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魂の灯 -23- #ppslgr

「この人……行方不明になってたユーザーさん……!」
「やはり、そうか」

暗色の肉に包まれていたのは、冴えなく疲れ果てた様子で眠りについている中年男性の顔だった。その顔のクマは濃く、死相といって差し支えない領域で不健康さを表現している。

「やはりって、何、アナタ予想していたの?」
「そうでなきゃ、早々に真っ二つにしてるさ。こいつだけ挙動も気配もまるで違ったからな。他の雑魚どもと」

駆け寄ってきたアイドルの詰問を淡々と受け流すも、レイヴンが男性を暗肉から引き剥がそうとした時、次の異変が起こった。暗肉がブルブルと震えたかと思うと、途端に男性を再包装。そのまま、まるでアメーバのごとくべしゃりと形を失うと、止める間もあらばこそ近くの排水口へとなだれ込んでいく。

「こいつ……!」

レイヴンが墨染をまとった指先で暗肉を引きかき、バティがワイヤーを突き立て押し留めようとするも、手からこぼれ落ちる砂めいて暗色は手の届かない排水口の下へとなだれ込んでいった。

「溶かされた、の?」
「一時的に軟体化しただけだろう、資材として活用するのには生かしておく必要がありそうだからな。でなきゃわざわざ元の形を保ったままに、ここまで出してこないさ」
「ウェ、油断してたら俺もああなってたって訳?」
「そういう事だろう、闇落ちだかなんだかはさておき、犯人にとっては生きたクリエイターが必要なんだ。あちらの目的を果たすためには」

光刃の光をおさめると、柄をホルスターに放り込む。地下の構造物に潜伏しているとすれば、安易に突入すべきではない。そう判断したのだ。

「アイドル、地下の調査は管理AI達に振れるか?」
「もう伝えてる、さっきのショッキングな映像と一緒にね。フロイラインからは、探査ドローンを地下施設に送るって返事が来てる」
「それが良い、人間を送りつけるのは相手に餌をやるようなものだ」

肩を鳴らすと、何事も無かったかのようにレイヴンは庵へと戻っていく。彼らの奮戦のかいあってか、建物自体は傷一つついていない。

「良いのか、追わなくて?」
「どうせまた来る。こっちから行くにしても、アテのない地下迷宮じみた下水道を徘徊するのは危険だ。施設内の地下ならAI達が探査出来る以上、俺達が掃除屋のマネごとをする必要もない」
「そうか、そうだよな」

バティもワイヤーをしまい込むと、続いて庵へと戻る。最後にアイドルが。

「な、レイヴンは何が条件であいつらに引き寄せられるか、思い当たるフシはあるのか」
「まだ、予想の域は出ん。そっちこそ思い当たる所があるんじゃないのか?」
「まあ、それなりに……でもアイツラのお仲間になるのはゴメンだ。せめて人間のままでいたい」

地の底にまで届きそうなほど、でかいため息をバティはつく。まさか、一歩間違えばドロドロの暗色スライムに取り込まれて苦役に酷使されかねない運命だったとは。クリエイターとは果たしてそこまで酷使されるような、いわれはあっただろうか?

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