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魂の灯 -45- #ppslgr

「ねぇ、本当に書かないとダメなの?」

なんとか四苦八苦しながら感想を書き上げ、今度は何か小説のアイデアが浮かばないかテーブルに突っ伏してウンウン唸ってるバティに、いつになく真剣な声色で、ノアがたずねた。

「その質問、ここのAIっぽくないよね」
「かもね。でも、私はクリエイティブを後押ししすぎるのは好きじゃないから。もっとも、それは他の子だって変わらないんだけど」
「どうゆうこと?」
「無理して創作後押ししても、それで普段の生活に支障が出たらその人の為にならないじゃない」
「まあ……そりゃそうか」

noteの創作支援は、あくまで自発的な意欲向上と、出来た作品の公開支援、それから人気が出れば収益化の後押しなどが主で、過剰に執筆を強制するような仕組みは差し控えられている。毎日更新とて、褒められはするが止めたから何らかのペナルティが課せられるわけでもない。週一でも、月一だろうとなんら問題はなかった。

「やるなら、楽しくやって欲しいんだけど……そうも行かないのよね。人間て、難しいの」
「まあねぇ……そう都合よく書きたい物が見つかる訳でもないし、書きたくなっても集中が続かないってのもあるし、書いている最中もこの展開で良いのか考え込むし、書き上がったらどう直すか悩むし……大変なことばっかりだ」
「でも、あなたは書くんでしょ?」
「まあ、ね。書くことそのものからは逃げたくないんだ、そりゃあ今は後回しにしちゃってるけど」
「良いんじゃない、書きたくなった時に書くのが一番だって」

AIらしからぬ、気負わせないよう気遣った言葉に、バティも表情を緩めて答えた。

「ありがと、あんま気負わない様にするよ」
「よろしい」

そこへ、外からレイヴンの声が届いた。

「戻った訳だが、中に入っても問題はないか?」
「どーぞー」

庵の木戸が音を立て、その質量の割に足音を伴わずに歩く黒い男と、重量感と存在感に溢れた歩調のタフでサグな男の二人が入ってくる。どさりと、食品から菓子からが入った買い物袋がテーブルに載った。

「別に黙って入ってきて良かったのに」
「そうは行くか、この状況で不幸な遭遇が起こったら気不味くてかなわん」
「不幸な遭遇って何だよ!?」
「ハッハッハ、レイヴンは気を回し過ぎだな」
「生来、心配性な物でね。いつでもどこでもマンチキンライフだ」
「とてもそうは思えないんだけどー?」
「よく言われる」

とりとめのない会話に、レイヴンのスマホが通知を指し示した。表示されていたのは、東京にある廃棄された放水施設。一部の筋では地下神殿などというあだ名で呼ばれている場所だ。

「潜伏先のあてがついたらしい」
「マジでっ!?オレも……」
「いや、まず俺が先行して実情を探るつもりだ」

そっちはまだ悩んでるんだろう?の意を言外に漂わせつつ、視線をバティに向ける。

「危なくないのかよ、一人で」
「死にたくは無いからな、最悪イクサで更地にしてくるとも」
「うっへ、おっかねー」

レイヴンとイシカワは、何がしかを視線で交わして意思疎通すると、一旦どかりと座り込んだ。

「ま、一杯茶を飲んでからな」

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