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全裸の呼び声 -4- #ppslgr

「ワシこそが大日本露出国初代首相である!!!」

 それが今季国会開会式において、現首相がやおら立ち上がり、現天皇陛下の言葉をさえぎって己の衣服をなげうって、全裸露出行為のもと発した宣言であった。

 おごそかな開会の雰囲気において、普段はヤジを飛ばすくらいが関の山の木っ端議員ですら瞑目して儀式の進行に参加していた、その時の凶行。議会は騒然となった。だが、事態はそれだけにとどまらなかった。

「首相ばかりに脱がせてなるものか!ワシも脱ぐぞ!」

 おぞましき事態。国会議員が続々と声を張り上げ己の高級スーツを脱ぎ捨て全裸露出による発狂行為へと走ったのである。それはまるで、狼が遠吠えによって仲間同士と存在を主張しあうかのごとき所業であった。

 当然のことながら、当時の様子はインターネット上にてオンライン放送されており、日本国民も騒然となった。だが、騒然となっただけならばまだ救いはあった。あろうことか、日本国内でも続々と全裸露出に走る発狂者が続出したのである。

 実数こそさほど多くなかったものの、続出した全裸露出行為は日本を無視できない混乱へと陥れたのであった。

 そんな、直視しがたい現実をまとめたVTRを映していた、壁掛けモニターの映像が切られる。場所は西部劇風のサルーンの奥まった席で、そこには三者の人間が着座していた。

 なんとも不機嫌な様子で映像を切ったのは、品のいい紺のオフィススーツに身を包み、黒髪をアップでまとめた眼鏡掛けの女性。顔立ちはととのい、美人といっても差し支えないほどであったが、その顔には疲労の影が色濃くのしかかっていた。

「これが一週間前から今日までに起こった事件の経緯」
「わざわざ見せなくても、皆知っているだろうさ。あのバカ騒ぎは」

 あきれ果てた様子で口をはさんだのは、黒髪を大雑把に切った黒コートに黒瞳の男。身は大柄で、いかにも剣呑な、一般離れした雰囲気をかもしだしている。

「それで、何故私たちにこの一連の動画を?」

 最後に言葉を発したのは、すらりとしたシルエットで、白衣めいている朱の差し色が入った外套を着た細面の男性だ。隣に座っている黒ずくめとは色だけにとどまらず、対照的な雰囲気をまとっていた。

「政府は一連の事件を偶発的かつ無関係な事件ではなく、人為的に引き起こされたモノと推定しています」
「それはまた、ずいぶんと悪い冗談だ」
「事態は急を要しています、ちゃちゃを入れずにちゃんと最後まで聞いてください」
「あいよ」

 不遜な態度を崩さない黒ずくめを前に、政府高官らしき女性は続きを述べる。

「事態の究明のため、政府はあなたがた二人に調査を依頼したく……」
「何人死んだ」

 高官からの言葉が途切れたのち、回答があった。

「一次派遣は、十名。うち五名が意識不明の重体、四名がコミュニケーション不能の発狂状態、のこり一名がぎりぎり意思疎通が可能な物の、重度のPTSDを発症していて長時間の会話は困難な状態で発見されました」
「オゥ、死ぬよりひどい目に遭ったと見える」

【全裸の呼び声 -4-:終わり|-5-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

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