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魂の灯 -38- #ppslgr

「今までの話は、俺の経験則と一般的な情報から導き出したアドバイスだが、センセイももっと細かく助言を提示してくださってるから行き詰まったら読み直した方が良いぞ、と」
「おおう……センセイも先回りして書いてくれたとか、悩んでる最中は全然思い当たらなかったよ」

そもそも俺の話も若干センセイのアドバイスと一部重複する所もあるが、作家の悩みなんて大筋で共通してるからそこはご勘弁な。と付け足してレイヴンは肩をすくめた。

「そんなもんだろう、悩んでる最中なんて、自分ひとりで何とかしなきゃいけないような気になるもんだ。悩んだら、どんどん他のパルプスリンガーに相談すればいい」
「そうするよ」

嘆息するバティに、それとなくノアからマグカップが渡された。わがまま放題に振る舞っているように見えて、その実彼女の気が利くところが垣間見える。

「さて、行き詰まったらその都度相談するなりセンセイのレクチャーを読み返してもらうとして、やる気の方だ。実はこっちの方が対策が難しいところがある」
「身に染みてます……何か出来ることはある?」
「元々の方針通り、本来は多様なインプットを積み重ねて思考を活発にするのが良いんだが……今は時間が限られているから、既にぐっと来た経験のあるジャンルを深堀していこう」
「というと、ロボット物か。レイヴンの得意分野じゃん」
「そうなる、まあ余り長いヤツはこの状況だと向いてないから、短めの作品で……」

その時、イシカワが二人の会話に割って入った。手には三等身の特徴的な形状のロボットが描かれた映像ソフトのパッケージを持っている。

「この話になるのを待っていたぜ、という事で俺からは『グランベルム』を出すぞ。レイヴン、お前は何を出すんだ」

イシカワの問いかけに、レイヴンはこれまた黒尽くめの中々人相は良いとは言えない痩せぎすの男が写ったパッケージを取り出した。

「俺からは『ガン・ソード』を出す。『ニンジャスレイヤー』と同じ復讐譚だから履修しやすいってのもあるな」

まるで相反するかの様な二作を突き出す二人の男を前に、バティは眼を白黒させた。

「見るよ、見る。でもどっちから行けば」
「どちらからでも良い、両方合わせて3シーズン分だがそのくらいの時間は取れるだろう」

レイヴンの言葉に、ノアも頷く。

「地下施設の調査は思わしくないみたい。いかんせん広大に過ぎて、ね」
「仕方あるまい、向こうからの妨害もあるだろう。こっちはやるべきことをやっておく」
「ええ、進展があればすぐに伝えるわ」

一方、両作品の間で眼をさまよわせていたバティは決断的に三等身のロボットの方を掴み取った。

「決めた、『グランベルム』から行くよ」
「よし、モニターは空けておく」
「ありがと、コレ再生機ついてる?」
「右の裏側に挿入口があるわよ」
「わかった」

即席の鑑賞会が始まるとあって、レイヴンはCORONAをずらりと並べ栓を開ける。エンタメにはCORONAビールが欠かせない、ウイルスなんてファックオフだ。

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