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全裸の呼び声 -6- #ppslgr

「報奨金としてはそれぞれ一億円を」
「十億」
「……ハ?」
「前金かつ即入金で十億円だ。でなけりゃ俺は受けん」
「個人の受注案件に十億はいくらなんでも法外で、は?」
「追加で十人死なせたときの慰謝料と同額だ。俺が行くなら最悪死ぬのは俺一人で九人分の命の分だけお安い。単純な算数だろ?」

 あまりにあまりな言葉に、政府高官の瞳孔が広がり、すぼまる。せめぎ合う報酬交渉の空気のさなか、二人の間を興味深げに視線を行き来させる教授。

「し、しかしながら、あまりにも相場から掛け離れた金額で」
「緊急事態に相場もヘッタクレもないだろ」
「だいたい、母国の危機なのにそれがあなたの態度なんですか!?」
「日本人全員の問題なら、なおのこと一人頭十円未満のお支払いだ。強制公開全裸露出させられるなら、どいつもこいつも黙って出すんじゃないか、どうだい」
「ああ、もう、あなたという人は本当にああ言えばこう言う!」

 感情のままに拳を卓へ叩きつけそうになった寸前、高官は我に返っては咳払いし、自制心を維持した。肝心の煽りに煽った側はというと、相変わらず煽った相手以外に視点を滑らせている。

「……わかりました。しかし前金ということは、成功報酬は別途要求するのでしょう?」
「当然だ。鬼が出るか仏が出るか、行ってみなけりゃわからないのに固定請求なんぞできん」
「はぁ……一個人に対して青天井では、流石に予算がおりませんよ」
「前金と合わせて上限百億で手を打とう」
「言語が通じるだけの異次元人ですかあなたは」
「ともすれば、世界安寧のお値段だ。高いとは言わせんよ」

 ふてぶてしさ有り余る態度で、レイヴンは電子タブレットを突き出した。表面には、ずらっと契約文言が並んでいる。

「納得したなら、契約書にサインと口座に振り込みを」
「待ってください、提示された契約書の査読と責任者への通達だけでも」
「どうぞご自由に。教授はどうする?」
「んー私もレイヴンと同じ条件にしようかな。いかんせんこういうの初めてで」
「あ”あ”あ”あ”ーッ!ひとのこころはないのですかあなた達は!」
「金で片がつくほど、楽な問題はないぜお嬢さん」

 そういって、標準的人間性からかけ離れた黒ずくめの傭兵はすっくと席を立った。同じタイミングで白ずくめの教授も席を立つ。

「どちらへ?まだこちらは契約するとは確約しておりませんが……!」
「来客だ、時間はかけないからよろしくどうぞ」

 いつしか、商談の卓の周りにはずらりと男たちが立ち並んでいた。針小棒大、十人十色の風体であり共通点は見当たらなかった。二人が立ちふさがる瞬間までは。

『裸ーッ!』

 男どもは一斉に自らの服を放り投げ捨て、全裸露出行為に及ぶ!騒然となり、各々の得物を掴む来店客達!そして全裸者は一糸乱れぬ武闘を構え、一句乱れぬ宣言!

『我ら覇者たる天下の露出会!我らが覇道を阻む者に死を与えん!』

「な……っ!?」
「察知されてたな、こいつら案外動きが早い」
「身が軽いのでしょう、全裸だけに」

【全裸の呼び声 -6-:終わり|-7-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

現在は以下の作品を連載中!

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