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魂の灯 -22- #ppslgr

不意に、棒立ちとなっていた異形人型に向かって、暗い怪異達の飛び散った残滓が渦を巻くが如く寄せ集まっていく。妨害せんと剣を振るう黒尽くめだが、本体その物を殺す訳にはいかないとあって、ままならず暗肉の集約を許してしまう!

「これは……!」
「チッ、安直な奴らだ」

怪異共の透き通る暗い肉は、空中に球体をなすとぬるりと触腕を生やして四肢と成し、地を揺らして立ちはだかる。その体表にはあり得ざる位置に無数の眼と口が這い回り、ガチガチと歯を鳴らす様はいよいよもっておぞましい。何故この様な怪物が、現代社会にはびこるというのか。

「もう一戦だ、バティ。さっきも言ったが殺すのは無しだ」
「わかってる。手加減するって」

おぞましい叫び声を上げて一帯を戦慄させた暗色球体は、まるで鞭のごとくその腕を伸ばししならせ、眼前に立つ二人を薙ぐ!飛び退り横に跳んで迫りくる暗い一撃をかわし、あるいは手にした刃で打ち払う!

「さて、如何にぶった斬るか……!」

状況判断。先程も念押しした通りに、この奇怪な球体……正確にはその内側に存在する者ごと破壊するわけにはいかない。往々にして過剰火力なレイヴンにとって、手加減しなくてはいけない状況というのは甚だ苦手な事態だった。

「まあ、やるしか無いんだがね!」

今までの挙動から、本体が機能停止すれば無力化する可能性が高い。という事は今もなお振り回される触手は、そして球体の体表は、相手にとって破壊されても問題ない部位と言う訳だ。光刃を構え直し、奴隷をいたぶる看守めいた奇怪球体へと真っ向から向き合う。

「疾ッ!」

アスファルトに焦げ跡を残して踏み込めば、球体の懐へと飛び込み、まるでりんごの皮むきめいて球体表面をグラインダー切削していく!カツオブシの削りカスめいて光刃に薄く切り取られた部分は、光刃の熱でもって即座に灰となって散っていく!

「オマエ、ドコ、マデモ、キライ!」
「だろうな!」

球体周囲を高速回転しながら少しずつ着実に球体を削り出していくレイヴン。彼に対して、生半可な攻撃では無駄と判断した球体は触腕をドリルめいて尖らせ張り出し、高速回転と共に突き出す!

「……!こいつ!」

ドリルを切り飛ばそうとした黒尽くめは、刃が食い込む直前でドリルに当てるのを避けてスライディング!球体の脚の間をくぐり抜けて反対側へと離脱すれば、球体から距離を取る!ドリルの中に見えるのは、何者かの影!

「やはり本人の意志とは無関係か、バティ!」
「ああ、今やる!」

遠間に立つレイヴンに対して駆け寄り襲いかからんとする球体は、彼の目の前まで駆け抜けたタイミングで、ずるりと寸断され、バラ肉となって大地へと崩れ落ちた。その中で、唯一無傷で切り離されたドリル部分が、ずさりと突き立つ。

「おおっ!」

レイヴンはその手を闘気で手甲のごとく覆うと、溶け出した暗色肉にかぎ爪をたてて引き剥がす!ベリベリと分厚い肉が剥ぎ取られた後に残った物を見て、距離を取っていたノート・アイドルは息を呑んだ。

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