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魂の灯 -39- #ppslgr

「ッハーッ!面白かった!」

三日後、合間に休憩や個人的な要件をはさみつつも一堂は両作を鑑賞しおえた。晴れやかな顔で畳に倒れ込むバティ。そんな彼の頬をノアが指先でつつく。

「いい刺激になったの?」
「なったなった!」
「ふうーん、良かったじゃない」

そのまま彼女は彼のほおをぷにぷにとつまんで引っ張る。その様子を流し見しながら、執筆を再開するレイヴンと葉巻をふかすイシカワ。ほおつままれつつも、自身のノートパソコンを取り出しさっそくテーブルに置くバティ。

意気揚々とタイピングを初めたかと思いきや、すぐにその手がとまってしまった。

「どうしたんだ?」
「あ、いや、その……なんだ」
「大方、ロボット物について言語化した経験が少ないから適切な表現がパッと出てこないんじゃないか」
「あ……!それだよそれ! ッハー……オレはホントダメなやつだ」

イシカワの指摘に、ガクンと肩を落とすバティ。そんな彼の背中に寄りかかって密着するノア。

「もう、テンション上がったり下がったり忙しいわねホント」
「ああああ、当たってるから離れて!」
「いーやーよー」

傍目から見るとイチャコラしているようにしか見えない二人に苦笑しつつ、レイヴンはアドバイスをくわえた。

「言語化のプロセス自体は、過去に経験がある作品と変わらない。しかし、作品から受け取った熱情は陽炎めいて掴み難いのも事実だ。一度、カッコイイ感想文にしようとかいう我欲は捨てて、心の赴くままに吐き出してみるのはどうだ?」
「もしくは自分の中で適切に消化出来るまで、別のことをやっておくのもいいぞ」

二人のアドバイスに対し、バティもうなずく。

「ありがとう、まずは考え込まずに思ったままに書いてみるよ」
「それがいい」
「精々頑張ってねー」
「はあいー」

ぴったりくっついた人工躯体に気を取られつつも、彼はただただモニターへと向き合った。

―――――

暗がりにまぶたを開くと、眼の光感度を調整し状況を把握する。大人二人は布団で高いびき、一方で若者はテーブルのノートパソコンに向き合ったままに突っ伏して寝息をたてていた。

AIその物にも、睡眠にあたるメンテナンスタイムは必要だった。正確に表現するならば、端末たる人型躯体だが。彼ら人間の睡眠時間に合わせて躯体のメンテナンスを行っていたノアは、当然のように誰よりも早く眼を覚ます。

余計な足音をたてないように気を使いながら、起き上がって毛布を掴むと彼女はバティの傍らに歩み寄りそっとその背に毛布をかけてあげた。ついたままのモニターには、受け取った熱情の火を何とか形にしようと悪戦苦闘を繰り広げた名残が延々と綴られている。

「無理しちゃって……男の子ってばホント、偉い偉い」

若木の白枝のような指先で、ボサボサの彼の髪をそっとなですくと、彼もまた寝言を漏らした。

「センセイ……オレは……」

その一言に、瞬間的に非論理的処理を回してしまいついほおを引っ張ってしまう。

「頑張るのは良いけれど、身体壊さないでよねーっと」

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