純作業以外の分野で仕事をどのように取ってくるのかが大きな課題の1つとなっています。

そこで、士業として人間にしかできない仕事でいかに付加価値をつけるかについて書いたのが『経営参謀としての士業戦略』です。士業は機械によって自動化されていくであろう単純作業からコンサルティング業にどのようにシフトしていくべきか、そして「人間であること」の強みとは何かについて、私の会計事務所での実際の取り組みを交えながら書かせていただいています。AI化が台頭してくる今後の時代に向けて、士業としてのキャリアを考えていきたいという方には、ぜひ手にとっていただきたい一冊です。

多くの仕事がAIや機械によって自動化されていく中で、自動化が難しいと言われる仕事の1つがマネジメントという仕事です。このマネジメントについては、ドラッカーの『経営者の条件』がオススメです。決して読むのは楽な本ではありませんが、繰り返し、粘り強く読むだけの価値がある本だと思います。


世の為・人の為で脳は活性化する

社会性を持つこともAIには(まだ)ない人間特有の性質の1つです。「情けは人の為ならず」という言葉があります。意味を間違えている人が多いのですが、本来の意味は「人に情けをかけることは巡り巡って自分に返ってくる」という意味です。この言葉を脳科学の面から理解できるのが、脳神経学者の篠浦伸禎氏が書かれた『人に向かわず天に向かえ』です。

世のため人のために真剣に物事に取り組むことで、右脳が活性化されることがこの著書には書かれています。この事実からすると、人のために情けをかけることは、右脳が活性化するという形で自分に返ってくると考えることができます。世のため、人のために貢献できる人が、自らの能力を伸ばし、成果を出していくというのは非常に興味深い内容です。


読書で脳は活性化する

私が本を読む目的は主に2つあります。1つは何かの知識をインプットするということ。

そしてもう1つが、アイディアやひらめきのきっかけとすることです。読書をしていると、その本の内容とは関係のないアイディアが思い浮かんでくることが多く、このアイディアは普段では思い付かないようなことが多いです。本の内容とは関係のないひらめきが次から次へと湧いてくる理由はよく分かりませんが、この偶然のようなことが高い確率で起きるので、読書は脳の活性化のためのトリガーだと思っています。


人間を知り、強みを活かせる準備が必要

ここまで経営心理学や人の性質、そして来たるAI時代に向けたキャリア等の話をしてきました。これらの次の時代を生き抜くための考え方は誰もが知っておくべきことだと思います。コミュニケーションを始めとした「人間であること」の強みを活かしたビジネスキャリアを準備しておくことが、今後の時代には重要になるでしょう。

AIの台頭を誰もが体感する時代になりました。人間ならではの強みが何かを理解し、その分野で付加価値を発揮しながら、AIとの共存共栄ができるビジネスを展開する。

そういった取り組みが、これからの時代を生き残っていく為に不可欠になると考えています。と同時に、「人間とはどういった性質を持った存在なのか」を深く理解することの重要性はますます高まっていくでしょう。

※インタビューをもとに作成
インタビュー:青木郷師、文章:高井涼史

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