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マン・ハンティング・ウィズ・ポスト・アポカリプス 8

 朝、社食のがらんとした広い食堂の隅っこの席でエンジとシラセは朝食のプレートを卓に置いてゆるい朝の時間を過ごしていた。

 エンジのプレートは五穀米に出汁の利いた白味噌汁、焼き魚のサケの切り身。シラセのプレートはトーストの上に程よく火が通ってオイルでてかるベーコンと目玉焼きにトマトサラダとコーンスープ。

 各々が適当にぱくつく最中、エンジの携帯UNIXに通信が入る。

「なんだ」
「あ、あのー……換えの服とか、ありませんでしょうか」

 心底申し訳なさそうに告げるコーデリアの声にいつも通り不機嫌な調子でエンジは返した。

「何着かフチクモにおまえが着れそうな衣料品作成させてドアの前に運ばせておいた。サイズが合うとかは知らん、後でフチクモへの指示の出し方教えてやるから自分で作れ」
「えっと……あ、ありました。ありがとうございます」

 恐縮した様子で通信を切るコーデリア。相変わらず憮然として朝食の魚をつつくエンジ。

「そういうとこ、結構気が利くよね」
「お前が利かなすぎるんだ」

 シラセの言葉をばっさり切り払うと残りのサケの一つまみすると強引にかぶりついて丸ごと咀嚼し、味噌汁で流し込む。続いて納豆がかかった五穀米の茶碗を掴んでコレもがつがつ食いまくる。合間にシラセのサラダボウルからトマトもつまんでいただく。

「サラダ食べたいんならフチクモに頼んだらどうだい?」
「一つまみありゃいいんだ、シェアリングエコノミーってヤツだな」

 エンジの返しに苦笑するシラセ。そんな二人の様子をうかがう様に食堂入り口のドアからおずおずとコーデリアは入ってきた。

 昨日の土埃まみれの学生服から、清潔な印象のカジュアルな服装に着替えている。派手過ぎず、地味過ぎず、それでいてコーデリアの可愛らしさを損なわない良いセレクトであった。

「おはようございます、その……サイズ、ピッタリでした。ありがとうございますエンジさん」
「たまたまだ、運が良かったな」

 コーデリアの方を流し目でチラ見した後、変わらない調子で飯を掻き込むエンジ。彼の真意はそのふるまいからは計り知れない。隣の席に着座しようとしたコーデリアにシラセが一声かける。

「ここでもフチクモ達が僕達のサポートをしてくれるんだ。カウンターの方で好みの食事注文しておいで」
「わかりました」

 シラセに促されてよくある食堂の調理カウンターを覗き込むコーデリアの視線に、フチクモに合わせて設計されたキッチンの中からフチクモが顔を出した。

「いえーい、新入りのお客様、なににしやしょ」
「何が頼めるんですか?」
「ボク達がレシピわかってて材料がある物なら何でも!」

 意外にも高性能な回答に返って返答に窮すコーデリア。選択肢が広すぎても人間は悩む生き物だ。そんな彼女にフチクモがカウンター上のタッチパネルで今朝の主なコースを提示してくれた。

「今日作れるお料理はねー、こんなとこ!」
「それなら、うーん、洋食コースで」
「らじゃー!」

 コーデリアの依頼に応じてワチャワチャとキッチン内でせわしなく動き回る何機かのフチクモ達。わずかな時間で彼女の前にシラセのプレートと同様の洋風朝食が遇された。

 プレートを手に感動するコーデリア。この施設には人間は二人しかいないのにこんなにもスムーズに物事が回っている。

 しかし、シラセはこうも言った。「もっと一緒に働いてくれる仲間は欲しい」と。単に収入を得て日々を過ごすだけなら充分すぎる施設と設備だ。それらに彼らは満足していない。

 何故なのだろうか。朝食の合間に聞いてみよう、コーデリアはそう決意した。

【続く】

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