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ベンゾジアゼピンの離脱症状_05_腹部の自律神経症状_嘔気・嘔吐・尿意切迫・頻尿・失禁・排尿困難・下痢・便秘・腹部の不快感・腹痛_自律神経に関連する症状04

(この記事の内容は、私の知識と経験に基づく個人的な考察と症状の記録であり、何らかの実験・研究・論文等に基づくものではありません。ベンゾジアゼピンの離脱症状を理解するための参考としてご覧いただけましたら幸いです。)

この記事では、私が経験した自律神経に関連する症状のうち、腹部に症状が出るものについて列挙していきたいと思います。


嘔気・嘔吐

脳には嘔吐中枢が存在し、この嘔吐中枢が刺激されると、自律神経と体性神経を介して、胃や食道の筋肉の収縮や弛緩、また横隔膜、腹筋などの収縮が起こり、嘔吐が生じます。嘔気(吐き気)は同様の刺激によって起こり、嘔吐運動には至らないものと考えられています。
 

嘔吐中枢への刺激の入力経路は下記の4つがあります。

1.       大脳皮質からの入力
悪臭や視覚情報(グロテスクな場面など)、精神的・感情的なストレスによる刺激が大脳皮質から嘔吐中枢に伝わる事によって嘔吐が誘発されます。

2.       化学受容器引金帯からの入力
脳には化学受容器引金帯と呼ばれる部位があり、血液の中を流れて脳に到達する薬物や毒素など様々な物質を感知しています。この部位から、嘔吐を誘発するような物質を検知したという信号が嘔吐中枢に伝えられる事で嘔吐が起こります。

3.       前庭器からの入力
前庭器とは耳の奥にあって、体の回転や傾きなどを検知する器官のことです。三半規管という言葉などをご存知の方も多いかと思いますが、三半規管は前庭器の一部です。この前庭器からの刺激が嘔吐中枢に伝わる事で嘔吐が生じます。目が回った時に吐き気がするのはこのためです。

4.       末梢からの入力
消化管やその他の腹部臓器、のどなどへの物理的・化学的な刺激は、自律神経を介して嘔吐中枢を刺激します。のどに指を突っ込んだり、食べ過ぎたり、悪い物を食べた時に吐き気がするのはこの仕組みによるものです。これが、嘔吐の原因としては一番理解しやすい機序かもしれません。
 
これら4つに加えて、腫瘍などによって脳内の圧力が上昇すると嘔吐中枢が直接刺激されて嘔吐を誘発することもあります。

ベンゾジアゼピンの離脱では、脳全体の神経の活動が過剰になるような状況にありますので、脳にある嘔吐中枢も過剰に活動しやすくなっている可能性があると言えます。
また、嘔吐中枢に伝わる情報をキャッチする化学受容器引金帯や、前庭器や体からの情報を伝える神経が過剰に興奮してしまう事もあり得ます。
さらに、自律神経が障害されていることで、胃腸の動きが異常になる事が嘔吐を誘発する原因になる場合もあると思われます。
 
私は毎日のように嘔気の症状が起こってとても苦しく、飲食もできなくなるので本当に困っているのですが、嘔気がこれだけ様々な理由で起こる事を考えてみると、頻度が高いのも致し方ないような気もします。

私の場合、嘔気・嘔吐はまったく何のきっかけも無く自然に始まることもありますが、体や頭の向きを変えた時にめまいを伴って起こることも多いですし、飲食がきっかけで嘔気が始まることもしばしばあります。

体調の悪い時や暑い時期などは、物を少し食べるだけで強い嘔気が起こってしまうことがあります。
特に体調の悪い時期は、水を一口飲んだだけで吐き気が起こり、自律神経発作(ベンゾジアゼピン性自律神経発作・パニック発作様の発作)にまで発展してどんどん悪化し、そこから一日中何も口にできず、立ち上がることも声を出すこともできないという日が続くこともあります。

胃に突然たくさんの物が入ると吐き気が起こりやすいので、なるべくゆっくりと少しずつ食べるようにしています。
普通の量の食事が食べられる体調の時でも、1回の食事に2~3時間以上かけたり、何回にも分けて少量ずつ食べたりしています。

冷たい物を食べても嘔気が出やすいので、常温にしてから食べるようにしています。体調の悪い時は温かい食べ物でも症状が出るので、これも冷ましてから食べています。

また、液体より固体の方が嘔気が起こりやすいので、体調が悪い時は固形物は食べられません。
液体よりもペースト状やゼリー状の物の方がさらに症状が起こりにくく、ゼリー状のものが一番最後まで食べられるように感じます。
ですので、ゼリー飲料や介護食などを利用して、少しでも食べられるように工夫しています。

嘔吐に関しては、まだベンゾジアゼピン離脱症候群だと気付いていない時期に、ベンゾジアゼピンを飲まない日が続いた後、一晩中嘔吐し続けるような症状が何度か出たことがあります。
お薬を内服した直後に嘔吐してしまうと、薬を吐き出してしまって体に入るお薬の量が一定に保てなくなるので、減薬中にそのような嘔吐が起こらなかったことが幸いだったなと思います。

尿意切迫・頻尿・失禁・排尿困難

尿は腎臓で作られて膀胱に溜まります。尿がある程度の量になったら膀胱がそれを感知し、神経を伝って脳に信号が送られることで尿意を感じます。尿意を感じると人はトイレに行き、膀胱から尿道という管を通って尿が体外に排泄される仕組みになっています。
尿を溜める時には、交感神経が働いて、膀胱を弛緩させて尿が溜まるための空間を作り、内尿道括約筋という尿道を閉じるための筋肉を収縮させて、尿が外に出ていくのを防ぎます。
尿を出す時には、副交感神経が働いて、膀胱を収縮させて尿を押し出すとともに、内尿道括約筋を弛緩させることで尿道が開いて尿が尿道に出ていきます。
尿道を閉じるための筋肉はもう一つあって、これを外尿道括約筋と言います。この外尿道括約筋は自律神経ではなく、体性神経という意図的な信号を体に送る神経によって調節されているため、腕や脚の筋肉のように自分の意思で収縮や弛緩をさせることができます。膀胱に尿がたまって自律神経が尿を外に出そうとしていても、この外尿道括約筋のおかげで、トイレに到着するまでの間は自分の意思で尿を止めておくことができるのです。
このように、尿を膀胱に溜めたり排尿をしたりすることは、自律神経・体性神経が複雑な働きをすることで成り立っています。
ベンゾジアゼピンによってこれらの神経の働きが障害されると、この絶妙な神経のバランスが保てなくなり、尿意を感じ過ぎたり感じられなかったり、膀胱に尿が溜められなくなったり、排尿ができなくなったりする現象が起こり得ます。

私の場合、尿意を感じる神経の回路に異常が生じたようで、とにかくずっとトイレに行きたい、吐き気がするほど激しい尿意が起こるという尿意切迫の状態になり、我慢できるような感覚では無いので、何度も何度もトイレに行くという頻尿の状態になりました。
トイレに行っても出るものは何も無いのに、尿意だけがずっと続いている状態の時もあります。

乗り物に乗れていた頃からこの症状はあったので、電車を途中で降りてトイレに行ったりしていました。
今も、受診などに行くときは、家を出る直前にトイレに行って、目的地についたらすぐにトイレに行って、目的が済んだらすぐにトイレに行って、家に帰ったらすぐにトイレに駆け込んでと、とにかく節目ごとにトイレに行くのですが、それでも途中でトイレに行きたくなって困るという感じです。
これも、外出が困難になる一つの原因になっています。

筋力低下や全身倦怠感の症状が強い時は、人に引っ張ってもらわないと布団から起き上がれなかったり、トイレまで支えてもらわないと行けなかったりするわけですが、この状態の時に尿意切迫があると本当に大変です。

尿意を感じるということは、自律神経が尿を体外に出そうとする反応が起こるという意味でもあるので、外尿道括約筋のみで頑張ることになるわけですが、体性神経も障害されているためかそんなに上手くも行かず、本当にトイレが間に合わなくなったりもします。

現在は、四六時中ずっとトイレに行きたいという状態にはあまりならないので、以前よりは軽度になったかとは思いますが、頻尿はずっと続いています。
夏や冬はエアコンのかかっている部屋の温度と外の気温に近いトイレの温度の差が大きく、トイレの高温や低温が自律神経発作の原因になったりするので、トイレにしばしば行くことが、他の症状を悪化させる原因にもなっています。

もう一つ、尿が出にくくなる症状も起こっています。
明らかに尿が膀胱に溜まっていると思われて、尿意もあるのに、トイレに行っても尿がなかなか出てこなかったり、少しずつしか出なかったり、お腹にすごく力を入れないと出なかったりします。
こういった症状を排尿困難と言いますが、ベンゾジアゼピンによる神経の障害の結果として、排尿時に膀胱を収縮させたり、括約筋を弛緩させたりする働きが十分にできなくなっていることに起因すると思われます。

下痢・便秘

腸には筋肉があり、この筋肉が収縮したり弛緩したりすることで運動し、食べ物を口側から肛門側へ移動させたり、食べ物を消化しやすいように撹拌したりする機能を持っています。この腸の運動は自律神経によって調節されています。
健康な人であっても、精神的な緊張などで下痢や便秘になる経験したことのある方も多いのではないかと思いますが、これは自律神経がストレスの影響を受けて腸の運動を適切に制御できなくなることによって起こります。ベンゾジアゼピンの影響で自律神経が乱れた場合にもこれと同じようなことが起こり得ます。

排便に関しては、この腸の運動に加えて、肛門を閉じている内肛門括約筋と外肛門括約筋の二種類の筋肉の働きも関係します。
便を腸に溜めたり排便する機能は、尿を膀胱に溜めたり排尿する機能とかなり類似していて、この内肛門括約筋と外肛門括約筋の二種類の筋肉が便が体外に出るのを防いでいます。
内肛門括約筋が自律神経の働きで自動的に収縮・弛緩し、外肛門括約筋が体性神経の働きで意図的に収縮・弛緩をすることで便を溜めたり、排便したりします。
ベンゾジアゼピンの影響による神経の障害によってこれらの筋肉を動かす機能も影響を受ける可能性があります。

私の場合、突然、水のような下痢が何日も止まらなくなったり、便秘が何日も続いたりを繰り返したりしました。

また、排泄は自律神経のバランスが大きく動くタイミングなので、下痢や便秘というわけではなくても、排泄そのものが自律神経発作のきっかけとなることがしばしばあります。

腹部の強い不快感・腹痛

胸内苦悶に似た、腹内苦悶とでも呼ぶような感覚がしばしば起こります。
言葉にして表現するのが難しいですが、お腹の内側から込み上げるような強烈な不快感や圧迫感、腹痛などが起こります。
この感覚が強い時は、それだけで何もできなくなります。人と話したり、何かを考えたり、テレビを見たりというようなことも一切不可能な強さの苦しい感覚があり、ただただお腹をかかえてじっと横になって過ぎ去るのを待ちますが、一日中消えない事も多いです。
腸が無秩序に激しく動くような感覚がすることも時々あり、これもとても苦しいです。

上にも少し書きましたが、腸は自律神経のコントロールのもとに、蠕動運動、分節運動、振り子運動といった様々な動きをすることで食べ物を消化しやすくしたり、移動させたりしています。自律神経の調節がうまくいかなくなることで、こういった腸の運動が、適切に行われなくなったり過剰になったりしているのかと思います。
また、内臓感覚が過敏になっていることにも関連していると考えています。



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