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魂の灯 -25- #ppslgr

ありきたりな歴史の話をしている間に、アイドルが二人に対して割って入る。その顔は明らかに退屈に膨れていた。

「もう!そんなつまらない話しなくてもいいじゃないの!」
「聞かれたから答えただけなんだが」
「なーら、もう済んだんだからいいじゃない。もっと楽しい話にしましょうよ」
「だそうだ、それでいいか?」
「俺は良いよ、知りたかった事はわかったし」
「あいわかった」

二人が納得しているのを見て取ると、レイヴンは再び読書に戻ったままに、今度は自分の質問をぶつける。

「地下施設の調査状況は?」
「そんな簡単に出ないわよ。この東京湾メガフロートはそれなりに広大なんですからね、連携してもらってる情報だとそもそも監視カメラの類いは無いから探査ドローンが周回するまでは何もわからない感じ」
「センサーとかはないの?地下施設がちゃんと動いてるとか確認するための」
「あるけど、ちょっとした物に過ぎないの。それこそ設備がちゃんと動いてるとかくらいで、普段人が入らない場所に監視カメラ置くのはやりすぎでしょ?」
「そりゃま、確かに」
「ホームレスが籠もるにしても、もっといい場所もあるしな。だからこそ潜伏場所として機能した訳だが」

レイヴンの指摘に、アイドルはAIらしからぬため息をついた。

「仕方ないじゃない、そもそも普通なら人が長期間こもれるような環境じゃないんだから」
「まあ、その通りだ。普通ならアジトに使うにしたってもっといい場所は取れる、金が融通きくならそれこそビルを借りた方が安全だ。内装だってホテル並に出来る」
「そゆこと。もう良いかしら、この話題」
「ああ。調査報告を待つ」

電子書籍端末に視線を落とした黒尽くめに、今度はアイドルから質問が返ってきた。

「ねえ、バティ君借りても良い?」
「二人で出かけるなら、俺もついていくがそれでもいいか」
「えーっ、空気読めなーい」
「平時なら喜んで送り出すがな、今は事態が事態だ。関係者誘拐する怪生物が潜伏しているんだぞ、何処に行くにしたって護衛はしないとフロイラインに申し訳がたたん」
「私達二人で何とかなりますよーだ」

正論をぶつける年長者に対し、アイドルはバティとガシッと腕を組んで舌を出しては抗議してみせる。

「ちょ、ちょっとぅ!あたってるから!」
「なによ、当ててるの。どうせ人工生体パーツなんだから気にしないの!」

そうは言われたって、あたってる感触も暖かさも本物のそれで、アイドルの躯体からはいい匂いがするし、重篤オタクのバティにはすこぶる刺激が強かった。

「わかったわかった、同行するのは同じエリアまでで、べったりくっつきはしない。何かあれば駆けつける、それでいいか」
「むー、まあ良いでしょ。何も無ければ二人きりってわけだし。雰囲気に水ささないならそれで」
「馬に蹴られるのはこちらから願い下げだ、せーぜー仲良くな」
「え、え、どうゆう展開なのこれ?」
「どういうって……デート?」
「良かったな、バティ。見た目だけならどう見ても美少女だ」
「えーっ!?」

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