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スレイ・ザ・デモン

『良いかい軍曹?デモンを殺せるのは君の機体に搭載された概念干渉ブレードだけだよ、今の所ね』
「ブリーフィングで既に聞いた。黙ってろ」

全身に鋼色の装甲をおった騎士……否、鋼鉄の巨人は静かに降りしきる雨が泥を育てては押し流す、崩落したビルのガレキが形作る巣の中に足を踏み入れる。足の踏み場も危ういほどに、辺りには丸くうつろにくり抜かれた戦車や武装ヘリの残骸ばかりが散らばっていた。

『これは君の命に係わる事なんだよ、軍曹。何度でも念を押すさ』
「あばずれめ、俺が生きて帰ってくる事など期待してないだろうに」
『滅相もない、生きて帰った方が嬉しいさ。もう一度死地に送れる、そうだろう?』

軍曹と呼ばれた男は通信相手の減らず口に思わず舌打ちを返すと、計器類が詰まった棺桶の中で歯噛みする。モニタに移るのは鳥の巣状に乱雑に破壊されたガレキ、その中央に居座る水塊、そう水塊だ。

雨の中不自然に浮かぶ水の塊、それは不揃いな四肢を生やした奇妙な人型……ではない。水塊は常に流動的に形を変えながら、昼に迷い出た亡霊の様に手足を揺らめかせている。

『識別コード:アプスー。そいつを放置すれば、一週間後には関東全域が水没するとノルンは推定している』
「その方がすっきりするな」
『そうなった場合、君の拠り所もなくなるけどね』
「言ってろ」

コンソールにセーフティ解除を入力、OSを介して機体を思考制御。
軍曹の操作に応じて、巨人がその背にマウントした剣を握ると刀身に淡い翠緑の血脈が生じる。

複合カーボン人工筋肉をたわませ、剣を構えたその時!
外敵を感知したアプスーは激しく脈打つと、幾条もの放水を獲物に襲い掛かる蛇の様に撃ち放つ!装甲巨人はパルクール跳躍で瓦礫を八艘飛びすれば迫りくる脅威を回避!着弾地点には綺麗に撃ち抜かれた穴が残る!

「こちら軍曹、悪魔狩りを遂行する」

通信機に吐き捨てると、降りしきる雨を霧に変えて巨人は水球へと斬りかかった!

【続く】

#小説 #毎日投稿 #逆噴射プラクティス #逆噴射レギュレーション #逆噴射小説大賞2019

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