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ライフ・イズ・エンターテインメント!-6-

「マスターは、何故エンターテイメントにこだわるのですか?」

 それは前回のエンタメ・レクチャーの翌日の事だ。
次の日もバー「メキシコ」へと姿を現したH・MとK/Rは一緒のテーブルにつき、俺もあの後何がどう変わったのか気になったので同席したのだが。

「俺がか?」
「はい」

 俺も同席してすぐの言葉が先ほどの物だった。学習の傾向としては決して悪くないといえる。何故ならK/RはH・Mのエンターテイメントに対するスタンスをより深く掴み取ろうとしており、そのために問いをぶつけてきたのだ。

 H・Mもまたその事をちゃんとくみ取っている様で、即答せずに真剣な表情……の様に見える一つ目覆面でK/Rをガン見していた。

 言うまでもなく、パルプスリンガーにとって、エンタメ……娯楽を創作する動機は極めて重要だ。人によっては存在意義にすら直結するし、またあるものにとっては自分に対する日々の娯楽として創作を行う者もいる。

 大事なのは、絶対解はないという事だ。そして、彼女にとって必要なのはこの場にいる他の誰でもなく、H・Mの回答こそが必要な答えなのだ。

「K/R、お前はエンターテイメントは無駄だと考えているか?」
「わかりません、私の思考エンジンは人間に必要とされているからエンターテイメントは存在しているのではないかという推論を提示しています」

 K/Rの回答に首を力強く頷かせて肯定するH・M。彼は今K/Rに集中しているから気づいていない様に見受けられるが、いつしか他のパルプスリンガー達が周囲に遠巻きに集まって彼らのやり取りを注視している。

 他のパルプスリンガー達も他者の創作に立ち向かう理由が気になるのは致し方のない話だ。実際俺だって気にはなるが、無用な詮索はしないのが奥ゆかしさというものである。目の前で二人の世界を作ってるので逃げようがないが。

「そうだ、エンタメは無くなっても死にやしねぇが、なけりゃ生きていくのが味気ねぇ。人間が生きていくのにエンターテイメントは必要だ。そして俺に取ってエンターテイメントは人生その物、ライフ・イズ・エンターテインメントだ」

 H・Mの回答にK/Rは瞳を閉じて余分な視覚情報を遮断、新たに得た情報を少しでも深く分析、学習しているかの様に停止し、そしてしばらく後に稼働を再開した。その様子をかたずを飲んで見守るパルプスリンガー達。

「ライフ・イズ・エンターテインメント……それは人間における、私達AIに設定された存在意義に相当する概念、と理解します」
「いいぞK/R、その通りだ」

 K/RはH・Mのまなざしを受け止めると再度瞼を閉じて学習結果の反映に入った。

「マスターの意向により、行動方針を再設定。『観客に代表される他者を楽しませ、盛り上げる』事を第一行動目標として優先順位を向上、戦闘の勝利を第二行動目標に再設定。これより当機は『戦闘内容によって観客を楽しませる事と戦闘の勝利』の両立を活動目的としてマスターをアシストします」

 K/Rのオペレーションログ・コメントを聞き届けたH・Mもまた改めて頷いた。

「改めて、よろしく頼むぜK/R」
「はい、マスター」

 ようやく、ようやく人間とAIの越えがたい溝に橋がかかったかに思えた、その時だった。バー「メキシコ」店内のスピーカーを通して宣戦布告が行われたのは。

「出てきやがれH・M!てめぇが出てこないなら”Note”ごと更地にしてやる!!!」

【ライフ・イズ・エンターテインメント!-6-終わり:-7-へと続く

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