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魂の灯 -40- #ppslgr

「うう~ん……書けない……」
「まーた始まったの?」

「始まっちゃった……」

座椅子に背を預けてお煎餅をパリパリするノアの様子など、つゆほども気に留める余裕もなく、バティは自分のボサボサ頭をガシガシと掻きむしる。そこにそれとなく回される緑茶。今、庵内には二人だけが残されていた。

「あれ、他の二人は?」
「食品の買い出しですって」
「ええー、オレ達二人残して?」
「あによ、心配なの?ここの排水は一旦タンク式にしてもらったし、それ以外の侵入経路も塞いだから不意打ちは出来ない。急に襲われなければ逃げる位は何とかなるでしょうに」
「それはするさ、なんとかする」
「よろしい、心配しないでも周囲に私の眼は張り巡らせてるから、何かあったらすぐに知らせる。だから創作に専念なさい」
「観念します……」

そうは言ったは良いものの、思うようにアウトプットに結びつかない。いい刺激は受けてるはず、それなのに何が足りないというのか。煮詰まった青年はゴスゴスとテーブルに額を打ち付ける。

「ちょっと、よしなさいって」
「ほうっておいてくだちい……」
「なら諦めるの?」
「それはダメ」
「フフン、諦めの悪さだけは一流ね。良いんじゃないすぐに成果がでなくても、諦めさえしなければ」
「そうは言うけどさぁ……」
「行き詰まってるなら、ちょっと視点を変えてご覧なさいよ。すんなりアウトプット出来る題材だってあるじゃない、その……ゲームとか」
「ゲーム?」
「アイドルのとか」
「それはそうだけど、一体何処でそれを」
「どこでも何も、インターネットにアレだけ不法投棄してて見られない訳ないでしょ、公共空間なのよ?」
「おっしゃる通りデス」

ぺっそりと頭をテーブルにあずけて、すんなり書ける内容と書けない内容、何が違うのか考える。どっちも好きだし、グッと来るのは共通している。書けないのはもっと別の理由だ。両者の違い、相違点……視点。視点?

「そうだ、視点だ……」
「何か、掴んだの?」
「うん、なんとなくつかめた気がする」

常人なら発狂する、真っ赤に染まった発狂頭巾七味せんべいをパリパリしながら、何気なく聞き返すノア。

「これちょっと刺激強すぎじゃないかしら」
「思うに、すんなり言語化出来る事象ってたくさん考えてた物な気がする」
「そうなの?人間は」
「まあ、多分。さっきの話でいうと、アイドルの話とか、ニンジャはオレ大好きだから長い時間考えてるし、別方向から考察したり、あるいは解像度高めて見たりしてる。でもロボット物はまだまだ履修初めたばっかりで、全然思考量が足りてないんだ、だからすんなり書けない」
「なら、書くより先に分析するのが先ってことね」
「うん、もっとよく味わってみる。創作の道は険しいなぁ……」

―――――

シャッターの軒並み降りた通りの暗がりより、暗色のひし形投刃がひとつ、ふたつ、よっつ、と飛翔し襲い来る!

「買い物に来ただけなんだがな」

イシカワが淀みない所作で拳銃を引き抜けば、過たず二丁連動射撃でもってひし形手裏剣を撃ち返した!虚しい過疎通りに火花が散る!

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