⑥独学で仲間達と宇多田ヒカルのバックダンサーなった物語(全6話)

ダンスへ感謝!ライブ本番当日の武道館

そして、本番当日を迎えた。

九段下駅はすでに人がザワザワしており、ゲネプロとは違う熱気。
武道館に向かいながら思う。

「このほとんどが今日のお客さんなんだろうな」

入口付近も人でワサワサしていた。
裏の関係者口から入るのだが、スタッフのピリピリ具合を感じ本番ムードが高まってくる。

それにも増して、今日は海外から大物アーティスト2組も来ている。
セキュリティーのデカイ黒人ともすれ違う。

裏の通路にはケータリング(フードサービス)も用意されていた。
メンバーと合流後、少し腹ごしらえをしつつ、

「食べ終わったらメイク室へヒカルちゃんに会いに行こう!」

メンバーでそういう話になった。
前回の交流タイムの失敗を取り戻すのと、お互いの緊張をほぐす目的もあった。


ご飯を食べ終え、彼女の元へ挨拶に向かった。
実は実質これが2回目の直接コンタクトで、あの交流タイム以降はその機会がなかった。

本人はメイク中だった。
スタッフに中へ入る許可をもらい中へ…。

今日ばかりはさすがに本人も少し打ち解けており、初対面の時より心を開いている感じ。

だが、未だ心を開く事ができてない自分達も歯がゆい。
あわよくば、「お友達として連絡先も!」
という気持ちもあったのだが、そんな空気では

全く!全然!ない。

長居しても悪いので、切りの良いとこで早々と部屋を出る。

しかし、本番までの待機時間は長い。
振り付けの確認もするが時間にはまだ余裕がある。

武道館の中を探索。
客の並びを見に行く。
海外アーティストの控え室をチェック。

まるで小学生の工場見学のような感じ。
しかし刻々と本番の時間が迫ってくる・・・。


本番30分前。
さすがにドキドキしてきた。


チラッと観客席を覗くが暗くて観客の顔は見えない。
しかし、席は満席。そのザワザワ感は裏まで伝わってくる。

初めて味わうこの空気感、高揚感。

ダンスが上手いからここに立てた?

いや違う。

自分達がこのライブに立てるのは、Mさんのイベントに出たことがきっかけ。

このメンバーと出会い、活動ができたおかげ。
そこでいい関係性が生まれなければ、別のダンサーがここにいたはずだ。

そう、これは人と人がつないだ結果なのだ。
感謝!感謝!


ライブで気をつける個人的な課題

自分は今回のライブで注意点(課題)が1つあった。
それは…

【息が上がらないようにすること】

これ当たり前だけど非常に重要。

長めのショータイムでさえ後半は息が切れる。
息が上がるとパフォーマンスが激減してしまう。
特に当時の自分は調子に乗ってペースを崩すことが多く、それが後半のパフォーマンスを落としていた。

スポーツ全般でいえるこのペース配分。
勝敗を分ける重要な意識である。
それはダンスでも同じ。
この経験と意識は若いながら凄く勉強になった。

そして、ライブに向けて意識を集中していた。


…15分前

…5分前

…はい、キタ本番!


ステージ裏で宇多田ヒカル・バンドメンバー・僕らは待機していた。
そして、みんなで声出し!
会場の照明が一気に落ちて暗転。


「わぁああああああああ!」


叫びに近い歓声が上がった!
歓声が武道館を揺らした。

それはそうだ、今日来ているお客さんも初めて宇多田ヒカルの生歌を聴く瞬間である。
こちらもその空気にテンションMAX状態。

そして本番の武道館のステージへ!

ダンサーとしての本気!武道館の本気!

ステージに上がったとたん、えらい光景が広がっていた。
それは想像を越えた光景だった。

ゲネプロとは全く異質!
それはホタル(ペンライト)が客席を包んでいる光景だった。

「・・・こんなにも変わるか…」

満員の武道館の本気を...みた!


このライブはテレビクルーも入っており全国が注目をしているライブ。

「下手なことはできない!」

というプレッシャーは特になく(ないんかい)、全力で楽しめた。
ライブはトラブルもなく順調に進行していく。
体力のペース配分も大丈夫!
ダンスもしっかり踊れている。

そして、ラストに近いライブ後半。
それは・・・


キタ!


曲の間奏で客をあおるフリータイムがあったのだが、ここでリハーサルにないアクションを起こした。

自分は宇多田ヒカルに近付き、おもむろに
ハイタッチ!からの肩組み!!

それは無意識だった。
完全なるテンションによる行動だった。

本人は少しビビっていたw

「えっ...!」

声は聞こえなかったが、引きつった笑顔で対応してくれた。

打ち合わせもなくありがとう!

そんな気持ちは今でも忘れない。

そのハイタッチは、テレビカメラにも抜かれており個人的なベストショットを残すことになる。
こうして大きな仕事と共に傷跡を残してライブは終了した。


海外アーティストの本気。ダンサーの本気。

そして、忘れてはいけない海外アーティストのライブ。
この衝撃を僕は忘れない。

海外アーティストの順番は宇多田ヒカルの後、実質そちらがメインという位置づけ。
このライブ、実は爽健美茶抽選の「無料招待ライブ」であった。
なんとも太っ腹な企画じゃないか。

残念ながら海外アーティストのリハーサルは観ることができなかった。
なので、どんなライブをするのか分からなかったし、さらに自分は海外アーティストライブが初体験。
本場のパフォーマンスはいかほどか興味があった。

自分達は本番の大きな仕事が終わったので、緊張も解け海外アーティストを観るために意気揚々と客席へ向かった。
その時点では、自分達としては”そこそこいい仕事”をしたと思っていた…。

そう、本場のパフォーマンスを観るまでは….







外人.....ヤバいwwww


衝撃というより、自分の仕事はなんだったんだ。
そんな気持ちにさせられた。

今思えば当たり前なのだが、
「これぞバックダンサー!」
というクオリティーだったのである。

衣装もバッチリ揃っている!
ダンスも振り付けもかっこいい!
身体の作りもバッチリ!動きキレッキレ!

「あらら・・・」
「とほほ・・・」

最後の最後で、この感じ…。
調子に乗っていた自分が恥ずかしくなってきた。
いや、スタッフ&メンバー全員がそう感じたはずだ。

…何を比べても勝てる要素がない。
いきなり現実に引き戻された瞬間。


「だからあれほど…。」


当時の自分らを誤魔化せるアイテムは「衣装」しかなかった。
その衣装さえも戦力不足の「私服」とは...。

いまごろ宇多田のパパさんも後悔しているであろう。
衣装が私服のリハ着であったことを……。


アフターパーティーで海外ダンサーと交流

そして、ライブ終了後。

ホテルでアフターパーティーが開催された。
そこには、関係者スタッフ、海外アーティスト、ダンサーも全員参加していた。

お酒もすすみ、海外ダンサーとの交流チャンスが訪れる。
挨拶をしようと顔を合わせるやいなや、

【Goodパフォーマンス!】

外人特有のあのノリで声をかけられ先手を取られた。

「コミュニケーションでさえも負けた…。」

踏んだり蹴ったりである。

「全然グッドじゃねーよ」

心では思いつつも、

「サ、サンキュ~(笑)」

と、引きつり笑いで対応。

人生初の大きな仕事は「甘く苦いフレーバー」で終了。

最後で自分達の未熟さを知った。
自分はこれを機に「身体ぐらいは変えよう」と意識を変え、筋トレをスタートさせた。

今では逆に、あの挫折へありがとうと言いたい。


生きていれば負けた!と思うタイミングがある。
勉強でも、恋愛でも、仕事でも。

負けることがダメなのではない。
負けたあとに何をするのか?

これが大事なんだよね。


このバックダンサーの仕事がきっかけで、あの人気長寿音楽バラエティー番組「THE・夜もヒッパレ!」のレギュラー出演オファーにつながるのであった。

…FIN


今回バックダンサーのギャラはいくら?

これ気になるよねぇ。

通常バックダンサーにはリハ代というのもある。

この仕事も、もちろんあった気がするけど、まとめてもらったのでリハ代がいくらなのかは不明。

さらに20年前の仕事なのでダンスに対しての対価も判断しにくい。

ということで簡単な金額は...


有料記事で!


ということは無く、新卒初任給より少し高いぐらいだったかな。

細かい金額は忘れてしまった。

ツアーでもなく、1ライブでしかも3〜40分ライブでいうとしっかりもらえた感じはある。

何より金額以上のプライスレスな体験が1番だよね。


では、長いストーリー読んでくれてありがとう!
誤字、脱字の乱文で申し訳無いです。

あなたにも幸あれ。

▪️運営ブログ : ダンサーズクエスチョン

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