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チャリティにも科学的な思考を

国内外の非営利組織を資金的に支援する財団で働いているせいか、以前からチャリティや募金といったものについて、個人的にはものすごく懐疑的に考えていた。

一体そのお金は誰のためにどのように使われるのか、募金活動の案内を見ただけではよく分からないことが多い。

街頭募金などで声をかけられても、躊躇する人は多いと思う。

一方で、その時の情動や周囲の環境から、お金を投じる人もいるだろう。

一体全体、効果的、合理的な寄付やチャリティなどというものは存在するのだろうか。そして、どうすれば、より世の中に対して良い影響を与えられるプロジェクトに対して自分のお金を投じることができるのだろうか。

こうした疑問に答えてくれるのが、「効果的な利他主義宣言」(ウィリアム・マッカスキル著)だ。

本書では、世界の様々な問題を解決するために、どのような考え方でお金を使っていけばいいのか、そして仕事を選んでいけばいいのか、ということについて、科学的な知見を元に分析と解説がされている。

こうした行為を、マッカスキル氏は「効果的な利他主義」という言葉を使って表現しているが、効果的かどうかを判断する際の指標として、5つの視点が紹介されている。

1.何人がどれくらいの利益を得るか
2.これはあなたにできる最も効果的な活動か
3.この分野は見過ごされているか
4.この行動を取らなければどうなるか
5.成功の確率は?成功した場合の見返りは

普段寄付を行う際に、これだけの要素を考えてお金を投じている人は少ないと思うが、いずれも極めて合理的な指標だと思う。

例えば、ある社会的な課題(例えば子供の貧困問題)があった時に、自分がその課題を解決する当事者として(例えばNPOのスタッフ等として)関わるのと、民間企業でバリバリ稼いで、そのお金を寄付するのとで、どちらがより社会的な影響を及ぼすことができるのか。

上記5つの指標を使って考えていけば、ある程度合理的な判断を下せるようになるかもしれない。

例えば、自分はその問題に対してすごく関心はあるものの、民間で働いた方が、より自分のスキルや能力を活かすことができるのであれば、NPOのスタッフとして関わるより、寄付を行った方がより良いインパクトを残すことができるかもしれないのだ。

この本には、キャリア形成についてのアドバイスも書かれていて、大卒でいきなり非営利セクターに身を投じるのも、選択肢の一つとして勿論ありだが、本人の持っている資質や置かれている環境によっては、まず営利企業でスキルを磨き、その収入の一部を寄付に充てるところから始めた方が、将来期待値は高そうだとのこと。

この辺り実感とも一致する。

私自身は大卒で非営利セクターに入ったが、やはり民間企業でのスキルセットは若い時に身に付けておくべきだと強く思う。

寄付先の選定からキャリア選択まで、科学的な考え方によって、自分にとってより良い選択ができ、、社会にも良い影響を与えることができる。そんな可能性について考えさせてくれる一冊だ。



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