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DXの8割は情熱だと思います。

DXという言葉の原点と言われる、2004年にErik Stoltermanが公開した論文Information Technology and the Good LifeでDigital Transformation (DX)は一部抜粋で、以下のように触れられています。

“The digital transformation can be understood as the changes that the digital technology causes or influences in all aspects of human life.”

その後、省庁や調査会社が様々なそれぞれの解釈で定義を発表をしてきています。

今日本でいわれているDXは近視眼?
発案者エリック・ストルターマン氏の定義から
本当のDXについて考える!

プラットフォーム化、プロセス変革、競争優位性のようなビジネス的論点だったり、それを実現するデジタル人材の論点だったり、比較的「やり方」における解釈や定義、そこからの議論が多いように思えます。

実効性や手法論も非常に重要だと思うのですが、私はDXの8割は情熱だと思ってます。

情熱があれば、既に覚悟はあり、内発的動機からチームワークや一体感は必要であり、情熱があればできないことはない。

DXではIT化、プラットフォームビジネス、ネットワーク効果、AI活用、デジタルマーケティング、顧客データ、アプリビジネス、そういった見えやすいデジタルが活用された施策や事象が議論のほとんどです。

社内での対話、潜在的に感じている想い、過去からのルール、組織構造、空気や雰囲気、見えない壁等、このようなことも非常大切な要素かと思ってます。

多くの人の1日のうち、1番時間を使ってるのか仕事なので、そこに情熱があればそれだけ時間があるわけなので色々なことができますし、個人的には仕事を楽しめなければ人生損している感覚を持ちます。

老舗企業がDXを必要とするケースが多いですが、老舗企業は過去に工場などの大きな投資や決断をしてきたり、時代の最新技術を活用してきたり、その時代の技術や生活者に適した決断や変革をしてきた会社がたくさんあります。そして、高度な研究や士業など難易度の高い国家試験を合格したような優秀な人材を含む組織で、大きな事業を成功してきた会社ばかりです。

デジタルにおいては最年少プログラマーは6歳から、最年長で87歳など、つまり誰でもデジタル人材になれます。インターネットで調べて、学習し、パソコンやスマートフォンとインターネットがあれば様々なことができる時代になりましたし、最近注目のChatGPTなどのGenerative AI (GenAI) の操作も作業的には今すぐにできます。インターネットを発明した人はすごいですが、デジタル人材は何か特殊人材でも稀有でもないと思ってます。士業のように何年も勉強して、国家資格を取得したり、新薬開発の研究開発者の一人前になるために10年以上コツコツと研究をして実力や実績をつけたり、そういった何年もの努力や厳格な資格など取得した職種と比べると、デジタルは誰でも、いつでも、専門職種になれるということです。

人もそうですし、会社においても創業数年くらいのスタートアップ企業がスマートフォンのアプリケーションやWEBサービスで数十億円の売上のサービスを提供しているのにも関わらず、なぜ大手企業で数年でできないのか。

また、DXをしないと会社やビジネスがなくなる、とか、危機感醸成のような話も聞きますが、実際にそういったシチュエーションの会社があるのは事実でもあり、危機的状況の時に人や組織の能力が試される局面もありますが、多くの人はワクワクしていたり、情熱が漲っていた方が組織力やポテンシャルを発揮できると、あくまで持論ですが、そう思ってます。

CDO(Chief Digital Officer)の私が言うのも違和感を持たれる方もいるかもしれませんが、つまりDXは情熱だと思います。組織創りや経営そのものに極めて近いと思ってます。

私はDXや組織の変革期で大事なことの一つとして、システムシンキングの氷山モデル(Iceberg Model)のような構造や視点が大切だと思ってます。システムシンキングとは「複雑な状況の中で、視野を広げて、様々な事象のつながりや背景にある構造・影響関係への理解を深めながら、より根本的・本質的な問題解決に向けたレバレッジ(手の打ちどころ)に働きかける思考のあり方」

一般的なシステムシンキングだと以下のような氷山モデル(Iceberg Model)で語られることが多いです。

氷山モデル(Iceberg Model) - System Thinking

この図から言えることは、表面に見えている1-2割のEvent(事象)に対してReact(反応)する。氷山の下の方には8-9割を占めるMental Model(誰もが自覚なしに持っている価値観、思い込み。個人の実世界に対する認識や解釈に関する認知)があり、Transform(変革)領域という図になります。

昨今DXと言われてる現象を氷山モデル(Iceberg Model)にすると、あくまで私見ですが、以下のようなイメージです。

氷山モデル(Iceberg Model) - DXバージョン

海面を境に、海上と水面下にある項目の種類が異なると思います。
海上にあるような1-2割の種類ばかりの会話をしていても、水面下にあるような8-9割の事柄におけるイシューの特定していったり、ほぐしたり、変えていかないと組織や会社は簡単には変わらないものです。水面下にあるからといってネガティブなものだけではなく、ちゃんと潜水するとポジティブなことがたくさんあったりします。AI活用やデジタル人材採用・育成はやろうと思えば今日からできますが、海底にあるような事柄は過去から長く蓄積されたもの、簡単に顕在化しないものも多く、短期的な成果やアウトプットにはならないものが多いですし、そもそも対話や信頼関係を構築して時間をかけるべきもの・時間がかかるものも多いです。あえて急ぎすぎない方が良いこともあると思ってます。

水面下に行けば行くほど冷たいですし、氷山は氷なので、やっぱり情熱が必要なんですよね。

小林製薬に入社して3ヶ月、状況把握がだいぶ進みましたので、先週は月曜に全社の部長以上を集めて「CDOユニット及びDXの現状報告と今度の活動方針」についてそれなりの時間を確保させてもらい丁寧に説明と質疑応答の時間をもらいました。グループ会社含む全社の部長以上が一堂に会するのはなかなか無い機会ですので、貴重な時間を価値のあるものにしたく、かなり集中しました。同週には取締役会で社外取締役含め、初めての報告もしました。多様な経験の社外取締役・社外監査役陣なので、的確は質問、ありがたい助言やコメントも多くもらいました。

説明会後のアンケートもほぼ全員が回答いただき、一つ一つの回答やコメント含め全てに目を通しまして、匿名性を持たせる形で、以下アンケートでの声を一部抜粋です。

  • 昨日のご説明は中間報告との事で、具体性に欠ける部分ももちろんあったと思いますが、石戸さんの決意がハッキリと感じられました。スタートアップ企業に出来て老舗企業に出来ないはずはない/デジタルの仕事をするなら小林製薬と言われるようにするなど、少なくとも私は洗脳されました。

  • 石戸さんが入社された事で「小林製薬のこんなところが全然できてないぞ!」みたいなことがもっとたくさん語られると思っていたし期待していましたが、改めて強みに目を向けて頂いている点が素晴らしいと素直に感じました。ずっと中にいると「強みは十分理解しており、現状否定できないから変革できない」と思っていましたが強みに目を向けて伸ばす事も重要と再認識しました。今回のプレゼンを聞いて、勿論ビジョンあっての事ですが、しっかり現状否定するフェーズもこの後にくると感じました。そこが本当の変革ポイントかなと感じております。

  • 協力して変えて行きましょう。よろしくお願い致します。

  • 今後、採用を増やす予定だと思いますが、関西在住者だけでなく東京や地方、場合によっては海外の方の採用をDXだけでなく多角的な視点からも検討頂ければと思います。

  • 質疑応答の回答を聞くだけでも石戸さんの理解の幅はかなり広いと感じました。下に合わせるのではなく最先端の人に合わせて早く一つ成功例を出してください。期待しています。

  • 何事も前向きに受け止める。変化を楽しむ

  • ご入社されて、短期間で点在している詳細活動をとても整理していただき、現場の我々にとっても網羅的に現状把握をすることができました。とても感謝しております。また今後の方針からDX改革への期待値も高めることができ、ぜひ、何らかの活動においてご一緒できればと思っています

  • 全体として、会社全体でのDX化が加速されるような気運を感じワクワクしました。ありがとうございました。

  • 沢山の困難があると思いますが、執念でずっとやり続けていくことが重要だと思います。当本部においては、自分も含めて意識の改革が重要だと思います。どんどん気付きを与えていただけることを期待しております。宜しくお願い致します。

  • とにかくワクワクしています。当部でも、どのようなことができそうかアイデア会議を実施したいです。

  • すばらしいプレゼンテーションに感銘を受けました。

  • 石戸さんの思考整理と、言葉の選択が、情熱と共に伝わってくるので多くの人の心をとらえるのだと思い、本日もさらに尊敬の念を深めました。また、IT化にとどまることを心配していたこれまでと違い、本当のDXを進めていただけることがわかり、楽しみです。

こういった声が何よりも活力になりますし、一体感を生んでいくものだと思ってます。

具体性、定量性、実際の成果、これからなところはたくさんあります。
ただ、情熱が無いと組織のスイッチは入りませんし、乗り越えられません。むしろ、情熱があれば、何でもできると思います。

以下は13年前に出会った映像です。過去組織の変革期や立ち上げ期で、この動画を何度も見て、自身を鼓舞してきました。

テレク・シヴァ-ズが社会運動について上記のTED動画、以下日本語でも解説があります。

最初は不思議に思われる事、伝わらない事、やっていく中で困難も多くあると思いますが、信念を持って、ムーブメントを起こしていきたいと思います。

3年で関西でデジタルの仕事をするのなら小林製薬という状態、2030年にはメーカーでデジタルの仕事するなら小林製薬という状態を個人的には目指してます。

これからの小林製薬の変革を乞うご期待ください。
そして、変革期の小林製薬では、DXに必要となる各種職種を採用募集していますので、気軽にご連絡ください。


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