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地方エンジニアの採用事情

ここ数年、地方支社を増やすIT企業が増えています。
沖縄でも、株式会社カヤックの第2本社設立・freee株式会社の拠点設立など首都圏を中心に展開していた企業が進出する事例が相次いでいます。
そこで、弊社での事例を踏まえ地方でのエンジニア採用事情について記しました!
沖縄やその他地方でのエンジニア採用を行う企業様の参考になれば幸いです。

ライタープロフィール
https://kanbo.tooon.site/

はじめに

  • この記事では主に地方のエンジニア採用について書いていきますが、弊社がPHPエンジニア中心に採用してきたので、その視点も入っています。

    • Rubyエンジニアなどの場合はまた少し状況が違うかもしれません。

  • 地方企業もしくは、地方支社を出しており、現地採用を検討している方へ向けて書いていきます。

  • ここでは、地方=沖縄として書かせて頂きます。

  • 沖縄は他の地域と比べても地元愛が強い方なので、その点は全ての地域には当てはまらない点もあると思います。

  • 個人の主観も入っています。

株式会社カヤック 沖縄第2本社設立の記事
https://www.kayac.com/news/2024/02/okinawaoffice

freee株式会社 沖縄拠点立ち上げメンバーインタビュー記事
https://www.jobantenna.jp/picks/045/

結論

①コロナ禍を機に地方の採用市場は大きく変化した。
コロナ禍で東京企業の全国採用が加速する中で地方でのエンジニア採用は難易度が上がっている。地方でも給与水準が上がってきており、やりがいを重視するエンジニアが増えていると考えられます。また、エンジニアの給料が高いのは当たり前の時代になってきています。

②地方でエンジニア採用をするには地域貢献できるようなやりがいのある仕事を提供するのが一つの訴求ポイントとなります。

1.エンジニアの採用市場の変化

1.1 中途エンジニアの分類

まずエンジニアの分類としては、大きくやりがいと条件を重視するエンジニアに分かれると思っています。ただ、最近はやりがいも条件も重視する人も増えてきている印象です。

中途エンジニアの分布図
  • 中途エンジニアの4つの分類

    1. 転職媒体を使う層(やりがい重視)

    2. 転職媒体を使う層(条件重視)

    3. 転職媒体を使わない層(やりがい重視)

    4. 転職媒体を使わない層(条件重視)

各分類の詳細(主観も入っています)

私もそうでしたが、積極的にエンジニアコミュニティや勉強会に参加している層のエンジニアはあまり求人媒体を使わない傾向にあると思います。理由としては、コミュニティ内での繋がりで転職や仕事受注ができるからです。その方がリファラルに近い形になるので、実際、ミスマッチが少なかったです。また、こういった層のエンジニアは勉強熱心で比較的優秀な方が多く、転職媒体を使わなくても声がかかると言うのもあると思います。

1.2 東京のエンジニア採用市場の移り変わり

昔は給料や労働環境にばらつきがあり、就職活動では3K(「キツイ」「帰れない」「給料が安い」)の仕事とも言われることがありましたが、エンジニア不足により、企業側の大幅な待遇改善があり、今では高待遇でホワイトな企業が当たり前になってきました。また、近年では高給取りが増えた中でさらにやりがいも求めるエンジニアが増えている印象で、さらにエンジニア採用の難易度が上がっていると思います。

東京のエンジニア採用市場の移り変わり図

例えば、東京ではスタートアップへの転職が急増しています。
スタートアップ184社で働く方の平均年収は、上場企業の平均給与よりも高く、直近その差はどんどん拡大。現在は10%程度スタートアップの方が平均給与が高くなっている。
こういったことを背景として、大企業からやりがいを求めてスタートアップへの転職も急増しています。
※参考:JVCA

スタートアップにおける待遇、転職数

1.3 沖縄のエンジニア採用市場の移り変わり

沖縄もだいたいは東京と同じ流れをたどっている印象ですが、5年ほど遅れている印象です。特に分岐点となったのはコロナ禍で東京の会社が日本全国リモートで採用を始めたことによって、沖縄のエンジニアの待遇も大きく見直された印象です。それまでは基本的には地方にいる優秀層のエンジニアは現地企業では、給料が合わずフリーランスになるくらいしか選択肢がありませんでした。けれど、コロナ禍でその前提が変わりました。
正直なところ、私の会社もコロナ前の方が応募数が多かったですし、沖縄の優秀層のエンジニアを採用しやすかったです。これからは地方企業は東京の優良企業との差別化や同等の賃上げが求められてくると思います。

沖縄のエンジニア採用市場の移り変わり図

2.地方で働きたいエンジニアにおけるやりがいとは?

それでは、地方企業が県外企業との差別化をしていくにあたって、どうすれば良いのでしょうか?私が考えている差別化ポイントとしては、独自のやりがいを提供していくのが良いと思っています。

沖縄のエンジニアにおけるやりがいに関しては、大きくは下記が大きいのではないかと思っています。
その中でも地元愛が強い人には、地方に貢献できる事業に携わりたいというのは大きいと思います。

・地方で働きたいエンジニアにとってのやりがい
①キャリアアップに繋がる仕事をやりたい
②地方に貢献できる事業に携わりたい
③自分の好きなプロダクトにコミットしたい

3.地方ではエンジニア採用はどうするべきか?

3.1 地方に即戦力エンジニアはどれだけいるのか?

※即戦力の定義は?
・Webアプリケーションの開発経験が3年以上ある。
・PHPフレームワークを使った実務経験が3年以上ある。
・可読性・保守性のあるコードが書ける。
・与えられたタスクに対してある程度、自走してタスクをこなせる。
・仕様を正確に理解して、実装・設計することができる。

3.2 地方でスカウト媒体を使って即戦力のエンジニアは採用できるのか?

結論としてはあまり採用できませんでした。
理由としては、即戦力となり得るエンジニアが330人しか沖縄に存在していない中で更に求職中且つPHPエンジニアはごく僅かになってしまうというのがあります。
※弊社ではPHP/Laravelができる中途エンジニアの採用が中心でした。

3.3 どの層を狙うべきか?

ここでは、地方で採用のターゲットになり得る層を列挙します。
・エンジニアの分類、オススメ度(5段階評価)
①地方在住の新卒(大卒理系学部、高専卒、プログラミング経験者)
⭐️⭐️⭐️⭐️
②地方在住IT企業ジュニア層のエンジニア(第二新卒)
⭐️⭐️⭐️⭐️⭐️
③地方在住のIT企業ミドル〜ベテラン層のエンジニア(20代後半〜30代)
⭐️⭐️⭐️
④県外在住のIT企業ミドル〜ベテラン層のエンジニア(20代後半〜30代)※UIターン狙い
⭐️⭐️⭐️⭐️
⑤地方在住のIT企業ベテラン層のエンジニア(40代)
⭐️
⑥県外在住のIT企業ベテラン層のエンジニア(40代)※UIターン狙い
⭐️⭐️
⑦地方在住のフリーランスエンジニア(移住者)
⭐️⭐️
⑧地方在住のフリーランスエンジニア(地方出身)
⭐️⭐️⭐️

この中で言うと、弊社の採用実績は下記です。

①:2名
②:8名
③:1名
④:1名
⑤:0名
⑥:0名
⑦:0名
⑧:0名

私の考えとしては、実務未経験者、中途(第二新卒)、やりがい重視の中途エンジニアの層が良いと思います。上記の分類で言うと、①、②、④が良いと思っています。
また、ここでの採用企業の前提としては下記の条件の想定で書かせて頂きます。

前提
・地方企業もしくは、地方支社を出している企業
・Web系の企業
・まだメルカリやサイバーエージェントほどの採用ブランディングは無い企業
・現地での採用を目指している企業(UIターンも含む)
・大手企業ほどは給料を出せない企業
・地方でのエンジニア採用に苦戦している

では、それぞれの理由を説明していきます。

①地方在住の新卒(大卒理系学部、高専卒、プログラミング経験者)
地方では優秀な理系の大学や高専などがある地域もあります。彼らの中には地元で働きたいが、キャリアや給料を考えるとやむを得ず、県外企業に就職する人もいます。また、新卒からいきなりフルリモートで採用してくれる企業も少ないので、県外に出るしかないという事情もあると思います。
実際、沖縄の学生と話した際に上記のような事情で県外就職した人はいました。仮に東京で就職した場合に年収400~500万円もらえるレベルの人が沖縄で就職すると260〜300万円ほどしかもらえないケースもあります。
ただ、注意点としては一度も県外で働いた事ない人は一度は都会で働いてみたいという理由で転職する人も一定数います。

②地方在住IT企業ジュニア層のエンジニア(第二新卒)
この層は実際、弊社でも採用する事が多かったです。理由としては、沖縄は他の地方と比べても比較的、IT企業が多く、エンジニア職として働いている人が多いです。ただ、沖縄では下請け企業や保守運用しかしていない企業、下請けSES企業が多いのが現状です。こういった方々は職種としてはエンジニアなのですが、全くコードが書けない人もざらにいます。私も沖縄で何十人面接してきましたが、実際にそういった方々にお会いしたことがあります。
これはその人達が悪いのではなく、沖縄のIT業界の構造が良くないと思っています。まだまだ沖縄をニアショア拠点として考えている県外の経営者も多く、そういった構造がスキルアップできないエンジニアを生み出してしまっていると思います。
こういった層の中には会社で燻っているだけで、本当は優秀な人も多いです。実際、弊社でもとても活躍してる人が多いです。また、採用側のメリットとしては、エンジニア未経験の人よりはプログラミングの適正は保証されているので、そういった面でも採用のリスクは軽減されると思います。

③地方在住のIT企業ミドル〜ベテラン層のエンジニア(20代後半〜30代)
こちらの層は地方企業且つ、保守運用など下請け企業で働いている人を想定しています。もちろん、バリバリのスタートアップで活躍されている人もいるのですが、ごく一部に過ぎず、採用難易度が高すぎるので、ここでは省いています。
あまりオススメしていない理由としては、地方企業でそれなりに給料は上がってきているが、長らく保守運用業務や簡単な業務などに慣れてしまっている状態だと採用側からすると採用がしづらい面があるからです。もちろん、優秀な人もいますが、会社としてはコードが書けない人を採用する場合はもちろん、給料を低めに設定せざるを得ないです。また、研修を数ヶ月しないといけないので、会社としてはそれなりに負担があります。その中で仮に30代となると結婚してお子さんもいらっしゃる人も多いです。その場合、少なからず家庭にも負担がかかってしまいます。そうなるとお互いに不幸になるケースが出てしまうかなと思っています。例えば、私が関わっていたプログラミングスクールでも思い切って仕事を辞めて転職を試みた人がいましたが、なかなか転職先で上手くいかず、路頭に迷っている人もいました。

④県外在住のIT企業ミドル〜ベテラン層のエンジニア(20代後半〜30代)
この層は県外企業でバリバリコードを書いている優秀層を想定しています。
また、地方出身であったり、何かしら地方に興味を持っている人を想定しています。この年代であれば、まだ子供がいなければ移住も可能な範囲かなと思っています。実際に私も20代後半で沖縄に移住しました。
こういった方々にはどのようなポイントが刺さるのかというと、前の章でも書きましたが、地方に貢献できる事業に携わりたいというのが強かったです。実際に私が沖縄にUIターンをしたいエンジニア向けの転職イベント(下記リンク参照)に参加したところ、そういった人が多かったです。
求職者に聞かれた質問としては、「沖縄に貢献できるビジネスをやっているんですか?」「沖縄の人を雇用しているんですか?」「ずっと本社は沖縄でやるんですか?」などその会社の地域貢献度を測るような質問が多かったです。

なので、こういった求職者には地域に根ざしたビジネスで自社プロダクトを持っている会社は強いなと思いました。わかりやすい例を挙げるとしたら、沖縄で運転代行のアプリを運営しているアルパカラボさんは沖縄の運転代行の課題を解決しており、イメージしやすいと思います。

ただ、この層は油の乗った売り手の層で「1.1 中途エンジニアの分類」で紹介した分類で言うと、「③転職媒体を使わない層(やりがい重視)」に当てはまると思います。なので、地道に勉強会や技術ブログを書くなどしてアプローチしていく必要があると思います。

⑤地方在住のIT企業ベテラン層のエンジニア(40代)
こちらの層は地方企業且つ、保守運用など下請け企業で働いている人を想定しています。もちろん、活躍されている人もいるのですが、仮にこの年齢でロースキルで未経験に近い人だとお互いにリスクがあるので、難しいかと思っています。

⑥県外在住のIT企業ベテラン層のエンジニア(40代)
この層は県外企業でバリバリコードを書いている優秀層を想定しています。
仮に優秀層だとしても、移住リスクが高過ぎるので、オススメ度は低くしてあります。例えば、私の知り合いでも子持ち夫婦で移住してきた人がいましたが、環境に適用するのが難しかったり、周りに親が住んでいないので、共働きで忙しい時に誰にも子供が預けられず困るというケースも見てきました。その方は結局、県外に帰ってしまいました。

⑦地方在住のフリーランスエンジニア(移住者)
この層は県外企業でバリバリ働いてから、移住してきたエンジニアを想定しています。このケースは地方企業では給料が低過ぎてフリーランスになったケースが多いと思っています。
こういった方々は沖縄に移住した理由にもよりますが、地域貢献などのやりがいを訴求するのも難しい印象なので、オススメ度はそこまで高くしていません。

⑧地方在住のフリーランスエンジニア(地方出身)
この層は県外企業でバリバリ働いてから、Uターンしてきたエンジニアを想定しています。このケースは地方企業で働きたいが、給料が低過ぎてしょうがなくフリーランスになった人を想定しています。
実際に沖縄でこういったステータスの方と面接した事がありますが、ある程度、給料は減っても良いから、沖縄に住んでいる以上は沖縄に貢献できる仕事をしたいと言っていました。せっかく、沖縄に帰ってきたのに東京の仕事だけをやることに物足りなさを感じているともおっしゃっていました。

まとめ

①コロナ禍を機に地方の採用市場は大きく変化しました。
コロナ禍で東京企業の全国採用が加速する中で地方でのエンジニア採用は難易度が上がっている。地方でも給与水準が上がってきており、やりがいを重視するエンジニアが増えていると考えられる。また、エンジニアの給料が高いのは当たり前の時代になってきている。沖縄の事例を中心に書いていきましたが、他の地方の採用担当者と話していても共通点は多いかなと感じています。

②地方でエンジニア採用をするには地域貢献できるようなやりがいのある仕事を提供するのが一つの訴求ポイントとなります。

P.S

未経験の層をそんなに採用してちゃんと会社が回るのか?という疑問を持たれた方もいるかもしれませんが、弊社では下記のような社内研修やインターンの制度を整えています。この辺りの詳細はまた別の記事で書ければと思います。

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