見出し画像

魂の灯 -24- #ppslgr

庵に戻った面々に、重苦しい沈黙がのしかかった。
レイヴンは変わらず、文庫本を黙々と読み続けているが、アイドルは上の空な様子。バティはというと、自分も読書に勤しもうとしては気が乗らないままに天井を見上げ、視線を文面に戻していた。

「なあ、レイヴン」
「なんだ?」
「今更な質問かもしれないんだけどさ、何だってクリエイターが狙われるんだ?いや、オレなんてクリエイターっていって良いかわからないけどさ」
「端的に言うと、クリエイターは現代において、強力な異能力者になりやすい性質があるからだな」
「だから、悪事にも転用できるって?」
「そういう事だ」
「そこんとこ、もうちょい詳しく」

バティの求めに応じて、文庫本を置くとスマホの画面をモニタにペアリングする。映し出されたのは、異能力者についての広報ページだ。

「初歩的なところから言うと、ソウルアバター・システムの普及に伴って、特異な能力を発揮する人間が現れた。初期の段階で既にかなりの数が発現したため、秘匿や隠蔽などはされずにあっさりと公に周知されることになった訳だが」
「その辺は、学校の歴史の近現代で習ったよ」
「もうそんな扱いになる程度には昔ってわけだな。幸か不幸か、歴史上の事実としては質の良し悪しこそあれ、全人類平等にチャンスがあった為にそこまでもめることは無かった、と表面上はされている。ま、ここは今回の話には関係ないのでカットだ」

スマホフリックに伴って、モニタの画面も変わる。

「で、統計の結果、複数の因子のうち、特にクリエイター系統に向いている人間には強力な能力が発現する傾向が認められた。グラフの通り、ほぼ有意といっていい差がある。もちろん、他のタイプでも強力なヤツは出はするんだが」
「この有意差だと、確かにクリエイターを狙ったほうが効率が良いっていっていいね。でも、別にそんな身の回りでバンバントンデモ能力が行使されたりするわけでもないような」

うちの周りはさておき、という一言に答えると。

「そりゃそうだ、能力を犯罪に使った所で、逮捕はされるし法廷に突き出されもする。国の手に負えないとなれば、現場で殺されかねん。そもそも穏便に暮らすにあたって役に立つのは、限られているしな。俺の何か、どう転んでも一般生活には役に立たん。ホイズゥのいつでもどこでもコンビニ出せる能力の方が絶対便利だ」
「あはは、なにそれ。あーでも確かに超便利っぽい」
「なお、現金はちゃんと要求されるそうだ。幻像のくせに」
「でも金さえあれば、いつでもどこでもコンビニにある範囲で買えるってことじゃん。絶対便利だ……所でレイヴンのはどんなヤツなの?」

バティの素朴な疑問に、珍しく彼は言いよどんだ。

「あー……余り見せて愉快な物でもないし、切り札として情報を伏せて置きたいんでな。ナイショだ」
「ふーん、なら深くは聞かないよ。まーとにかく、昔と違ってどんな人間でも強力な資材になるってことかな。特にクリエイターは有用と」
「まあ、そうなる」
「迷惑な話だなぁ」

【魂の灯 -24-:終わり|-25-へと続く第一話リンクマガジンリンク

過去作ピックアップ

弊アカウントゥーの投稿はほぼ毎日朝7時夕17時の二回更新!
ロボットが出てきて戦うとかニンジャとかを提供しているぞ!

#小説 #パルプスリンガーズ #毎日更新 #毎日note

ドネートは基本おれのせいかつに使われる。 生計以上のドネートはほかのパルプ・スリンガーにドネートされたり恵まれぬ人々に寄付したりする、つもりだ。 amazonのドネートまどぐちはこちらから。 https://bit.ly/2ULpdyL