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全裸の呼び声 -8- #ppslgr

「裸ーッ!」

 新たに洗脳された露出者はもろともに雄叫びを上げ黒ずくめへと飛びかかる。迎撃体勢を取るも露出者の姿勢が、低い!ダイビングタックルから黒ずくめの胴に、脚に組み付く露出者。最悪である。

「こいつ……!」
「裸ーッ!!!」
「がっ……!」

 振りほどく前に、露出ヒゲの巨岩のごとき拳がレイヴンへ届く!拘束露出者と共に壁にたたきつけられる黒ずくめ!さらにそこへ、さらなる露出者が組み付き殺到していく。後に出来上がったのは男のカマクラ、男結まんじゅう!

「レイヴン!」
「カァーッカッカッカ!ああなってはもう遅い、後は我らの使徒に抱き潰されるのを待つばかりよ!」
「うわぁ、それは勘弁してほしいなぁ」
「何を他人事みたいにいっておる、次は貴様の番よ!」

 生ぬるい空気を切り裂き、露出ヒゲがアノートへ迫る。繰り出された破城槌の一撃と露出ヒゲのボディブローが衝突し、生じた余波がバーに充満する酒気を一瞬にして吹き払った。

 質量の差にて、硬直する教授をヒゲの断頭チョップが襲うも彼の姿はやなぎのようにゆらめいて受け流し、ついでに手にした槌から先端が外れ伸長し鉄杭めいたヤリへと変貌したではないか。

「ハッ!」

 ヤリは自らの灯火にぶれるロウソクの軌跡を描き、露出ヒゲへと襲いかかる。とらえがたい先端を自らの屈強なる前腕で受け流し、はねのけ、致命傷を避ける!

「やってくれる、貴様も我らの同志とならないか?着衣でこれほどの腕前であれば露出者となれば幹部も夢ではないぞ!」
「遠慮しておきます。自分でやりたいとは思ってないですから」
「フン!所詮は着衣にすがるクズか!裸ーッ!」

 露出ヒゲの拳をヤリの半ばで受けると、教授はハチドリもかくやの宙返り後転にて衝撃を殺し円卓へと着地。両者は間合いを保ったままに仕掛けるタイミングをはかる。

 だが、その緊張を破ったのは突如吹き飛んだ男カマクラの山であった。全裸男たちが宙を舞い、バーの床へと落下していく。中心から姿を現したのは、当然あの黒ずくめだ。宙返り跳躍にて彼の隣にたつアノート教授。

「気分は?」
「……最悪だ。今すぐ着衣のまま水浴びしたいくらいに」
「それは、気の毒に」

 いつも以上の仏頂面にて襟を緩める黒ずくめに対し、教授はわれ関せずと肩をすくめる。バーに散り散りに落下した全裸露出者たちは、何事もなかったかのように立ち上がり、二人を取り囲んでいく。

「ちょっと!初回の刺客も撃退出来ないなら契約の話はなしですよ!?」
「せめてもう少し可愛げのある応援は出来ないもんかね……まあ、いいか。おい、ヒゲ」
「誰がヒゲであるか!ワガハイは露出会大幹部の一人、浅瀬のカニオストロである!」
「浅瀬、ねぇ……おまえらは全裸なら無敵、そうだな?」
「その通りである!だが我らに着衣させることなど砂漠を緑化するにひとしい難行にして実質不可能!我らに弱点は実質存在せぬのだ!」

 腕組みドヤ顔で勝ち誇るヒゲを前にして、レイヴンは隣の教授に目配せした。そのまま、一歩後退する。

「『自我境域』、占有開始」

【全裸の呼び声 -8-:終わり|-9-へと続く第一話リンクマガジンリンク

注意

このものがたりは『パルプスリンガーズ』シリーズですが、作中全裸者については特定のモデルはいない完全架空のキャラクターです。ご了承ください。

前作1話はこちらからどうぞ!

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