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『こっくりマジョ裁判』の作品構造を読み解く

表題作、創作する上で俺が苦手なポイントの実践方法を教えてくれる教科書みたいな作品なので、内容についてちょっと覚書をしようと思う。
クリティカルなネタバレは避けるが、ネタバレなしで読んだ方が良いやつなので美少女が派手に惨死する!とかいうのに耐性がある人は下のリンクからどうぞ。

前置き:『こっくりマジョ裁判』のルールについて

『こっくりマジョ裁判』はいわゆるデスゲーム物で、異空間に囚われた女子学生達がこっくりさんを使って参加者の3つの秘密を暴き立てる、ってのがあらすじになっている。

この作品の秀逸な所は、各登場人物に開示待ちの秘密を持たせる事で、各人物に物語を推し進める推進力、葛藤・コンフリクトと、破滅へのカウントダウンを明示しているところだ。

デスゲームなので、秘密が開示されるほど死に近づくし、秘密が明かされることはストーリー展開を推進させ、時に状況をぐるりと変える。

そのため、閉鎖空間で女の子がキャイキャイしてるだけ、とも言えるシチュエーションで恐ろしく緊迫感のある状況と、物語のドライブ感をもたせており、めちゃくちゃスゴイ業前なのだ。

では、そのストーリー構造のポイントを読み解いてみたい。

1:情報開示のタイミングが巧い

ミステリーに限らず、物語ではふせられていた情報が開示されることで一気に読者の認識を書き換えることができる。
これは非常に重要なテクニックで、ストーリー上のひねりとか呼ばれてる。

とても使い古された、わかりやすい例でいうと子猫を救う不良とかだ。
初対面ではバリバリの長ランにリーゼントスタイル(と認識されているがティピカルレトロ不良の髪型はポンパドールとかいうらしい)でどうみても不良で怖そうなやつが、雨の中、子猫を救う事で不良の印象を怖いから優しいに上書きさせることができる。もちろん、上書きと言っても初回の印象の強さによっては、プラモの黒立ち上げ塗りとか、水彩画の重ね塗りみたいに完全にオーバーライトされるわけでないが。

で、表題作はルールがおぼろげに明らかになった段階で6人✕3つの謎が最低でも保証されている。しかも、その隠された秘密はその人物達がどのような人間か如実に物語る内容でもあり、開示されることで登場人物にディテールをくわえつつその印象を覆し、そして死へのカウントダウンを進める事で物語の進行をも明示化している。

もちろん異空間の密室なので当然謎はそれだけではなく、数多の謎を設定した上で適切に開示していき読者のニューロンをスパークさせるとかいうものすんごい芸当をかましているわけで、もはや感服せざるを得ない。

2:読者の認識の上書き方が巧い

コレも上記の不良と子猫メソッドの応用なのだが、キャラクターの第一印象と情報開示による認識の上書きがすこぶる巧い。

当然、砂糖に砂糖をかけても味は変わらないので、激辛花椒をぶっかけて第一印象を吹っ飛ばすような形で登場人物のイメージを上書きしている次第である。

これはどんな登場人物にもやればいいテクニックというわけではなく、裏表なくブレないことが魅力となるキャラ造形もあるので(コブラとか、暴れん坊将軍とか、そういうタイプだ)闇雲に設置するのではなくどういう印象を与えるか狙って設定を組み込まないといけないわけだ。

そんな、登場人物の印象をガラッと変える謎を18個、しっかり用意しているのである。人間心理をエンタメの観点でどういじればいいか理解しきっているとしか考えられない。とてつもない技巧だ。

3:物語の推進力の処理が巧い

物語の推進力って言われても、大多数の人は?だと思う。
なんというか、読者にページを捲らせたくなるパワーとかそんな感じのやつだと思ってくれ。ミステリーなら謎の開示を追い求めてページを捲るが、そんなアレだ。

表題作はこの物語の推進力を秘密が書かれたカードと言う形で明示している。これはメタ的に言うと、各登場人物が持っている物語の推進力の残数でもあるわけだ。

で、物語の推進力を失ったキャラは一般的にどうなるかというと……フェードアウトして二度と出てこないか、死亡したりして他の登場人物に推進力を供給するための燃料に転化される。(主人公の師匠が殺されて敵を討つ目的が添加されたりするアレだ)

この作品の原作者氏は物語の推進力を使い切った時点で派手に惨死させて、最後に一花咲かせる処理を表題作では選択したようだ(同作者が担当したFGOイマジナリスクランブルでは、見方全員をしっかり活躍させた上で生存させているので、作品のコンセプトに合わせた処理ができるようである。ワザマエ!)

各登場人物をフルに活用した上で、物語を進める要員としてお役御免担った時点でルールに則って惨死、退場させるってのはスゴイアイデアだと思う。非常に無駄がない。

各登場人物にもしっかり物語上の役割をもたせて機能させているので、非常にロジカルな組み立て方をする御仁のようだ。

関係ないけど原作者氏はゴッホちゃんとか、マチちゃんみたいなのが好みなんですかね(おれもだいすきです)

戦場へ

『こっくりマジョ裁判』はデスゲームミステリーとしてもとてもおもしろいし、作品の仕組みや構造がストーリーテリングの教科書とも言えるぐらい整っているすごい作品だ。

小説屋なら読んで損はないだろう。ただしマジで惨いしにかたをするのでそこはご用心。

今回はここまでだ。またな。

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