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魂の灯 -43- #ppslgr

虚無の暗黒。創作者の大多数がぶつかる、無反応の壁。noteは少しでもそれが軽減されるように創意工夫がこらされてはいるが、さりとて全くの皆無になるわけではない。それどころか、クリエイターの流入が増えた分見落とされる者もその分増えたとレイヴンは考えていた。

「見いだされなかった者達……か、思えば俺達は幸運なのかもしれんな」
「間違いなく、そうだとも。集まる場があり、志を共にする仲間がいて、そして日々研鑽を積める。だが、そこに至れずにいなくなる者は、少なくなかろう」
「その結果がこの騒動か、笑えんな」

肩を並べて歩くイシカワに向けて、黒衣の男は肩をすくめ、手にしたままの買い物袋が揺れた。中には生産一時中止となったCORONAの貴重なストック分も含まれている。

「誰だって、いつでもあっち側に落ちうるんだ。謙虚にいかないと」
「誰でも……か。まあ、そうだな。俺が大賞取った直後に出したやつも、思いの外伸びなくてちっとばかし苦い思いしたもんだが」
「アレ、俺は好きだったぜ。全く未知の文化圏に触れた気がして、衝撃だった。当時はなんか気恥ずかしくて言えなかったんだが」
「なんだよ、言ってくれりゃこっちだって素直に喜んだんだぜ」

苦笑しつつ、肘でつつく。いつしか二人の周囲は、人の手の行き届かない過疎地から、徐々にテナントがポツポツ入った人気のある区画へと景色が移り変わっていった。

「同じ経験なら、俺にもあるよ。当時はコンテスト補正がかなり強いなんて思いもよらなかったから、勢い込んで出した力作が、応募作に比べたら全然伸びなくてな。内心結構がっかりしたもんだ。今振り返れば、そんな甘い話はなくて当然、なんだが」
「ま、現実はそう甘くないってこったな」

その賑わいは二人がここに通うようになった当初に比べるとやや陰りがあるようにも見えた。ここ数日で、過疎地帯への襲撃に対する注意放送が流れるようになった結果、敏感な者からnoteに足を踏み入れることを回避するようになってきているのは明白であった。

「やはり、目に見えて人が減ってきているか」
「実際に遭遇しないとした所で、怪物が出ると脅されたらな。むしろ今いる連中が随分と肝が据わっているというか……あるいは、自分は対象にならないという根拠のない自信か」
「あるいは、危険だとはわかっていても、生活やらなんやらでここに来ざるをえんのかもしれん。どっちにしても、襲撃者が悪い事には代わりはないんだが」

注意深く観察さえしなければ、今も施設内は繁盛していると言っていいだろう。だが、怪物の跳梁が悪化すればそれもまたたく間に消え失せるのは想像に難くない。そうなれば、作品を展示している二人としても悪影響は免れ得ないと言える。

「これ以上の大事になる前に蹴りをつけたいところだが……」

スマホの通知欄を見ても、ノートAIズからの連絡は未だ来ていない。つい先程とはいえ、卓越した演算能力を持たされている彼女たちでもぱっと回答が返ってこない辺りに、レイヴンは不吉さを感じずにはいられなかった。

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