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BWD:龍の移住相談なる会-2-

「競技場上に龍が居座っているのをどうにかしてほしい?」

 都心部のビル二階に入居しているバー、「涅槃」。そこで二人に告げられたのは幻想が当然の様に日常に混ざっている今時でも珍しい事態だった。

 バーのマスターから依頼を告知されたのはいつも通り、法衣の意匠を引き継いだ黒いケサコートをまとったアクマ狩人ボンズのカリューと白髪に白スーツのうさんくさ白ずくめ探偵のセージの二人だ。黒髪をざんばらにしたカリューよりよほどボンズしている屈強な偉丈夫にして坊主頭のマスターへと返答する黒ボンズ。

「気軽に話持ってこられてるが、これ真龍だろう?そんじょそこらのアクマが一山いくらで襲い掛かっても鼻息一つで死滅するとかそういう埒外の存在だ。下手に怒らせたら都内が更地になるな」
「だから、こう……怒らせずになんかどうにかできないか?」
「俺のセンセイなら察知させずに首を落とすとかするだろうが、俺はそんな芸当できんぞー?」

 マスター相手に流石に難渋する様子を見せるカリューを制するセージ。

「まあまあ待てよカリュー」
「何か策でもあんのか?」
「策っつうかこのドラゴン普通に話せばわかるタイプと見た」
「お前がそういうんだから根拠があるんだろうが、その理由は?」

 カリューが呈する疑問に自信満々に頷く探偵。

「まず、このドラゴンが堂々と日本国内にいるって事は違法入界ではなく、ちゃんと手続きを踏んで日本に来たってこった。つまりこっちの世界の法規手続きを理解し、律儀に守る事ができる理性と知性があると考えられるぜ。でなきゃ俺達バニッシャー総出で掃討する羽目になってる」
「フムン、なるほど。では戦う可能性は」
「きわめて低いな」

 セージの解説に納得するカリュー。話して済む可能性が高いのであればむしろ楽な仕事と言えるかもしれない。とは言え一歩間違えば東京が焼け野原なり永久凍土なりになり果てるのでおっかないリスクがある事には変わりはなかった。

「二人とも、受けてくれるか?」
「やろう、マスター。都の連中には怒らせそうになったら諦めて逃げるって言っといてくれ」
「なあに、俺がちょちょいとさとして退いてもらうって」

 根拠はある自信に満ちたセージに、胡散臭がる視線を送るカリュー。この駄探偵がドヤってる時はろくなことがない事を付き合いが長いこのボンズはよーく理解しているのだ。

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 晴れ渡った青空の下、東京国立競技場のど真ん中。そこには事前に知らされた通りに蒼穹にも似た美しい色合いと、芸術品の様な造形を持った巨大な龍が猫の様に丸くなって寝ていた。幻想存在が当然の様に闊歩するこの時代においてもいささか奇異な光景と言えるだろう。流石にこのクラスの、それこそ怪獣王レベルの存在があたかも日向ぼっこするような気軽さでこの世界に現れる事は非常に珍しいことであった。

「動画でも迫力がすごかったが実物はさらにすさまじいな。ここが自分の縄張りとか言い出さないといいんだが」
「なんだよいつになく気弱だな、カリュー」
「流石にここまで強力な相手にドヤれるほど無謀じゃないんだが?」
「まあ、それもそうだな。とはいえ俺が丸く収めるから心配いらない」

 自信たっぷりに龍に向かって歩み寄るセージの後をため息ついて続く。どうか下手を打っても最悪この駄探偵一人の犠牲で済みますようになどと祈るカリューであった。

【BWD:龍の移住相談なる会-2-:終わり:3へ続く

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