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海外PR動向レポート2022年11月:アディダスがカニエ・ウェストと提携解消、従業員の投稿が企業の宣伝に貢献、Twitterアクティブユーザーが減少

マーケティングやPR/広報の、最新トレンドをキャッチするためには、海外のニュースにアンテナを立てて、新たなレポートなどを情報収集することが役立ちます。
海外動向PR動向レポートでは、著者が気になったPR関連の海外ニュースをピックアップして、不定期にお届けしています。

アディダスがYeとパートナーシップ解消_純利益に2億4600万ドルの打撃

AP通信はアディダスが、反ユダヤ的な発言で物議を醸したラッパー、カニエ・ウェストとして知られるYe(イェ)とのパートナーシップを、解消したと報じました。Yeは既にTwitterやInstagramのアカウントが凍結されています。この決定によりアディダスは、今年の純利益に2億4600万ドルの打撃を受けると予想しています。

「アディダスは、反ユダヤ主義やその他のあらゆる種類のヘイトスピーチを許さない」と声明を発表し、"Yeの最近のコメントと行動は、受け入れがたい、憎しみに満ちた危険なものであり、多様性と包括性、相互尊重と公平性という会社の価値観に違反しています。"とコメントしました。

アディダスは遅ればせながら、Gap、バレンシアガ、そしてYeの所属しているタレント事務所であるCAAとともに、彼との関係を断ち切りました。今回の決定は、アディダスに与える経済的影響は相当なものになりましたが、最終的には正しいことをしたと評価されました。一方で”行動を起こすのに時間がかかりすぎた”と一部、批判的な声も上がりました。

現代はすべてが一瞬で終わる時代です。そのため、インフルエンサーと仕事をする時には、企業が直面する潜在的なリスクを認識する必要があります。企業は引き続き、起用したインフルエンサーの発言に対して、より一層迅速な対応が求められるようになるでしょう。そのためには、私たちコミュニケーション担当者が、クライアントにしっかりとした準備をさせる必要があります。
企業が自分たちが何者で、何を支持し、何を許し、何を許さないかについてまとめ、明確な方向性を示し、その上で「誰とパートナーシップを組みたいのか?」「それは使命や価値観と一致しているのか?」といった対話を、事件が起こるよりずっと前にはじめることが重要です。

社員の力が強力なアドボカシーを生み出す

ソーシャルメディアは新しいプラットフォームが続々と現れ、アルゴリズムが変化し、多くの人々が参加してその規模を拡大させています。

一方、投稿のリーチとエンゲージメントを高めることは、プラットフォームに関係なく、複雑になってきています。例えば、Instagramのオーガニックリーチは2021年から2022年にかけて29%減少しています。

ソフトウェア会社のSprout Socialが、米国のマーケッター1,110人を対象に調査したレポートによると、ソーシャルメディアの利用するユーザーの3分の2(66%)が2年前よりソーシャルに費やす時間が増えており、エンゲージド・ユーザー(1日に1時間以上ソーシャルメディアに時間を費やすユーザー)の78%は、過去2年間で閲覧時間が増加しています。

この調査により、エンゲージド・ユーザーは、会社に関する投稿を重要視する傾向が11%もあり、社員が会社について個人のソーシャルメディアに投稿すれば、その投稿はより多くのオーディエンスに届くということがわかりました。

そして、社員の動機づけの手法として、ギフトカードや賞品などの金銭的なインセンティブが有効としています。また、仕事のやりがいや、会社への誇りなどと言った、ソフトなインセンティブも効果的です。

ソーシャルがビジネス的価値に与える影響は既に周知の通りですが、私たちの生活にソーシャルメディアが浸透するにつれ、企業はマーケティングから研究開発、カスタマーケアまで、あらゆる場面でソーシャルメディアを活用するようになりました。同時に、従来のコミュニケーション戦略の多くは変化が求められるようになっているので、情報のアップデートが必要だと考えます。

Twitterアクティブユーザーが減少

イーロン・マスク氏がTwitterの買収を完了させました。

Twitter app is seen on a smartphone in this illustration taken, July 13, 2021. REUTERS/Dado Ruvic/Illustration

ロイターの調査によると、Twitterの内部レポートでは、アクティブユーザーが減少しており、引き留めるに苦労しているようです。

Twitterの研究者は、週に6~7日にログインし、週に3~4回程度ツイートする人と定義される「ヘビーツイーター」は、月間全体ユーザーの10%未満だが、全ツイートの90%と世界収益の半分を生み出しているとしています。報告書では、ヘビーユーザーは、パンデミックが始まって以来、「絶対的に減少」していると付け加えています。

このレポートは、イーロン・マスク氏による買収の中で、アクティブユーザー数に関する利用方法に、新たな問題を提起しています。


参照:
・”Learn from Adidas’ PR mistakes with Ye
・”The Power of Employees: Predicting the Best Outcomes for Brand Advocacy
・”Exclusive: Twitter is losing its most active users, internal documents show

【書いた人】
大杉 春子/コミュニケーション戦略アドバイザー

民間企業・地方自治体・省庁などのパートナーとして、PR戦略の策定から広報物の制作監修まで支援。コミュニケーション戦略における「攻め」と「守り」の両軸から経営広報の施策をサポート。2020年に専門家らとともに、日本リスクコミュニケーション協会を設立し、リスク管理から危機管理広報までを網羅した、リスクコミュニケーション人材の育成を展開する。

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