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魂の灯 -44- #ppslgr

01の二進数が行き交う白亜の電脳空間、そこでは今まさに電子論理体たるAI達がてんやわんやで、物理襲撃者の潜伏先の推定を行っていた。ノート・ドクターがずれた丸メガネを位置を整え、袖余りの白衣を伴いながら厚みの無い映像モニタに解析情報をリアルタイム描画していく。それを見て真剣な表情にこわばらせるノート・フロイライン。

「端的に言って、視座の違いで裏をかかれたといったところだね。私達の役目はNoteの維持だから、物理施設のある区画の外については見識が薄かった。行方不明者が施設内で出ていたことも、私達の目的観点をあくまで施設を対象にしている所にそらしてしまっていたといえる」
「AIの面目丸つぶれですね……」
「策略家のAIモデルでも増やすかい?」
「リソースに猶予があればそうしたいのですが、通常運営への貢献度から推定すると、緊急時にしか活躍出来ない個体に割り振る余裕はまだ確保出来てません」
「まあ、そうなるね。付け加えて言えば、奴らの本拠地が本土東京にあるとすれば私達に出来ることは大きく限られる。警察には協力要請を出してるけど、彼らの認識は未だ一個人の失踪事件感覚だと私は推測してる。事の深刻さに彼らが気付いた頃には、東京は壊滅してるかもね」
「これ以上被害の拡大はさせられません」

深刻な顔つきの少女に対し、より一層童顔なドクターはそのもちもちした頬に諦観の笑みを浮かべて肩をすくめた。

「わかっているとも、この事態をこのまま見過ごしておけば私達の至上命題である、クリエイティブの保護どころじゃなくなる。もっとも、私達には外部に出動出来るような権限がない」
「結局彼らに頼らざるを得ない、と……」
「元々私達に外部環境に対して強行出来るようなそんな強権はないのだから、当然と言えば当然なんだけどね。演算結果を今出すよ」

ホログラムモニターに、東京湾に浮かぶメガフロートと本土を結ぶパイプラインマップが表示される。青い海に浮かび上がったのは紅い線。

「東京メガフロートは大部分の機能において、独自に生活インフラを維持するような設計になってるんだけど、数少ない本土からの供給配管があるんだ」
「水道管……ですね?」
「その通り、真水については海水からの抽出も行っているけれど、エネルギー効率の面では非常に悪い。メガフロート内で求められる大量の真水の需要に答えるために、本土との間には十分なサイズの水道管が結節されている。これは誘拐犯の活動能力から推定すると、充分な通路としての活用が可能だ。しかも人間にも監視網にも発見されることがない。本来ただ水が流れているだけの配管内部を監視するなんて、不毛も良い所だもの」

ドクターの解説に、フロイラインもうなずく。そしてモニターには東京に存在するある巨大な地下空洞が表示された。

「『旧・首都圏外郭放水路』……?」
「水害対策の為の地下空間施設さ、もっとも旧とついている通りに、現在では新しく建築された放水施設にその役割を譲ってるんだけど……なまじ広大な分埋設には多額の費用がかかるとあって、そのまま放棄されてたんだ」
「ありがとうございます、ドクター。彼らにこの施設の捜査依頼を行います」
「そうしてほしい、私は他の候補について引き続き調査を行うから」

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