感情を思い出せる「日記」

遠藤和さんの「ママがもうこの世界にいなくても」を読みました。

若い世代の女性としては珍しい、大腸がんを患った和さんの、旦那さん、家族さんと向き合った闘病と妊娠出産までの日記を書籍化したものです。

黄緑にも日記をつけていた時期があり、就職活動で失敗しまくっていた時に、圧迫してきた面接官への罵詈雑言をたくさん書きあげたデスノートは今でも押し入れに封印しています。

その日に感じた感情を鮮烈に思い起こす手段は日記を置いて他にないのではないか、と思っています。
例えば、「ムカついた」ことも、誰の何にどのくらいムカついたかは、文字に起こすととてもありありと思い起こすことができるものです。

思い起こす例えがどネガティブな感情表現なあたり、黄緑も日記にはさぞぶつけさせてもらっていたのでしょうね…。

和さんの文章は実に感情が鮮やかに記されたもので、闘病に苦しむ記述や、和さん自身の人生を悲観してしまっているような記述には、読みながらにして、同じように落ち込んでしまうパワーがありました。
眠ると、そのまま目が覚めず死んでしまうのではないか。これで旦那に会えるのも最後ではないのか。
病の当事者として置かれた苦悩が、親しみのある言葉選びで綴られる。これまでの読書のなかでも、体感性の高い読書体験だった気がします。

その読者を巻き込むパワーは、旦那さんや娘さんに対する愛情が表れた記述で、1番強く発揮されていました。

闘病に苦しみ、周囲が「もうダメかも」という雰囲気になってもなお、前向きに和さんを励ます旦那さんに対し、「ありがとう」「愛してる」とおこされた文字には、これまでどの本で読んできたその言葉よりも胸に刺さるものがありました。
こうして書くと、実に味気ないですが読んでみるとわかってもらえるのではないかと思います。

この本をもう一度、どこかのタイミングで読み返してみようと思っています。

一度目、今回は図らずとも、自分の状況に投影して旦那さんの視点で読んでいました。
二度目は、前書き、本文でご夫婦がともにこの本をつくるに至った理由と仰っている、「遺された娘さん」の視点で読んでみたいと思います。

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