マン・ハンティング・ウィズ・ポスト・アポカリプス 9

「なんで人手を求めてるのか、かい?」

 コーデリアの問いかけの内容を確認し、エンジは席を立って工場に戻っていった。自分から語る事はないという意思表示だ。

「はい、お話をお伺いしてる限りではお二人には働く理由はあまり無いような気がして……」
「もう充分に金銭を持ってるから?」
「はい」

 率直に聞いてくるコーデリアに落ち着いた様子で回答するシラセ。

「そうだねぇ、理由は色々あるけど大きいのはお金だけあっても僕達は生きてけないってとこかな」
「どういう、事でしょう?」

 困惑するコーデリアにシラセは食べかけのサラダにのったトマトをフォークでさして例える。

「例えば、僕とエンジは技術者だからフチクモの様な効率を引き上げる工業製品を作れる。でも、何でもできるわけじゃない。このトマトとかは外部の農業系技術者との協力もあって安定供給が出来るようになったんだ」

 それまではケチャップもまともに作れなかったよ、と苦笑して肩をすくめるシラセ。

「金銭はあくまでネットワーク上に記録された電子論理データでしかない。もちろん貨幣としては機能するけど、使って初めて意味があるんだ。でも、今は人間その物が数を減らしてしまっていて、市場に提供されるサービスとか商品の種類はとても少なくなってしまっている。ついでに需要その物もね」

 そこまで説明して一度言葉を切ると、総括するシラセ。

「僕達はもっと効率化を推し進めて今の社会をもっと気楽に生きていける世の中に戻したい。そうするのは僕達にとっても利益になることだから」

 納得した?と、うかがうシラセにほぇーっという感心と理解が及ばない感覚の入り混じったぽんやりした表情で首を縦に振るコーデリア。

「うんまあウサンクサイよねぇ。ウチはいつでも一言くれれば長くても1ケ月後には辞められるからそこは安心していいよ。二人での運営には慣れてるし」

 アハハ、という軽い調子で笑うシラセに未だに夢見心地ながら、はっきりとした口調でコーデリアは答えた。

「私、私は、自分の技術を磨きたい、ここで私の希望が叶うかはまだわかりません。でも、まずはここで私にやれることをやらせていただけますか?」
「もちろん、喜んで。歓迎するよ、コーデリア君」

 シラセから差し出された手をコーデリアはしっかと握手し返した。し返したところでふとある疑問に少女は首をかしげた。

「ところで、他の方の入社とかなかったんですか?」
「う……それはだね、ウチマイナーすぎる上に二人しか人がいないから皆怪しがっちゃって寄ってこないとか、そもそも人狩り企業に片っ端からさらわれてて希望者待ちしてたらいつまでたっても来ないとかで」

 説明深めるたびにしおしおと萎れていくシラセであった。

【続く】

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